まずこの記事は、ジブリ大好き元バックパッカーである筆者の視点から説いた、オリジナルのラピュタ解釈です!
新しい解釈でラピュタのモデルや場所を特定します!
なぜこのように自己紹介したかというと、宮崎駿監督は、ほとんど間違いなくギリシャ・トルコをはじめとするユーラシア大陸が大好きだという確信があるからです。
大好きという言葉でなければ、歴史や文化人類学に精通すると同時に、地中海周辺エリアの神話や物語を相当読み込んでおり、そこからインスピレーションを受けているとも言えるでしょう。
このことは筆者が旅人であり、このエリアが特に好きだからこそ感じるものがあります。言うなれば「旅人目線のラピュタ解釈」です。言語はしゃべれなくとも単語(の音)からエリアや歴史が特定できることもあり、包括的な知識・経験・土地鑑がヒントになることもあります。
※よって、この記事は筆者のリアルな経験によって導き出された文章です。万一引用されるような奇特な方がいらっしゃっても、必ず引用元は明らかにされるようお願いします。
- モデルの国と場所は?正解はギリシャの「メテオラ」
- ラピュタの意味は空飛ぶ島?メテオラ説を推す理由
- 炭鉱&お城のモデル地はウェールズ(国はイギリス)
- もうひとつの炭鉱街カッパドキア(国はトルコ)
- シータの飛行石のモデルはトルコ石?
- ラピュタの中で「方角」に関する言葉は4回出てくる
- カッパドキアからメテオラはほぼ真西の場所
- 新説!ゴンドアはゴンダールがモデル(国はエチオピア)
- ラピュタの中の旧約聖書・バベルの塔
- 地図をひっくり返すと場所が完全合致!
- ラピュタの根幹!そもそもシータはギリシャ語
- ムスカとシータの本当の名前と呪文の秘密
- そして最後の呪文「バルス」はトルコ語
- おまけ 日本の友ヶ島や他のモデルは?
- まとめ ラピュタのモデルはメテオラ説
モデルの国と場所は?正解はギリシャの「メテオラ」
ラピュタのモデルの場所「メテオラ」とは?
結論から言うと、ギリシャの「メテオラ」こそ、天空の城ラピュタのモデルであると筆者は考えます。
この「メテオラ」はギリシャ中部テッサリア地方に位置。世界遺産の中でもまれな「複合遺産」に登録され、文化財としても自然環境としても優れた遺産として保存されています。
独特の切り立った奇岩と崖の景観が迫力で、人を寄せ付けない神秘的な雰囲気から、古来より聖地として修道士たちの修行の場となっていました。
ギリシャの「天空の修道院」メテオラ
そんなメテオラの修道士たちは、14世紀頃になって修道院での共同生活を営むようになりますが、それらは驚くべきことに断崖の岩の頂上に建てられました。この修道院群が、「メテオラ」の語源であるギリシャ語の「メテオロン」、すなわち「空中」「宙に浮かぶ」という意味で呼ばれるようになります。
この「天空の修道院メテオラ」の話のミソは、最近の観光スポットとして「天空」という言葉が使われたのではない、ということです。メテオラの一番大きい修道院は「メガロ・メテオロン=空に浮いた大いなるもの」という通称で知られ、ギリシャ内外で伝統的にその呼び名があった、ということが重要です。
すでにこの時点でラピュタの「天空の城」に近い表現となっていて、実際メテオラに訪れた人の中には「ラピュタみたい…」なんて思った人も少なくないのではないでしょうか!?
ラピュタの意味は空飛ぶ島?メテオラ説を推す理由
スウィフト「ガリバー旅行記」の空飛ぶ島
コアなファンの方はご存知かもしれませんが、実はラピュタのモデルはジョナサン・スウィフト作、18世紀の「ガリバー旅行記」であると言われています。この中に「空飛ぶ島 ラピュータ」が登場し、科学と自然の対立が描写されています。
では、このスフィフトの「空飛ぶ島 ラピュータ」はどこからきたのでしょうか?
スフィフトは社会風刺としてガリバー旅行記を書いたとされますが、一方では旅行記として、ほとんど間違いなく古代ギリシャの超有名な叙事詩「オデュッセイア」からインスピレーションを受けていると思われます。
実際、ガリバー旅行記の「巨人の島ブロブディンナグ」は、オデュッセイアの「一つ目の巨人キュクロープスの島」からの引用を思わせますし、古い物語や神話、伝記、郷土史などを参考・モデルにした可能性は極めて高いです。
なぜならスウィフト自身は、外国に訪れたことも、旅行したことすらも、ほとんど経験がないためです。
ギリシャ神話のラピテース族がモデル?
