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【週末投稿】つれづれ有用植物#82(キク科ベニバナ属:ベニバナ)

ベニバナは時代とともに、利用目的が変わってきた植物でもあります。
私の年代では「ベニバナ油」が一番親近感があります。

シルクロードを経由して奈良時代から日本で栽培されており、布の染料や口紅など、様々な生活用品に古くから利用されてきた植物です。
また、奈良県の藤ノ木古墳の棺内で、紅花の花粉が発見されたそうですから、奈良時代より前の6世紀第4四半期頃には既に人がベニバナを利用していたと思われます。

ベニバナの原産地は、アラビア、エジプト、地中海沿岸とされています。
多年草ですが環境により一年草として扱われます。
草丈は60~120cmほどで、トゲのある葉っぱを互い違いに(互生)つけます。6月下旬頃から写真の様に黄色い花を上向きに咲かせます。見た目はアザミに似ており、黄色からオレンジ色、紅色へと花色が変化します。

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ベニバナの花びらは、水に溶けやすい黄色の色素の「サフロールイエロー」と水に溶けにくい紅色の色素「カルタミン」が混在していますが、水にさらすことによって分離することができます。

■ベニバナ染め
手間暇がかかりますが、黄色、橙、ピンク、赤といった、絹糸やスカーフ、てぬぐい等々ステキな色に染まります。
前述の黄色の色素を落としたものを、臼でついて団子状にした紅餅を使って、灰汁や未熟な梅の果実を薫製にした「烏梅」を使って染め上げて行きます。

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■ベニバナ油(サンフラワー油)
種から採れる油は、健康に良い「リノール酸」が摂れるという事で有名になりました。ベニバナは、リノール酸に代表される脂肪酸の含有率が高い「ハイリノール種」と含有率が低い「ハイリノレイック種」に分けられるそうです。リノール酸の過剰摂取が問題となって以降は、後者の品種の生産が伸びているそうです。

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■生薬
乾燥させた花は紅花(こうか)と呼ばれ、血行促進作用がある生薬として日本薬局方に収録されています。養命酒にも使われているそうですよ。

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また、生薬をツボなどの部位に塗る紅灸(べにきゅう)という、もぐさを使わない灸の一種もあります。

■口紅
ベニバナから採れる紅は江戸時代に口紅の顔料として利用されていました。なんと、良質な紅は赤色の反対色である玉虫色の輝きを放つそうで、
江戸時代は活きな一面があったのですね~。

最近は品種改良されて、葉は丸く縁のトゲが無い「トゲなし紅花」というものが作られました。こちらは染料には向きませんが、茎が太く、濃い緑色の葉色から、切り花によく利用されています。また、クリーム色の小さな花をたくさん咲かせる切り花用の「シロ紅花」というのもあります。

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