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World Cancer Week2024リポート 【CancerX 食と栄養】みんなにとっての「食」とは?〜それぞれの思いをのぞいてみよう〜

2024年1月28日〜2月4日まで行われた、World Cancer Week 2024
このリポートは【CancerX 食と栄養】についての報告です。


■開催概要

【日時】2024年2月4日(日)10:15〜11:30
【形式】東京・聖路加国際大学
【登壇者】
大友 明子 氏(乳がん患者を支えるメンタル・スパ 代表 )
加藤 英二 氏( 株式会社ドリームカムトゥルー企画 代表取締役社長 )
千葉 正博 氏( 昭和大学薬学部臨床薬学講座臨床栄養代謝学部門 教授 同医学部外科学講座小児外科学部門 兼担 )
西村 詠子 氏( 認定NPO法人がんとむきあう会 理事長 )
モデレーター:糟谷 明範 氏( CancerX共同代表理事 / 株式会社シンクハピネス 代表取締役 / 理学療法士 )
モデレーター: 曹 祐子 氏( Heartfelt Dining 代表 / がん病態栄養専門管理栄養士 )

■セッション概要

2021年から始まった食と栄養のセッションでは、がんと食と栄養に関しての因果関係を証明することが難しいという結論の上で「おいしいって何だろう」をテーマに、さまざまな立場の方と議論を進めてきました。

医師による科学的根拠に基づく視点では、がんにおける食事で禁止するものはないということが明らかになった。また、メディアなどに溢れ出るさまざまな情報によって患者や家族に「食べてはいけない」という意識が生まれ、結果としてがんにより誘発される栄養障害が、さらに深刻になっていることがわかりました。

さらに、「おいしい」は必ずしもその人だけでつくられるものではなく、どこで食べるか、誰と食べるかによっても変わるということも、過去の議論から見えてきました。

以上のような議論を、がん患者や経験者、医師や看護師などの医療における専門職、文化人類学者、食を扱う企業の経営者、地域コミュニティの運営者などと一緒に行ってきました。しかし、専門家による医療的であり学術的な内容がセッションの中心となり、日常の「暮らし」の視点についての議論は多くはありませんでした。

そこで、今回のセッションでは患者とその人に関わる家族などを中心に、その人の「暮らし」を中心とした議論をしていきます。

「食べたい」と「食べられない」、「食べさせたい」と「食べてくれない」
“患者”と「家族」、患者と「医療者」、患者と「介護者」など立場の間には、このような想いのすれ違いが多く生まれる。この違いは、患者の栄養の課題だけではなく、家族内における関係の課題を生むことも少なくありません。

なぜ、このようなことが起こるのか。どのような関わり方をすれば、お互いが心地よく暮らせるのでしょうか。

2024年のセッションでは、このような問いを立て、食の工夫のみならず、患者や家族などの人と人との関係についても議論をしました。登壇者のみならず、参加者からの意見をお聞きしながら、それぞれが考えるがんと食と栄養の境界線上にある価値を覗き込めるようなセッションを目指しました。

パネルディスカッションの模様

■セッションサマリー

セッションの概要説明、登壇者の自己紹介の後、暮らしの中にある食と栄養にスポットをあて、それぞれの立場から経験を交えたお言葉をいただき、パネルディスカッション形式での議論を行いました。

グラフィックレコーディングから

医師の立場である千葉さんからは、「がんの治療にはガイドラインが基本として行われるが、医師だけで行われるわけではなく、専門性を持つ様々スタッフなどがチームとして動いている」という話がありました。さらに、食事についてはたんぱく質が大事で、バランスを整えることが必要という話をいただきました。

医師である夫のサポートを経験し、今もがん患者支援を行う西村さんからは「患者さんは正論は聞きたくないんです。それは重々承知してるのです。」というきっぱりと力強い言葉と共に、生活の中でお互いがお互いを思いやるが故に起こりうる違いについても伺えました。

登壇者の皆さん

食事を提供する立場から加藤さんは「『美味しい』はメガネフレームのようなものの付加価値で作られる。食事も、栄養も大事だけど、その周辺のこと、誰とどこでどういうお皿で食べるかということも大事なんです。」とわかりやすくお話しくださいました。

大友さんはがん経験者として、闘病中には味覚を失い辛かったこと、自身が思い工夫したこと。「喧嘩もしたし、言葉をぶつけたこともある。」などご家族との関わりについて、経験を交えてお話しくださいました。

セッションの様子

会場参加の皆様からもSlidoを使用し、食事に関わる苦痛や工夫について意見をいただきました。

たくさんのコメントから、がんと食と栄養に対する関心の高さと、暮らしの中にある食への苦痛や不安、様々な経験や工夫があることを改めて感じ知ることができました。
セッション内で拾いきれなかったコメントも、今後につなげていきたいと思います。


全てのセッションの内容はこちらへ


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