筆者の考えるラピュタのモデル「メテオラ」は、前記の通りギリシャのテッサリア地方に位置します。実はギリシャ神話において、このテッサリアは「ラピテース族」、複数形で「ラピタイ族」という半神話的民族の住んだ土地として記されています。しかも英語では「ラピタ」と呼びますので、けっこう直球です。
つまり、スウィフトの「空飛ぶ島 ラピュータ」の発想やネーミング自体が、メテオラやギリシャ神話がもとになっている可能性があり、「空に浮いた大いなるもの ラピタの地」との関連は偶然ではないというのが筆者の見解です。
そして、宮崎駿監督も、もしかしたらそのことを知っていたのではないか、とさえ考えます。なぜなら監督は「風の谷のナウシカ」で、オデュッセイアに登場する「ナウシカアー」の名を採用するほどには、ギリシャ神話フリークですから…。
ここまでが冒頭ですが…いまひとつシックリきませんか?
それではさらにギリシャ・メテオラ説を後押しする解釈を以下に順を追ってご紹介します!ラピュタをギリシャに設定することでストンとくる部分がきっとありますよ。
炭鉱&お城のモデル地はウェールズ(国はイギリス)
お城のモデルは世界遺産「カーナーヴォン城」
「存在」「概念」のモデルがギリシャだとすれば、「ビジュアル」のモデルにはイギリス・ウェールズ地方を取り入れています。公式に参考がウェールズとありますので、この点は否定しようがありません。
特にシータが登りつめる棟の上はかなり特徴的で、ここのモデルはウェールズ北部の「カーナーヴォン城」と「コンウィ城」という説が有力です。これらは「グウィネズのエドワード1世の城郭と市壁」という名称で登録される世界遺産に含まれ、ジブリファンの聖地としても、観光としても見ごたえのある城塞です。
また同世界遺産には、「カーナーヴォン城」と「コンウィ城」の他に「ビューマリス城」「ハーレフ城」と、計4つのお城が登録されています。これらのお城も一部モデルにされている可能性があるので、訪れた際にはぜひ検証してみたいものですね。
パズーの炭鉱街は「ブレナヴォン」と「ビッグピット」
パズーの働く炭鉱もまたモデル地はウェールズとされ、「ブレナヴォンの産業景観」としてやはり世界遺産に登録されています。このうちの「ビッグ・ピット国立石炭博物館」は、空から降りてきたシータをパズーが受け止める印象的なシーンで採用されたあのスポットに酷似。
また地下炭鉱へのツアーも参加できますので、パズーや親方の仕事をイメージできます。ラピュタ好きとしてはぜひとも体験したいところですね!
生じる疑問!パズーの「スラッグ渓谷」とは?
ただ、ここで小さな疑問が生じます。この「ブレナヴォン」、また「カーナーヴォン城」や「コンウィ城」に至るまで、その周辺の景色を見ると、かなり「平坦」な土地です。ブレナヴォンは正確には丘陵地帯ですが、まるで平野という雰囲気で、広々と良い景色。
ですが、ラピュタの映画に出てくる炭鉱街は岩に囲われ、全体的にゴツゴツしていることに気づきます。もっと言えば、「街と岩が一体化」したような、非常に独特な景観。パズーの住む街は「スラッグ渓谷」と紹介されていますが、そもそもウェールズは「渓谷」という雰囲気からは遠く、その点ではモデルとは言いにくいと思います。
もうひとつの炭鉱街カッパドキア(国はトルコ)
世界遺産カッパドキアの城塞ウチヒサール
筆者の経験上の話ですが、「街と岩が一体化」というキーワードから導き出される場所は、イタリアの「マテーラ」とトルコの「カッパドキア」です。両方とも世界遺産として登録され、素晴らしい景観を有する観光スポットでもあります。
そんな2つの街を比較すると、「マテーラ」の渓谷も良い雰囲気ですが、景観や条件から言うとやっぱりカッパドキアがモデルかなと思いました。カッパドキアの中でも特に「ウチヒサール」や「オルタヒサール」は、岩山に家がへばりついている感じや、洞窟住居の様子が迫力。
たとえば以下のラピュタの背景シーンは、上部は岩肌に直接窓や階段が掘られているのが分かり、下部になると家々の屋根が見えます。このラピュタのシーンと、ウチヒサールの写真はよく似ていませんか?
