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 女性の社会進出が進む中、スポーツ界でも女性アスリートを取り巻く状況は大きな変化を見せている。女性が思う存分スポーツを楽しみ、女性アスリートが世界でより活躍できるための環境整備は日本スポーツ界の課題の一つだ。

 柔道の谷亮子さんが「ママでも金」を目指して北京五輪に臨んでから15年。21年の東京五輪・パラリンピックには出産を経て16人の女子選手が出場するなど、日本でも「ママさんアスリート」は増加傾向にある。

 マラソンで2015年世界選手権代表の前田彩里(ダイハツ)は出産を経て競技に復帰し、パリ五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得。子育てをしながら夢を追う道を選んだ。(伊藤瀬里加)
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  4年ぶりの42・195キロを走りきった先に待っていたのは、愛娘の笑顔だった。今年1月の大阪国際女子マラソン。前田はゴールするとすぐに、長女の彩葉(いろは)ちゃんを優しく抱きしめた。

 「沿道で娘が応援してくれていて、力になりました」

 2時間25分24秒で6位に入り、今秋のMGCへの出場を決めた。

 「長距離、マラソンは年数を重ねないとわかってこない部分もあると思っている。子供も欲しいし、競技者としてもまだ走りたいという思いがあった。この選択をして今はよかった」

 3年前の2020年2月、競技人生の岐路に立った。東京五輪代表入りへラストチャンスだったレースを翌月に控えた合宿中に古傷の右太もも裏の故障が再発。欠場を決め、最終目標と位置付けていた東京五輪への道が消滅した。18年に同じ長距離選手の窪田忍(福岡・九電工)と結婚し、当時は前田が大阪、夫は愛知の実業団に所属していた。

 「辞めるか、辞めないか、葛藤があった」

 マラソンで仏教大時代の14年に日本学生記録を樹立し、15年の世界選手権にも出場した。だが、その後はけがとの戦いだった。16年リオデジャネイロ五輪は、故障で選考対象レースに出場できなかった。東京五輪選考会だった19年のMGCも出場権こそ獲得したものの、またも欠場。五輪をかけたスタートラインに一度も立てていないことが心残りだった。

 「まだやり残したというか、悔いがあるやめ方というか…。自分のベストを尽くしてオリンピックがダメだったら、納得してやめられたのかなと思うけど、出られずに結局…なので。そこが、なんかちょっと引っかかった」

 夫の窪田は「走りたい気持ちがあるのだったら、走ったほうがいい」と現役続行を勧めてくれた。一方で前田には「子どもが欲しい」という願望もあった。パリ五輪は32歳で迎える。「年齢もあるので、そこで結構悩んだ」。そんな時、“第3の選択肢”を提示してくれたのが母の淳子さんだ。

【次ページ】母が示した第3の選択肢

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伊藤 瀬里加

伊藤 瀬里加

記者

福岡県宗像市出身。 2008年入社、同年夏から運動部。一般スポーツ担当。 過去にはソフトバンク、東京五輪などを取材。 小学1年から取り組んだ剣道は5段の腕前。 趣味はジョギングでフルマラソン完走2回も、万年、口癖は「ダイエット」。 走ってもそれ以上に食べて痩せないのが悩み。

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