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戦略ファームの仕事の魅力と好循環の構造

戦略コンサルタントのアップルです。

今回は
・①戦略コンサルティングの仕事の魅力(一つの視点)
・②(①の流れで)戦略ファームのシニアのハイパフォーマーが作っている好循環スパイラルの構造
の2点について書きます。

ジュニアも含め戦略ファームで働く人、さらには何らかの知識集約的な仕事に従事している人にはヒントや気づきがあると思いますので、ぜひご覧ください!

1.戦略コンサルティングの仕事の魅力とは?

戦略コンサルティングという仕事は、大変な側面もありますが、かなり魅力にあふれた仕事だと感じています。その醍醐味をどこに感じるかは人次第です。クライアントを変革するのがやりがいがあるという人もいれば、シャープな戦略を立てる自分に酔いしれる人もいれば、知的好奇心が満たされることに楽しさを見出す人もいるでしょう(大きくはこの3パターンに分類されるように思います)。

ではアップルはどうかと言えば、「知的好奇心が満たされる」点がモチベーションになっています。もちろんクライアントに愛着がわいたり、クライアントのビジネスや変革に携わることにやりがいを感じるときもありますが、比較的長くこの仕事を続けてこられたのは知的好奇心が満たされる仕事であることが大きいです。

戦略コンサルティングの仕事は、一般的に言えば、実に様々な業界のクライアントと、実に様々なテーマで協働します。先月まで化粧品メーカーのマーケティング戦略をやっていたが、今月から3か月間は工作機械メーカーの新規事業を検討する。また来月からは、同時並行で、電力会社の業務改革の検討プロジェクトもスタートする。こんな感じです。次から次へと新しい業界やテーマを扱わないといけないため、都度キャッチアップするのは相応に大変ですが、逆に言えばこれだけ多くの業界やテーマにタッチできる仕事はほかにほとんどないのではないかと思います。一つのことを深掘りするよりも、広い領域の中で情報、知見、ノウハウを得たいタイプの人にとっては、知的好奇心が満たされる格好の仕事と言えます。

かつ、個々のプロジェクトでは、当然ながらかなりディープなところまで入り込みます。検討対象の市場構造や業界構造、業界トレンド、業界を形成するプレーヤーの特徴やビジネスモデルなどを徹底的に深掘りします。巷の本に書いてある内容とは比べ物にならないくらい深く掘り下げるわけです。

広く知識を得るだけなら、様々な本を読むことである程度実現できるでしょう。ただ、本に書いてあることというのは、もちろん本にもよりますがさほど深くはありません。一方でコンサルティングプロジェクトでは、クライアントからのフィーを原資として、人的リソース(コンサルタントの工数)や金銭リソース(調査費やインタビュー費)をかなり投下するので、必然的に深いものとなるのです。

つまり、戦略コンサルティングの仕事をしていると「広く」かつ「深い」情報や知見が必然的に蓄積されていきます。

このことは、知的好奇心が旺盛な人にとっては、それ自体が大きな価値です。というのも、これだけ「広く」かつ「深い」情報や知見にタッチできる仕事はほかにはあまりないからです。加えて、こうして知見がたまることは、もちろん戦略コンサルタントとしての能力を高めることにもつながります。このメカニズムについて少し紹介をしてみたいと思います。

※以降は、戦略ファームでもマネージャー以上のシニアを想定してメカニズムを解説します。ですが、このメカニズムは、戦略ファームのジュニアにも言葉を置き換えれば当てはまりますし、ほかの知識集約的な職業にも当てはまると思います

2.戦略ファームのシニアが意識する2つのサイクル

戦略ファームのシニアは、コンサルティングの仕事を継続的にとるために日々研鑽が必要です。研鑽を重ねるにあたって「2つの重要なサイクル」があるとアップルは考えています。図解も交えながら解説しましょう。

