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飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

“ペットは家族”と言われて久しい。  数十年前であれば庭に放し飼いにされた犬など、さほど珍しい存在ではなかったが、現在ではよほどの郊外でなければそうした光景に出くわすこともないだろう。  このように、人間とペットの親密化は加速している一方、飼い主の側が理解しているつもりで行っていることがペットにとってマイナスに働く場面もある。  日本に100名ほどしかいない循環器学会認定医の資格を持つ獣医師であり、VETICAL動物病院の佐藤貴紀氏は、「愛情を持ってペットに向き合うのは素晴らしいこと」としつつも、ペットを溺愛する飼い主の一部に対し「いき過ぎた行動もみられる」と警鐘を鳴らす。
佐藤貴紀氏

佐藤貴紀氏

骨付きチキンを丸ごと飲んでしまう犬

「ペットを人間と同じように愛するのは大賛成なのですが、何でもかんでも同じにしないといけないと思っている飼い主も多いなという印象があります。12月のクリスマスシーズンに運ばれてくるわんちゃんに多いのが、骨付きチキンを丸ごと飲んでしまったケースです。人間のパーティか何かで出た骨付きチキンを、そのままあげてしまったと言うんです。さすがに骨までは食べられないので、院内で内視鏡でみて取り除くことになります。同じく、焼き鳥の誤飲もあります。人間は肉を食べて串は食べられないことを知っていますが、わんちゃんにはわかりません。食道や胃袋を串で傷つけてしまうこともあり、非常に危険です」

「ペットが朝食抜き」だから自分たちも…

“人間扱い”という愛情のかけ方がありがた迷惑になるのは、たとえばこんな場面だ。 「飼い主が自分のかじったものをあげる、飼い主の顔を舐めさせ続ける、一緒に寝る……などの行動は、心情的にはわかるものの、人畜共通感染症や寄生虫などのリスクになり得ますので、おすすめしません。人間とペットを本当の意味で対等に扱うというのは、存外難しいかもしれません。これは少しほっこりした話ですが、あるペットの手術が決まっていて、『手術があるため、朝ご飯は抜いてきてください』とお伝えしました。すると、ご家族全員が朝食を抜いて手術に臨まれたご家庭があります。ペットだけ朝食を抜かせるくらいなら全員で、ということだと思うのですが、ご家族もしっかり栄養と摂られたほうがいいと思います(笑)」
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「保健所に連れていきたい」という相談も
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