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自社のビジネスシステム開発を希望するWebアプリSEの転職

新サービスを続々リリースするネットビジネスの雄・楽天へ

数々のサービスで巨大なサイバースペースを構築する楽天。メニューの拡張はとどまるところを知らない。そのシステム開発の上流から下流までをほぼすべて社内のエンジニアでまかなうのも同社の特徴だ。そんな楽天へ応募した若手SEの2次面接をリポートする。
(取材・文/須田忠博 総研スタッフ/高橋マサシ)作成日:06.12.20
InsighTech
応募したエンジニア 企業の面接担当者
藤井 勲さん
藤井 勲さん
(当時25歳)
樋口将嘉氏
開発企画部部長
樋口将嘉氏
当時の職種
SE
募集職種
Webアプリケーションエンジニア/SE
業務内容
消費者金融会社の業績管理支援システム(Webアプリ)の開発。
仕事内容
楽天がリリースする新サービスのアプリケーション開発。
職務経歴
大学数学科を卒業後、SI会社に入社。6カ月間の新人研修後、Windows系の企業業務システムの試験・開発などを2年半。
応募資格
Java、PHP、C、Perlのうち1つ以上の言語によるアプリ設計・開発・運用経験、コミュニケーション能力など。
志望動機
明確に結果までわかる自社サービスのシステム開発を手掛けたい。
募集背景
「世界一のインターネットサービス企業」の実現に向けて成長スピードを加速させるため。
面接の流れ
採用を予定する開発部門の部長・役員が行う。
会社説明会に引き続き、面接官1名と候補者2〜3人によるグループ面接を行う。所要時間は40分程度。
開発部門の部門長・部長2〜3人と候補者1人で面接する。所要時間は30分強。
開発担当役員が1対1で面接する。所要時間は30分程度。
3次面接の終了後に採否の最終決定。内定の場合は採用担当者から別途待遇を説明。
【通過率:約6割】

【通過率:約4割】

【通過率:8割程度】

Part1
会社のイメージとサービスの利用
よく利用するのは楽天トラベル
樋口:
 お忙しい中、ありがとうございます。よろしくお願いします。
藤井:
 はじめまして。こちらこそ、よろしくお願いします
樋口:
 【Point1】早速ですが、楽天という会社にどんなイメージをもっていますか?
藤井:
 急激に大きくなった会社。スピード感のある会社。そういう印象が強いです。
樋口:
 弊社がシステム開発に懸命である姿は社外から見えていますかねえ?
藤井:
 開発が多いだろうとは想像しています。
樋口:
 それは、インターネットに広く触れてきたうえでのイメージですか?
藤井:
 ええ、そうです。
樋口:
 弊社のサービスではどんなものを利用していますか?
藤井:
 【Point2】いちばん多いのはトラベルです。割安の宿を予約するなどで使っています。
Point1
[面接官]答えやすいことから尋ねて、緊張をほぐすのが狙いです。答えの内容が選考の評価に直結することはありませんが、インターネットの利用感度は見ておきます。
[応募者]実際の2次面接でも同様の質問で始まりました。面接の場が最初から和やかだったことを覚えています。
Point2
[面接官]楽天トラベルは弊社の看板サービスのひとつ。弊社への関心度は平均的と受け取りました。もし、ニッチなサービスを日々活用しているなどと返ってきたら、選考上の興味が増しますね。
[応募者]私は逆に考えていました。メジャーなサービスを答えたほうが印象はよくなると思い込んでいたんです。実は、楽天市場も利用していたんですが、頻度を考えてトラベルと答え、内心ではちょっと後悔していました。どちらを答えても看板サービスですから、面接官の心証は同じだったんですね。
 
