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下鴨神社のみたらし団子の4個目と5個目の間に隙間がある理由

 京都三大祭の一つで、毎年5月15日に行われる「葵祭」。かの有名な「源氏物語」にも登場し、平安時代以来の由緒あるお祭りだ。残念ながら今年も新型コロナウイルス感染拡大の影響で「路頭の儀」(行列巡行)の中止が発表となった。本来ならば、祭りの行列は京都御所を出発し、「下鴨神社」を経て、「上賀茂神社」へ向かう。せっかくなので、行ったつもりになれる、お祭りゆかりの神社をとたどる散歩コースを、生粋の京都人である柏井壽氏の著書『できる人の「京都」術』(2017年刊、朝日新書)より紹介する。

 葵祭の行列と逆まわりですが、「上賀茂神社」から「下鴨神社」へと賀茂川沿いを歩くコースはおすすめです。

 スタートは、「上賀茂神社」のすぐ傍にある御園橋(みそのばし)。ここから南に向かって歩きます。

 賀茂川の西側の右岸は、東側の左岸に比べて堤が広く歩きやすい上に、東山の眺めもいいので、右岸歩きをお奨めします。

「御園橋」から目指すのは「出雲路橋(いずもじばし)」。距離にしておおよそ2.5キロ。健脚の人でなくても、ざっと30分ほどあれば、歩けるのは下り坂になっているからです。標高差はおおむね20メートル。こうしたところで、京都で北に行くことを「上る」、南に行くことを「下る」を体感できます。

「御園橋」の次、「上賀茂橋」を過ぎると堤が広くなり、歩く人の姿も多くなります。

 下流前方には蹴上の「ウェスティン都ホテル」を、左手東側には東山の峰々を眺められる、恰好の散策路が続きます。

「北山大橋」を過ぎると、左手に「京都府立植物園」の緑が重なり合うさまが見えてきます。花好きの人は「北山大橋」を渡ってすぐのところにある「賀茂川門」から園内に入ってみるのもいいでしょう。園内をあるいて「正門」から出れば賀茂川堤にすぐ戻れます。

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「北大路橋」から「出雲路橋」までは広々と整備され、公園のようになっているので休憩できるところはいくらでもあります。ここで一休みしてもいいでしょう。

 そしてこの「出雲路橋」近辺での一番のおすすめは、「比叡山」。同じ京都でも、場所によって比叡山はその姿を変えます。

 上賀茂より北から見ると、険しく武骨な山に、四条より南から見ると意外になだらかな峰に、同じ比叡山でもまるでその姿かたちが違って見えるのです。

 私が思う比叡山のベストポジションは「出雲路橋近辺の賀茂川右岸から」です。

■下鴨神社とみたらし団子

 出雲路橋を東に渡り、そのまま東鞍馬口通を東へと道なりに真っすぐ進むと、広い下鴨本通に出ます。信号を渡ると神社の案内板が立っていて、それに従えばやがて「下鴨神社」の西参道へとつながります。

 このあたりで、甘党の方にぜひともおすすめしたいグルメが「加茂みたらし茶屋」のみたらし団子です。串に刺した団子に、とろりと甘いタレのかかった、みたらし団子。

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 その語源は、「下鴨神社」内にある「御手洗(みたらし)池」にあります。そしてその「御手洗池」と「みたらし団子」には、ある不思議な話が伝わっています。

 後醍醐天皇が参詣の際、御手洗池で水を掬おうとしたところ、最初に泡が1つ浮かび、しばらく経ってから4つの泡が立て続けに浮かんだそうです。それを人の五体に見立て、人形を模して作られたのが、みたらし団子だといわれています。

 その伝承にしたがって、「加茂みたらし茶屋」の団子の数は5つで、4つと1つの間に隙があるのです。門前茶屋の菓子ひとつにも伝説にのっとった由来が残されているのも京都ならではのこと。ぜひ、散歩のあとのおやつにでも食べてみてはいかがでしょうか。


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