見出し画像

2024年シーズン 東京ヴェルディの個人的な見所

 16年ぶりのJ1昇格に涙した12月の国立決戦。それから日が過ぎて、クラブは新体制発表を経てキャンプを迎え新シーズンへの準備まっしぐらである。
 2019年から執筆を始めて6年目、ついに戻ってきたトップカテゴリー。その喜びを噛み締めながら、例年と同様に開幕前の個人的な見所を書いていきたい。


編成の振り返り

 昇格って良いな~とカテゴリーの優位性を強く実感するオフシーズンとなった。23年シーズンは序盤から安定した戦いぶりで勝点を積み重ねて上位をキープ。名も無い若武者たちの市場価値も間違いなく大きく跳ね上がった。ここで昇格を逃していたら大きな草刈り場になるだろうという事態だけだっただろうにあの染野のPKはクラブ史に残るプレーとなった。J1昇格へ3か年計画を公言し、見事に有言実行果たした江尻強化部長を中心に、J1他クラブからの獲得オファー報道があった宮原、森田らコアメンバーの契約更新に軒並み成功。鹿島から期限付き移籍で加入した林、染野とも延長しJ1の舞台に挑む。

 その一方でベテラン奈良輪、小池、梶川との別れもあった。カテゴリーが上がることでの出会いと別れに身が沁みる。苦しい時代を支えた彼らのことは永遠に忘れないだろう。
 福岡から期限付き移籍だった北島はホームグロウン枠の関係もあるのか福岡へ復帰。代わりにJ2ベストイレブンになった見木を千葉から獲得。昨季後半戦はJ2リーグ全体でのMVPと言っても過言ではない大活躍を魅せた中原もC大阪からの完全移籍とは行かず、山形時代の師弟関係にもある川井監督率いる鳥栖への移籍が発表された。サイドアタッカーとして昇格したライバルクラブ・町田から翁長、出場機会に飢えていたG大阪・山見、京都・山田を獲得。現役引退しコーチ就任の奈良輪、ジョーカー的な起用になっていた加藤蓮の横浜FMへ移籍を受けて手薄となったSBには大宮から袴田、いわきから河村を獲得と適材適所に選手を獲得した。33名中14名が新加入、平均年齢25歳以下と若くフレッシュなチームとなる。出場機会に恵まれない若手選手たちは下位カテゴリーへの期限移籍とし、在籍選手全員即戦力のような人員整理の印象を受けた編成である。

 新加入選手を含めた現有戦力のスカッドは以下のとおり。システムは昨季の1442ベースにしている。それではポジション別にみていきたい。

GK
 絶対的守護神・マテウスが契約更新。早5年目を迎え、平に次ぐ年長者となった。圧倒的な存在感を示したJ2リーグ戦に加えて天皇杯でのJ1勢との試合でも引けを取らないプレーぶりは今季のチームにおいても鍵を握る。昨季、国士館大から加入した飯田は守護神があまりにもスーパーすぎてなかなか出場機会にも恵まれずJ3八戸へ期限付き移籍を決断。第2GKは昨季に引き続き長沢が務めることが予想される。
 ベンチ入りも少なく第3、4GKの立ち位置だった4年目の佐藤はU18日本代表でアジア杯のトレーニングパートナーにも選出された静岡学園出身・中村とともにベンチ入り争いから始まるだろう。

DF
 最終ラインの主軸宮原谷口深澤は契約更新し、も鹿島から期限付き移籍延長とGKマテウスと共にリーグ最少失点を誇った堅守のメンバーがJ1へ殴り込みをする。J1経験豊富の宮原の計算はメドが立つも林や初挑戦の谷口と深澤がどれくらい通用するのか見物である。
 本職CBながらSBとして新境地を開いた山越、エアバトラー千田も契約更新とCB陣の厚みが出た。なかでもアカデミー出身者でチーム最年長・34歳になる平のJ1初挑戦は感慨深いものがある。大宮から加入した袴田は大宮時代はCBが多かったがもともとのSBとの両方での起用が予想される。町田から加入した翁長も左SBが主戦だが右SBもこなし、持ち前の攻撃力より1列前のSH起用も面白く、最終ラインを複数こなす選手たちが揃った。
 昨季のいわき戦でバスケスバイロンを完封しヴェルディサポーターからも注目を浴びた左SB河村匠、全日本大選抜の主将を務めた国士館大山田裕翔は競争にどこまで食い込めるか。