Part2
技術力

業務経験に加えて研修や学生時代の経験も
樋口:
 【Point3】それでは、藤井さんの職務経歴をかいつまんで説明してください。
藤井:
 私は○○○(SI会社)に3年勤めています。その中で最も長かったプロジェクトと現在進行中のものについてお話します。長かったのは、新人研修後すぐに担当した、鉄鋼卸業者向けパッケージシステムの受入試験です。このシステムは規模が大きく、100〜200人のテスト要員が動いていました。私は新人の教育も行いました。
 一方、現在担当しているプロジェクトは、消費者金融会社の予算管理システムの開発です。これはWebアプリケーションで、担当工程は設計からプログラミング、テスト、導入までのすべてです。
樋口:
 【Point4】新人研修が6カ月間あったようですが、その内容は覚えていますか?
藤井:
 Cを中心とした言語研修と、開発工程に沿ったドキュメント作成に関する研修です。
樋口:
 学生時代にプログラミングの勉強は?
藤井:
 CとJavaをかじった程度です。
樋口:
 数学の研究に付随して勉強した?
藤井:
 はい。これがきっかけとなりシステム開発の仕事を選んだ形です。
業務内容の詳細かつ具体的な確認
樋口:
 今のプロジェクトで最もチャレンジングだった点を挙げるとしたら、どこですか?
藤井:
 消費者金融のシステムなのでデータ量が膨大です。夜間にバッチ処理をするんですが、それを速める構成に最も力を入れました。
樋口:
 6人のチームで、藤井さんはどのくらい要件定義にかかわってきていますか?
藤井:
 【Point5】プロジェクトがスタートして1年近くになるのですが、半年くらいたったころから客先での要件定義に加わっています。
樋口:
 業務知識はどうやって習得しましたか? また、設計面でいちばん学べたのは何ですか?
藤井:
 業務知識はチーム内で教えてもらったり、ドキュメントを読んだりの繰り返しです。設計で学べたのは、やはりバッチ処理の時間短縮です。ハードに頼らざるを得ない条件下でも、中身的にさらに速くする工夫ができました。
樋口:
 使用言語は基本的にJavaですか?
藤井:
 JavaとDB2のストアド・プロシジャーです。
樋口:
 設計・プログラミングはメンバーが機能ごとに分担する形ですか? また、藤井さんの担当分の概略を、差し障りのない範囲で教えてください。
藤井:
 メンバーが機能ごとに分担していて、私の担当は店舗ごとの営業実績の数字を出す、帳票部分です。
樋口:
 【Point6】帳票の数は?
藤井:
 20〜30です。
樋口:
 【Point7】その帳票はデータベースからどんな経路で出てくるんですか?
藤井:
 COBOLで作られたデータベースから情報をもらい、DB2のストアド・プロシジャーで加工して、Web SphereでWeb画面から出力する形です。
樋口:
 その画面は完全にオンラインで出す?
藤井:
 最初の帳票画面はアクセスして取ってくるんですが、それ以降はキャッシュしておいて随時出すようにしました。少しでもスピードを稼ぐためです。
樋口:
 かなりにリアルタイムでリクエストを受けるシステムなんですね。そうすると、バッチのほうは定型データを継続的に配布するために行う?
藤井:
 はい。そういうことです。
Javaへの志向度と現在の技術レベル
樋口:
 現在のプロジェクトの前の1カ月間、新人研修でJavaのトレーナーをしていますね。どのくらいのレベルでの指導でしたか?
藤井:
 質問に答える形式がメインでした。例えば、スケジュール管理ソフトをJavaで作るという課題を設けて、各人の分担作業にアドバイスしていくなどです。
樋口:
 トレーナーにアサインされた経緯は?
藤井:
 入社2〜3年目の社員が務めるのが慣例になっていて指名されました。
樋口:
 その時点でJavaには自信があった?
藤井:
 【Point8】いえ(笑)。正直、自信がないから引き受けたんです。教える立場へ自身を追い込めば、Javaの学習が一段と進むだろうと考えました。
樋口:
 それまでのプロジェクトはC#でしょ。C#を伸ばしていくのが自然な気がするんですが、あえてJavaに取り組んだのはなぜですか?
藤井:
 C#だけだとWindows環境に縛られてしまいます。それは嫌でした。
樋口:
 Javaで開発する今のプロジェクトに入ったのも、自分から手を挙げたんですか?
藤井:
 そうです。トレーナーの話がくる前から申請していました。
Point3
[面接官]職務経歴の説明を聞く際に注意する点は、キャリアの長さによって異なります。30歳前後の応募者については、技術経歴を整理して説明する力と得意な業務領域に注意を払います。一方、藤井さんのような若手の場合はポテンシャル重視になりますから、スキルが多く身についた職務経験を話してもらいます。
[応募者]職務経歴の説明は長々としないよう事前に決めていました。知ってほしい経験プロジェクトだけを取り上げ、スポットの仕事に関しては経歴書を読んでもらえばいいと思ったのです。
Point4
[面接官]第二新卒に近い応募者の場合は、前職での新入社員向けの技術研修の内容、学生時代の自主的な技術経験について必ずチェックします。特に大手SI企業の新人研修は内容が体系的かつ充実していますから、選考でプラス1ポイントの感じになります。
Point5
[面接官]弊社で作るのは自社サービスのシステムですから、「客先での要件定義」が「社内調整」となります。半年程度の経験があれば、入社後、少なくとも戸惑うことはないだろうと判断しました。
Point6
[面接官]この質問は、端的に手の速さを推測したくて尋ねました。成果物には当然、質が問われますが、一定期間内での生産量も軽視できません。特に若いエンジニアの場合、書いたコードの量に比例してスキルや知識の習得度も高くなります。それが先々伸びていく糧になると私は考えています。同時に、量をこなせるということは創意工夫と根気がある証拠ともみなせるのです。
