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「街にあふれるクリスマスソングがウザい」の声。最もイラつく曲は?

日本一歌われているのはback numberの「クリスマスソング」

 一方、日本ではいまどのようなクリスマスソングが流行っているのだろう?  クリスマスソングカラオケランキング 2018年12月1日から2019年11月30日までの「DAMカラオケランキング」(第一興商通信カラオケDAM調べ)によると、3人組バンド「back number」の「クリスマスソング」が1位だという。  知らない曲だったので聞いてみると、オルゴールっぽいイントロから、付け焼刃のストリングスにザクザクとギターのコードストロークが絡む、ミスチルの「終わりなき旅」風のバラードだった。歌詞は、少なくとも5分の1程度に圧縮できる内容だ。  恐らく男子が歌うのだろうが、<できれば横にいて欲しくて どこにも行って欲しくなくて 僕の事だけをずっと考えていて欲しい>とは、少々欲張り過ぎなのではないか。イブのカラオケボックスで熱唱する絵を浮かべると、けっこうな世も末感が漂う。
 このような取るに足らないラブソングの他には、CMでおなじみの「すてきなホリデイ」(竹内まりや)が思い浮かぶ。  <心に住むサンタに呼びかけて 幼い頃の夢を思い出してごらんよ>と言われては、その純粋さに心打たれずにはいられない。だが、アメリカンスタンダードへの無批判な憧れに満ちたサウンドと、クリスマスの絶対的な善を肯定する歌詞には、いくらかの恐怖を感じる。希望の濃度が高すぎて、排他的に聞こえると言ったらよいだろうか…。

曲に罪はないのだが…

 イギリスでは、「1960年代以降のクリスマスソングを流さない」という「York Gin」の“英断”を支持する声がほとんどだったという。ゴディヴァラ氏はこう言う。「決して現代のポップソングが嫌いなわけではなく、私たちが店を構える建物にふさわしい伝統のある曲が流れるべきだと考えたのです」(『i』11月10日掲載記事より 筆者訳)  音楽に罪はない。しかし、環境とのコーディネートが崩れると、たちまち不快なノイズになってしまう。クリスマスほど、それを痛感させられる季節もないのである。 <文/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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