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日本はいつから「格差社会」になったのか?元日銀副総裁がわかりやすく解説

私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

日本はいつから「格差社会」になったのでしょうか?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

 かつての日本は「一億総中流」と言われ、先進国の中で大変、平等な国だと考えられていました。しかし、1990年代以降、低成長が続いたため、’00年前後から格差や貧困が大きく取り上げられるようになりました。  OECD(経済開発協力機構)は、所得の不平等の程度を「ジニ係数」という数値で発表しています。ジニ係数とは、所得などの分布の均等度合いを示す指標で、0~1の間の数値で表され、0に近づくほど所得格差は小さくなります。  ジニ係数には当初所得(税・社会保障によって再分配が行われる前の所得)と再分配所得(当初所得から税・社会保険料を控除し、年金や医療の現物支給などの公的な補助を加えた所得)の2種類があります。  再分配所得のジニ係数を国際比較してみましょう。  OECDから得られるデータをもとに比較すると、日本は36か国中11番目にジニ係数の大きな国です。日本よりも大きな国はトルコ、チリ、メキシコなどの新興国と米英です。  北欧4国を含む欧州の当初所得のジニ係数は日本とほぼ同じなのですが、所得再分配後は軒並み日本より小さくなっています。  例えば、6年連続で国連の幸福度調査で首位のフィンランドの当初所得のジニ係数は0.509で、日本の0.501よりもわずかに大きい水準です。しかし、所得再分配後は0.269で、日本よりもかなり小さくなっています。これは、フィンランドの公的年金や社会保障給付が日本よりも手厚いからです。
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