休職制度の基本的な位置づけ

休職制度には、私傷病による休職のほかにも、公務に従事するための休職、他社へ出向する間の休職など、さまざまな事由がありますが、ここでは私傷病による休職を取り上げて考えてみたいと思います。

まとめ

  • 会社と労働者は、労働契約を締結している

  • 労働契約の約束ごとを守れない状態が続く場合、労働契約を解消することができる

  • 私傷病により労務提供ができない場合、解雇を猶予する制度として、休職制度がある。

  • 休職制度は、法定の制度ではなく会社の裁量が大きいが、一度定めた場合は会社もその制度に従わないといけない。

1.会社と労働者の関係

そもそも、会社と労働者はどんな関係にあるのでしょうか。なぜ労働者は会社に働きに行くのでしょうか。なぜ会社は労働者に賃金を支払うのでしょうか。
 それは、労働契約という契約関係により、双方の義務が課せられているためです。

労働契約は一般的には
 労働者→会社 労働力を提供する義務(労務提供義務
 会社→労働者 賃金を支払う義務(賃金支払義務
を基本とした契約だといわれています。

2.労働契約の詳細事項

労働契約の基本は上記の通りですが、お互いの権利・義務については、細かく定める必要があります。

例えば、

  • いつ、どこで、どのような仕事をするのか

  • どのような成果を出す必要があるのか

  • 給料はどのように計算して、どのように支払われるのか

  • 基本給以外に支給される手当はどのような基準なのか

といったことです。これらは会社と労働者のある意味で約束ごとであり、これを前提に労働契約を締結することになります。

3.労働契約の約束を守れないとき

例えば、レストランでのキッチンの仕事を行う料理人を雇ったとしましょう。労働契約で「客に提供する料理を作ること」や「レストランが開いている日は、営業時間中キッチンで働くこと」などを定めました。

しかし、実際には料理経験がない料理人で、客に提供する料理を作ることができませんでした。
 あるいは、他に掛け持ちしている仕事があるために、営業日であってもたびたび遅刻していました。

これらは労働契約で定めていた「約束ごと」を守れていない状態と言えます。
 より正確には、労働契約の債務の本旨に沿った労務提供ができていない状態であり、債務不履行と言えるでしょう。

いくら店長から注意指導しても、そのような状態が改善されることなく、継続して起こっている場合、労働契約の約束が守れていないということであり、契約の解消を検討することになります。
(もちろん、いつまでも改善を待つことができれば、それに越したことはありませんが、それによりお店がつぶれてしまっては、本末転倒ですね)

このように約束を守れないときに、会社から労働契約を解消することを、解雇と言います。

ここまでは労働者が約束を守らなかった時を例に出しましたが、会社が約束していた賃金を払わないとか、約束していた休憩時間を確保しないとか、そういうこともあり得ます。
 その場合、労働者から労働契約を解消することを、辞職と言います。

4.私傷病により労務提供ができないとき

厳しい言い方になりますが、私傷病により労務提供ができない場合も、状況は同じです。
(さらに言えば、例えば、病気がちの子どもがいて度々仕事を休まないといけない場合であっても、それが法律や会社の制度で認められた子の看護休暇等以上に休んでいる場合(=欠勤状態)には、労務提供義務を果たしているとは言えません)

そのため、その状況が継続する場合には、労働契約の解消(=この場合は会社からなので解雇)を検討することになります。

しかしながら、私傷病は確かに法律上は、労働者の責めに帰すべき事由とされていますが、誰しも病気になる可能性があり、仕方ないものです。それを「債務不履行だから解雇だ」とするのは、厳しすぎるという見方があります。
 あるいは、働いている労働者の側から考えると、「うちの会社は、病気であろうと働けなくなったらすぐにクビにするらしい」ということで、働き続けるモチベーションを大きく削ぐことになってしまいます。

そこで、一定期間解雇を猶予する制度として、休職制度を定めることがあります。

ここで注意しておきたいのは、2点あります。

1点目は、休職制度は法律上義務ではないこと。例えば育児休業や介護休業などは、法律上制度を設けることが義務となっていますが、休職制度は義務ではありません。位置づけとしては会社の福利厚生制度の一つです。
 そのため、定めるかどうかや、その内容は会社の自由となっています。

2点目は、そうは言いつつも、一度定めた制度は会社も守らないといけないこと。というのも、制度化した以上、それは会社と労働者の約束ごと(=労働契約の一部)になるからです。

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