MF
 
ヴェルディをJ1に上げた漢・森田は複数クラブからのオファーを受けながらも契約更新をし、念願のヴェルディでのJ1。ボランチの相棒フィジカルモンスター・稲見とのコンビの飛躍が楽しみである。SH、2トップの一角、DHとマルチにこなせる技巧派の齋藤は横浜FC時代にJ1を経験しており若いチームにおいて頼もしい存在である。千葉から加入した見木は昨季はDHであった齋藤同様に中盤ならどこでも担うことが予想されライバルとなるだろう。DHながら終盤にはFW起用された綱島はポテンシャル秘めるもののまだ発揮し切れていなく、立ち位置をはっきりと確立したい。
 サイドアタッカーとしては中原を引き留めることが出来なかったのは痛手あるが、G大阪から山見、京都からU22日本代表候補の山田楓喜、いわきから永井を獲得し厚みを持たせた。来季の加入内定している東洋大4年生新井は昨季同様にゲームチェンジャーの期待がかかる。京都産業大から加入の食野はサイド、2トップの一角で即戦力ルーキーだ。山口から復帰した松橋や1年飛び級でトップ昇格したヴェルディアカデミー出身のU17日本代表の山本はベンチ入りを目指す。

FW
 
エース・染野が鹿島からの期限付き移籍延長。完全移籍も予想していたから意外であったがこれまでのシーズン途中加入では無く、始動から居るのは心強い。得点源の働きが期待され、リーグ戦での頑張りがパリ五輪代表にも繋がる。相方として衛星的に献身的な役回りが期待されるのが大卒3年目の河村慶人、2年目の山田剛綺だ。トップに加えてSH起用もとチームプレー優先であるが、内に秘める数字へのこだわりもあるだろう。ヴェルディジュニア出身で京都から加入した木村は山田剛綺とは大学時代に2トップ形成しておりかつての相棒とのプレーで花開きたい。国士館大から加入の古川、昨季の天皇杯東京ダービーで同点弾を挙げてヴェルディユースからトップ昇格した白井も若い攻撃陣のなかでスタメン争いに参戦する。

注目ポイント

 ハイラインを敷き、即時奪回から攻守において”相手陣地”でサッカーをすることの継続は変わらないだろう。城福体制3年目での成熟度の高さ、主軸メンバーの残留とこれまで積み上げてきたベースに新加入選手たちの色をプラスアルファ出来るか。J2以上にJ1は予算規模も膨らみ、それゆえに質の高い日本人、外国人選手を揃えるクラブもある。個の質では劣るところは大きく、見劣りする選手編成であることは否めなく、J1残留・定着が現実的な目標になる。

 昨季もJ2で前評判が決して高くなかったチームであるが、団結力、組織力の高さを武器に年間を通じて安定して戦いをで上位をキープ出来たの。リーグ最少の失点数31、1試合平均失点数0.74はJ2 歴代4位タイ、無失点試合率は55.0 %でJ2歴代2位タイとしっかりと結果も残しJ1昇格を成し遂げたことは間違いなく自信になる。
 昇格組として臨むJ1では、昨季以上に相手にボールを握られる展開が多くなることが予想される。昨季後半は相手が引いて守る試合も増えて自らがボールを持ち崩す展開もあったが、城福監督就任当時のようにアグレッシブな守備を中心にプレー強度の高いサッカーでいかにローゲームに持ち込んで勝点を積み重ねて行くかという戦い方を見ている。
 今オフの獲得した選手も複数ポジションをこなせる選手が多く、アスリート能力高い選手を揃えることで、これまで以上に手を変え品を変え、プレー強度を維持する”バトン”を繋ぐサッカーでJ1へサプライズを巻き起こす。

 リーグ優勝を経験したJリーグ創成期、前回J1だった2008年よりも緑の服を身にまとうサポーターの数が増えているのは明らかだ。フロント、現場、サポーターの一体感はひしひしと伝わってくる。スタジアムに掲げられる横断幕にこんなものがある。”俺達はヴェルディだ”。経営難、相次ぐ主力選手の引き抜きでJ3降格やチーム消滅の危機に直面したこの15年間。どんなに苦しい時も寄り添い、支え、逆境に立ち向かうサポーターの心にはグッとささる言葉に違いない。自信、勇気、誇りを持ってJ1への航海へ出発する。