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イダ・プレスティ(1924 -1967) の生涯、時代を超えるプログラム


前回の続きです、

衝撃的な幼少期の後、イダ・プレスティはパリのショパンホールでのコンサートを経て、着実にその名をヨーロッパに広めていきました。様々な音楽家や評論家から絶賛され、後に偉大な作曲家フランシス・プーランクから曲を贈呈されるまでになります。

ジャンルを越えての交流ではジャンゴ・ラインハルトともすごく親しかったそうでプレスティもすごく即興演奏が得意でジャンゴとよくセッションをしていたそうです。(録音残ってないのかな、、)

今日紹介したいのはそんな彼女が1952年にロンドンのウィグモア・ホールにて行った衝撃的なソロリサイタルについて。

当時のプログラム、これが目を疑う内容でとんでもなく重たい作品が
並んでいます。以下のリンク(カリフォルニア州立大学ノースリッジ校の図書館)よりご覧頂けます。

https://library.csun.edu/SCA/Peek-in-the-Stacks/ConcertPrograms#

パガニーニの大ソナタからバッハのシャコンヌの後にポンセのスペインのフォリアの主題による変奏曲…これを半世紀以上前にやっていたことがどれだけ異質かというのはギタリストの皆さんならすぐ分かっていただけるかと。今でもかなり異質ですよね。

ピアノで言うところのゴールドベルグ変奏曲のすぐ後にベートーヴェンのハンマークラヴィアを弾くような感覚でしょうか、曲の長さは比例しないのですが。

コンサートのプログラム構成というのは演奏の技術と別にその人の個性がすごく反映される一つだと思いますが、このプログラムの好みと並べ方はかなり異質で
なんというか少し奇妙でもあります。

プレスティは人柄はすごく明るく優しく、幼い少女のような心を持ち続けている
ような人だったそうですがこのプログラムや彼女が作る曲などを見るとそれと並行してものすごく不思議な一面があった人だったように思えます。

私が知っているだけでもここでは紹介しきれない程のエピソードもありますし
作曲家のジョンデュアルテがどれだけイダプレスティが素晴らしかったかをただ話している動画、なんてのもYouTubeにあったりします。


どういった女性だったのかを日本人としては唯一のプレスティの直系の生徒であったアコ・イトウ・ドリニー先生に私が伺いした時の動画もこちらからご覧頂けます

https://youtu.be/8Kh4HqZgjF0?si=6emHhk2B1JJiWG72


42年間の人生でかつてこんなにも出会った人々を魅了する人物が存在したのでしょうか、演奏はもちろんのこと人として本当に魅力的だったのだと思います。

バッハの音楽は演奏者の姿を映す、とよく言われますがイダプレスティが弾くバッハのヴァイオリンソナタ第二番のAndanteを聴いていると彼女の優しさ、陽気さ、不思議な面などが見えてくるようでいつも聴き終わると幸せな気持ちになります。本当にすごいです。
そう、すごいという言葉が一番しっくりくる気がします。

私はもちろん録音でしか演奏は聞いたことないですが何か圧倒されるものがいつもあります。
そして泣かせられてしまう程美しい旋律の歌い方、特に何度聴いても感動と驚きでしかないのが後にデュオを結成することになったアレクサンドル・ラゴヤとの二重奏でアルビノーニ作曲の Adagioを弾いている時の彼女の旋律の弾き方。これはもうため息しか出ないです。発弦楽器は弾いた後音は減衰していくって学校で習ったんですけど?と言いたくなってしまいます。

なかなかマニアックな話題でしたが共感して頂ける方、もしくは先住民の方がいらっしゃればとても嬉しく思います。

続く



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