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仕事ができる女、ムーミンママの魅力を語る

みなさん、ムーミンママは好きですか?私は大好きです。
世間的にはどうでしょうか?以下のランキングでは8位になっていますね。
https://ranking.net/rankings/best-moomin-characters

8位という数字はムーミン一家の中で最下位です。ムーミンパパはともかく、ムーミンよりも下というのは正直信じられません!
ムーミンのどこが良いのでしょうか!?

このnoteでは原作の「ムーミン谷の彗星」に登場するムーミンママの内面を考察し、その魅力をお伝えします。
このnoteを読んでくれた人にムーミンママの魅力が伝わってくれれば嬉しいです

実はムーミン谷で一番優秀

ムーミンママの魅力は原作小説ではとてもわかりづらく書かれています。

しかし小説のムーミンママを読み解くと、彼女が自分をしっかりと持ち、心に余裕があり、何事にも臨機応変に対処できる優秀な女性ということがわかります。
これから、それがわかる3つの事例を紹介します。

おべんとう事件

まずは、ムーミンとの関係性からムーミンママの優秀さを見ていきましょう

作中、ムーミンママは息子であるムーミンに、今からおべんとうをもって出かけることを知らされます。
これは事前に知らされていたわけではありません。
なんの前触れもなく「ママ!ぼくたち今日、おべんとうを持って出かけるよ」(p12)と告げられます。

問題はその言い方。「出かけたい」ではなく「出かけるよ」です。
急なお願いにも関わらず、ムーミンからは謝罪の言葉もなく、まるで言えば望みが叶うのが当たり前のような態度。

これはムーミンママ怒っても仕方がない!
読者としてはムーミンママがこれにどう対応するか、緊張が走ります。

ところが、ムーミンママは「あら、それはいいわね」といい、バスケットを取り出しあっという間におべんとうを作り上げます。
そのおべんとうも凄くて、中身はサンドイッチ、ソーセージ、キャラメル。フルーツ、ジュースと超豪華。
ムーミンの突然のおべんとう要求発言にも驚きましたが、このムーミンママの余裕と手際の良さはそれ以上です。

この手際、おそらくムーミンママはいきなりおべんとうを要求されることに慣れているのでしょう。
ムーミンママがムーミンの突然の要求に答えるために、少なくとも以下の準備が必要です。
・昼食はおべんとうに転用できるメニュー(例えばサンドウィッチなど)にする
・おかし、ジュース、フルーツなどはストックを用意しておく(特に鮮度管理が必要なジュース、フルーツをストックしておくのは大変なことです)
・息子が自分の予想通りに動くことを期待しない

このように物質面、精神面の両面から構えておいたからこそ余裕が生まれ「あら、それはいいわね」とムーミンに返答できたのです。

このように、ムーミンママはさらっと凄いことをしています。
どうです?見過ごしがちですが、よくよく考えると凄いでしょう、ムーミンママ。

9割の人が気づけない優しさ

次もムーミンとムーミンママに関する話です。
おべんとうを貰ってさっそうと出かけたあと、帰ってきたムーミンは以下のようにムーミンママに告げます。

「ぼくたち、ここから百キロ以上も遠くへ行ったんだよ。海を見つけたの!」(p27)

実際には海が百キロも離れているはずはありません。日が昇っているうちに子供の足で行って帰ってこれる程度の距離です。だいぶ盛っています。
これに対し、ムーミンママは「それはよかったこと」(p27)と軽く流していますが、みなさん見逃してはいけませんよ。
このときムーミンママが何をしているかに注目してください

なんと貝がらをいくつも並べて花壇を作っているんです!!!

これがどういうことかというと、"ムーミンママは海の存在を知っている"ということです。
貝がらは当然海でしか手に入りません。
貝がらがいくつも手に入るということはムーミンの家が海からそれほど遠くないことを示しています。

つまりムーミンママは、海が百キロも離れていないことを知っていて、ムーミンが話を盛っていることに気がついているのにそれをおくびにも出さないのです。

貝がらに気づかなかった人は、このシーンをもう一度読み直してみてください。
なんでもないシーンが、途端に無邪気な子供と子供の嘘をあえて気づかないふりをする優しい母親という、思いやりにあふれた微笑ましい名シーンに思えてくるはずです。

言われてみれば当たり前のことのように思えますが、これが一切作中では説明されていないので9割の人は気がついていないのではないでしょうか。

ムーミンパパの失敗をすかさずフォロー

今度はムーミンパパとムーミンママのエピソードです。

家中が寝静まったある夜、物音に起きたムーミンパパが家のドアを開けると"じゃこうねずみ"が雨の中立っていました。ムーミンパパはとりあえず彼を家の中に招き入れ、りんご酒を振る舞おうとします。
ところが、ムーミンパパは棚の上のりんご酒を取るとき近くにあったグラタン皿を落としてしまう。
夜中の静寂に響き渡る音。家のあらゆる窓に明かりが灯り、ムーミンママが上の階から駆け下りてきます。
「まあ、あなたでしたの。わたし、どろぼうが入ってきたのかと思いましたわ」(p33)

ここからが大事なポイントです。
皿を割ってしまったムーミンパパは降りてきたムーミンママに言い訳をします。
「あのりんご酒を取ろうとしたんだ。けれど、どこかのまぬけが、このけしからんグラタン皿をはしっこに置いておったもんで」(p35)

はっきり言ってムーミンパパは頭が悪いです。
棚の上にグラタン皿を置いたというまぬけは誰か?ムーミンママしかいないでしょう!
そんなことに気づきもせず、本人を前にとんでもない言い訳を展開します。
ムーミンといい、ムーミンパパといい、ムーミン族の男はみんな察しが悪いのでしょうか?

ところが!ムーミンママは怒りもせず
「そんなの、割れてしまって、かえってよかったわ。とってもきたないお皿でしたもの。いすの上へ上がれば、らくに取れますよ」(p35)
というようにパパをフォローするだけではなく、りんご酒を取る方法まで提示しています。

おべんとう事件でも感じましたが、ムーミンママのなんと心の広いことか!
ムーミンパパははっきり言って要領が悪いです。実はムーミンパパはこの出来事の前にじゃこうねずみの家を破壊してしまうという大失態を犯しています。
不注意で物を壊すという失敗を、この短期間で二度繰り返してしまっているのです。
おそらくこの出来事はムーミンママにとってよくあることのひとつ、という認識だったのでしょう。
だからこその余裕。他人を変えようとせずありのままを受け入れて、ある種諦めの感情を持つことができているのです。

まとめ

どうでしょう?ムーミンママの魅力は伝わったでしょうか?
直接的に書かれることは少ないですが、きちんと読み解くとムーミンママの行動から「余裕」と「賢さ」を感じ取ることができます。

ここに書いた以外にも、ムーミンママの見どころはたくさんあります。
みなさんも是非、原作の小説を読んでみてはいかがでしょうか

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