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人と人のつながりが循環を生む 那覇まちぐゎ〜経済圏の価値と未来 


那覇市議会議員・外間製菓所経営者 外間ゆりさん


国際通りの南側に広がる「那覇まちぐゎ~」は、第一牧志公設市場を中心に20もの通りが縦横に連なる商人の街です。外間ゆりさんは、このまちぐゎ~で菓子の製造・卸・販売を始めて今年で70年になる外間製菓所の三代目。「まちぐゎ~の後継ぎになりたい」と2021年7月の那覇市議会議員選挙に29歳で出馬し、初当選しました。

そんなゆりさんは、バガスアップサイクルのシェアリングサービスを利用してくださっているお客様でもあります。ゆりさんが生まれ育ったまちぐゎ~に息づく循環について、お話を伺いました。

「シーブン」「持ち上げ」余剰を廃棄せずに生かす商人の知恵

 

商店街の2階に位置する「水上店舗」にて

「循環経済と聞いてまず思い当たるのは、シーブン文化と相対取引です。シーブンとは、『おまけ』のこと。お菓子であれば型崩れしてしまったB級品、お肉や布地であれば切れ端を、買ってくれたお客様に渡すんです」

シーブン文化の前提には、昔ながらの商売のスタイル「相対売り」があります。ひと昔前は1畳ほどの小さなお店が立ち並び、同じお菓子を売っていたそう。手に入る品は同じでも、「この人から買いたい」と店主の人柄や関係性でお店を選び、おしゃべりを楽しみながら買い物をするのが市場という場所でした。こうした「相対売り」において、シーブンは常連客との絆を深める一つのツールだったのでしょう。値段をつけられないあまりものを無駄にせず、別の価値に変換する商売人の知恵から生まれたのがシーブン文化と言えそうです。

「まちぐゎ~には、売り手と買い手だけではなく、商人どうしの絆もあります。つい先日も、台風が来てお客様が来ず、お菓子がたくさん余ってしまいました。そこで、向かいの鰻やさんに持って行って、お寿司と交換してそれぞれで食べました。商人どうし、普段から売り買いしあって持ちつ持たれつの関係があるので、とても自然に物々交換が成り立ちます」

また、公設市場では、1階で鮮魚やお肉を買って2階で調理して食べられるサービスが人気ですが、元は無駄を出さない工夫から生まれた文化です。

「もともと、1階で余った魚を2階で出汁やあら汁に調理して配る『持ち上げ』と呼ばれるしくみがありました。これに限らず、惣菜屋さんじゃないブティックのおばちゃんが自分でつくったご飯を配ってくれたり、青果店で買い物をしていたら隣にいた人が『冬瓜はこんなして食べたら美味しいよ』と教えてくれたり。物理的にも精神的にも距離が近いからこそ色々なものをシェアしあっているのがまちぐゎ~なのだと思います」

「思いをつなぐ」ことで、まちぐゎ~の未来を描く


行事に欠かせない伝統菓子から普段のおやつまで取り揃える

戦後に立ち上がり、人と人の繋がりの中で無駄を出さない循環を生み出してきたまちぐゎ~は今、世代交代の時期を迎えようとしています。外間製菓所を20歳で創業したゆりさんのおじいさんも、今年で90歳。今もなお、毎朝4時に起きて元気にお菓子づくりに勤しみ、経営は孫のゆりさんの手に受け継がれていますが、すべてのお店が外間製菓所のように事業継承できているわけではありません。

「私は、まちぐゎ~には商売だけではない価値があると思っています。その価値を、次の世代につなげたいとも思っています。ですが、おじいちゃんが商売を始めた戦後の復興期に、宝石や時計や映画など特別な買い物や娯楽を楽しみに遠くからもお客様が来ていた頃と今では、環境が様変わりしているのも事実です。親の世代には『子どもには公務員になってほしい』と願う人も多く、私の世代で継いでいる人は少なくなりつつあります」

それでも、ゆりさんのように良さに気づいて孫が継ぐケースもあったり、後継ぎが手放したところに県外出身者が出店するケースが増えたり、まちぐゎ~は過渡期を迎えているそう。

「世代交代とともに変わっていくことを前提に、『思い』をつないでいけたらと思っています。地域の人たちが大事にしてきたことを、伝え聞いて大事にしてくれる関係者を増やし、そういう人たち同士で次の数十年をつくっていきたい。そこで、7月13日に一緒にまちぐゎ~の未来をつくり上げていく同世代で、通り会連合会の青年部を立ち上げました」

青年部は、外部の目線や企画力を持つ人、良さを広めてくれるインフルエンサー的な存在が気軽にアイデアを出せる受け皿になると考えているそう。

「その時期しか食べられない、買えないものが見えること。ムーチーの時期にカーサーの匂いがして『冬が来た』と思えること。商売だけではなく、生活の匂いがすること。人と人がつながり合って、シェアしあって循環を生み出していること。まちぐゎ~らしさを、さまざまな形でもっと伝えていきたい」と願うゆりさん。

増えてきた飲食店のごみ問題に対応し、生ごみをコンポスト化して水上店舗の屋上で野菜を育てるプロジェクトや地域通貨の導入を構想するなど、新しいやり方と新しい仲間に開かれたソーシャルデザインを着々と進めています。

BagasseUPCYCLEが展開するかりゆしウェアをご着用いただきました。沖縄県出身のイラストレーター大村郁乃さんデザインの「Tropical Sunset」(外間議員)と紅型「青海波」(小渡)


取材 : 2023年8月

バガスアップサイクルは、沖縄の地場産業である製糖業の過程で発生するサトウキビの搾りかす「バガス」の繊維を活用したかりゆしウェアのシェアリングサービスを展開しています。詳しくは、コーポレートサイトをご覧ください。デザイン一覧および那覇市内各所でのレンタルサービスについてはこちらでご案内しております。