Point7
[面接官]この質問の意図は、システムの全体像を理解したうえでパーツを設計・プログラミングしているかどうかを探るところにあります。ひとつの機能を作るにしても、システム全体のアーキテクチャを踏まえて組み立てることが重要ですから。
Point8
[面接官]学習機会を自ら獲得しようとする向上心の強さを感じました。ちなみに、応募時の藤井さんのJavaのレベルは、Javaでの開発実務経験1年弱というだけで測るべきではなく、このトレーナーとしての再学習も加味し、初級レベルは卒業しているのではないかと思いました。
[応募者]キャリアが浅い私としては、開発工程をひと通り経験していることと、Javaスキルの向上意欲を買ってもらうほかないと考えていました。ですから、職務経歴に関する一連のやりとりで、両方に触れられてよかったと思いました。
Part3
志向性の再確認
志望動機とキャリアプランの一貫性
樋口:
 【Point9】今の職場では技術志向を割と満たせる条件にあるようですが、それでも環境を変えようとするのはどうしてですか?
藤井:
 自分が働く会社のシステムを開発したいからです。それが直接、自社の利益を生んだり世の中のためになったりする仕事に携わりたいです。SI会社ではそうはいきません。そこで、ネットビジネスの会社への転職を考えました。
樋口:
 【Point10】ネットビジネス企業はたくさんあります。その中で弊社を志望する意味は何ですか?
藤井:
 国内最大のインターネットショッピングモールである、楽天市場のシステムに携わりたいという思いを強くしています。大きいものにチャレンジしたいという気持ちです。
樋口:
 【Point11】逆に小さい会社に入れば幅広く経験できて、キャリア形成上は価値があるとも考えられるのですが、どうですか?
藤井:
 そういう考え方もあるとは思いますが、今のところ、小さな会社は想定していません。私は目立つことが好きで、メジャーなシステムを作って知人たちに自慢したい(笑)。広く認められる実績を残すほうが、技術キャリアとしては有利なのではないかと思っています。
樋口:
 【Point12】弊社に入社した場合に限らず、3年後とか5年後のキャリア、また、実現したいエンジニア像はどんな感じですか?
藤井:
 当面は技術力の向上に努めたいですし、その必要があると考えています。ただ、5年後となれば、幅広い分野で上からも下からも認められ、信頼されるエンジニアになっていたいです。
樋口:
 何か特定の技術領域でキャリアを太くしていきたいという思いはありますか?
藤井:
 やはりJava技術は高めたいです。御社にはJavaの本を書いておられる方がいると聞いています。その方を超えることを5年後の目標にしたいです。
(このあと、樋口氏は藤井さんからの質問を促し、それに答えた)
Point9
[面接官]転職の動機を聞く際に最も注意するのは、現職では何が不満であり、その不満が弊社で改善されるのかどうかです。この点がミスマッチならば、選考を進める意味がありません。
Point10
[面接官]アプリ開発のエンジニアには入社後、さまざまなサービスのシステムにかかわってもらいます。特定のものだけに偏ったこだわりが強い人では困り、志向に柔軟性や広さが必要です。そのあたりを探るために尋ねました。
Point11
[[面接官]この質問には意地悪さも含んでいます。こう反問されて動揺するような応募者は、入社しても2〜3年のうちに再転職していきがちなのです。
Point12
[面接官]この質問で知りたいのは2点です。ひとつは、転職の動機の延長線上にキャリアプランがあるのかどうか。もうひとつは、中期的に自分自身の「伸びしろ」をどの程度課していきたいと考えているのか。藤井さんの答えを聞くと、転職の動機と志望理由とキャリアの希望に矛盾がなく、上昇志向も強いように感じられました。
[応募者]この質問は予想していました。どう答えるかは、普段思っていることを素直に話すと決めていました。
面接官はココを見た!
●技術に対する強いこだわりがあるか。
●サービスの創造に情熱を注げるか。
●密度の濃いコミュニケーションがとれる素地があるか。
 若手の選考では、何かの技術へのこだわりを重視する。どの領域で第一人者になりたいかを確かめ、楽天の中でそれが可能かどうかをすり合わせる。次に、サービスをつくり出すことへの熱意を見る。自社サービスのための開発である以上、企画者的な情熱が開発面でも必要とされるからだ。また、将来的には高度のコミュニケーション能力が欠かせないので、その素地を確認する。熱意とコミュニケーション能力を備えていれば、入社後に急成長するとの認識だ。
藤井さんはコレで決めた!
「どの面接官も切れ者で、こんな人たちの下で磨かれたいと思いました。
それに、部長も役員もみな若く、年齢に関係のない実績重視というイメージ。
入社できたら、私も頑張ろうと闘志がわきました」
 3度の面接を通じて感じたのは、どの人もシャープな頭脳の持ち主だということでした。甘い答えだったかなと思うところは、見逃してもらえませんでした。必ず突いてくる。こんな人たちの下で磨かれたいと思いました。同時に部長も役員も、見た目だけかもしれませんが(笑)、みな若い。あとで聞いたら役員も30代。年齢に関係なく、実績次第でポジションが上がることを目の当たりにした感じでした。私も頑張りたいと意欲を新たにしました。
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楽天のエンジニアは若い人が多いですね。服装が自由なせいか、大学のサークル仲間が集まっているようにも見えます。ただ、まじめな人が多い。そして、仕事にコツコツと取り組む人が多いと感じています。そんな社風やエンジニアの姿なども、記事から読み取っていただけたらうれしいです。
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