 (1)基本サイクル

戦コンのシニアが土台とすべき好循環、いわば「基本サイクル」は以下のような構造です。

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(デリバリーに関わる→知見がたまる)
起点は「デリバリーに関わる」です。上述のとおり、コンサルティングPJの実行(デリバリー)を通じて、市場、業界、企業についての深い知見が得られます。様々なPJのデリバリーに関わるほど、知見は広く、深く蓄積されていきます。

(知見がたまる→仮説構築力が高まる)
そして、知見がある程度の量たまってくると仮説構築力が高まります。仮説構築力、言い換えれば発想力は、情報やノウハウの「組み合わせ」によって形成されます。Aという情報・ノウハウとBという情報・ノウハウとが頭の中で結びつくことで仮説や構想が浮かびます。したがって、知見がたまればたまるほど仮説構築力は強化されていきます。

(仮説構築力が高まる→営業力が高まる)
こうして強い仮説構築力が得られれば、コンサルプロジェクトの提案力が高まります。というのも、コンサルの提案書には、何かしらの「仮説」が含まれるからです。クライアント候補にぶつける仮説の内容は、
・課題仮説や論点仮説の提示
・答え仮説の提示
・アプローチ仮説の提示
と、その時々で中身は変わりますが、これらの1つもしくは複数が含まれることが一般的です。仮説構築力は提案力ひいては受注率を左右します。

(プロジェクトが売れる→デリバリーに関わる)
そして晴れてプロジェクトを受注すれば、またデリバリーが始まります。そしてそのデリバリーを通じて、新たな情報や知見が得られます。・・・


と、このようなサイクルが、戦略ファームのシニアの能力を強化する上での最も重要なサイクルです。この基本サイクルをどれだけ太く回せるかが戦略ファームのシニアの力量を大方決めているといっても過言ではないとアップルは感じています。

 (2)サブサイクル

もうひとつ、このサイクルに付け加えるべき従属的なサイクルがあります。これはいわば「人脈の好循環」です。

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知見をいろいろ持っている人というのは重宝されます。つまり、ことビジネスシーンにおいては、知見がたまるほど人に会いやすくなります。そうやっていろんな人と会って、かつ持っている知見でインプレスできれば、人脈が広がります。

そうした人脈からは、鮮度の高いリアルな情報や知見が得られるので「知見がたまる」というところにフィードバックがかかります。そして知見が強化されれば、さらに人に会いやすくなります。・・・

このサイクルを実現できている人もとても強いです。「なんであんなすごい人とつながってるんだ?」「この人はほんと人脈が広いな」と驚かされる人がたまにいますが、その背景にはこのサブサイクルの強力な回転があるはずです。人脈というのはネットワーク効果も働くので、一度強く回転しはじめると放っておいてもどんどん強化されていくのだろうと想像します。

3.戦コンのシニアの好循環の構造

これらのサイクルをがっちゃんこすると、下図のとおりとなります。

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「知見がたまる」のところを結節点として基本サイクルとサブサイクルが両輪で回転する構造です。基本サイクルとサブサイクルとは結節しているため、相乗効果があります。つまり、基本サイクルの回転が強まると、サブサイクルの回転にプラスの波及効果をもたらします。逆にサブサイクルの回転が強まると、基本サイクルの回転にプラスの波及効果をもたらします。これが全体像です。

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戦コンのシニア、特にパートナーともなれば、この2つのサイクルを何かしらの形で回しています。この2つのサイクルを回せたからこそパートナーになれたとも言えるでしょう。

ただし、シニアの中でもガンガン業績を上げているハイパフォーマーがいる一方、なかなか成果が上がらない人もおり、その力量には幅があります。その力量の差はこの2つのサイクルを「どれだけ力強く回せているか」の違いで説明できると思います。

アップル自身も、このように可視化したのは今回が初めてですが、この2つのサイクルをどうやって強化するかということを半ば無意識に考えてきたような気がします。そして、これらのサイクルを、さらに強くしていきたいと思っています。

何らかの知的労働に携わっていらっしゃる方は、この構造をご自身の仕事に当てはめたときにどう変換できるか考えてみるのもよいのではないかと思います!

今回はここまでです。
最後までご覧いただきありがとうございました!

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