パズーと言えば!「鳩の谷」が実在
またカッパドキアを推したのは、パズーと言えば「ラッパと鳩」が連想されるということもポイントになっています。
谷に響く軽快なラッパの音、光と影の中を飛ぶ鳩。言わずと知れた名シーンですよね。実はそんな鳩に関連する場所がカッパドキアにはあり、その名も「鳩の谷」。これまた直球です!カッパドキアには伝統的に鳩を飼う習慣があり、谷にある洞窟の小屋で飼育していた歴史があります。
また余談ですが、パズーはなぜあのシーンでラッパを吹いたのでしょう。
ラッパと鳩となると、ごく自然に「天使」が連想されます。ラッパはキリスト教では「再生」や「祝福」を意味し、シータの目覚めの象徴かもしれません。ただ一方でラッパは「終わり(終末)のはじまり」の合図でもあるとされ、バルスとラピュタの破壊が「終り」を示すなら、確かにこのシーンは、終わりに向けたはじまりのシーンです。
ちなみにカッパドキアは「迫害されたキリスト教徒が隠れ住んだ土地」であることも添えておきます。
シータの飛行石のモデルはトルコ石?
ラピュタの飛行石は「トルコ石」の可能性
炭鉱街の場所をトルコに設定することでひとつの答えになるのが、飛行石のモデルです。これも直球ですが、トルコと言えばトルコ石、ターコイズ。そもそもラピュタの映画で飛行石を見た時に「トルコ石かな?」と思った人も少なくないのではないでしょうか。
そんなターコイズは、緑がかったものから、明るい水色、比較的青みのあるものまで、産地によってカラーバリエーションがあります。青の濃いものほど高級で、緑みが強くなるほど安価になっていくという特徴があります。
ただ青い宝石は意外に種類があり、サファイアやラピスラズリがモデルという可能性も捨てがたいです。また更に裏の話をするなら、ウランじゃないかと思ったりもしています。ウラン鉱石は光る石として知られており、ラピュタを動かす動力が原子力というなら辻褄が合いますね…。シータの家族の早世も説明がつきます。
「飛行石の洞窟」のモデルは日本にも?
ちなみに、ポムじいさんのシーンにある「光る石の洞窟」は世界各地に似た景観があります。特にニュージーランドの「ワイトモ洞窟」は幻想的で、ここがモデルだとしても納得の風景。ただワイトモ洞窟は別名「グローワーム・ケーブ」とも呼ばれ、光っているのはグローワーム=虫です!きれいですが、全部虫だと思うと…冷静になると怖いです笑
また日本にも光る洞窟が存在し、北海道の羅臼にある「マッカウス洞窟」という名で知られています。ここで光っているのは苔。数少ない「ひかりごけ」の生息地ということで、他にはないどこか神秘的な雰囲気です。ただ残念ながら現在は閉鎖中とのこと。
また日本に唯一残るウラン坑道、これは岡山県に位置し、実はけっこう気軽に見学可能です。坑道内で光るウランは、突如として生々しく…。
案外この場所が正解かも、なんて思っています…
ラピュタの中で「方角」に関する言葉は4回出てくる
ラピュタは「真東」・ゴンドアは「北」という方角
ラピュタの中で、方角を示すワードは4回出てきます。そのうち具体的なワードは2回。1つ目は飛行石の光が差した方角で、ドーラとシータが次のように話します。
シータ:「私のいた塔から日の出が見えました。
今は最後の草刈りの季節だから、日の出は真東よりちょっと南へ動いています。
光は日の出た丘の左はしをさしたから…」
ドーラ:「いい答えだ」
2つ目はシータの出身地の話を受けたパズーの言葉で、方角が示されています。
ドーラのヒント「貿易風」と「東洋の計算機」
あとの2回は、直接的な方角ではなくて、あくまでヒント。ドーラがラピュタへ向かう際のセリフに、次のようなものがあります。
こりゃあね、東洋の計算機だよ」
計算機はそろばんのことを指して言っています。「東洋」というワードが出てくるということは、舞台は西洋ということですね。
またここでぜひとも覚えていてほしいのは、「貿易風」は、東から西へ吹く風ということです。反対に「偏西風」は西から東に吹きます。
カッパドキアからメテオラはほぼ真西の場所
「貿易風」なら方角は合致する
ラピュタの映画の中では、砦からラピュタへの方角は「真東」となっています。一方、トルコのカッパドキアからギリシャのメテオラは、ほぼ「真西」です。
上の項で記載した通り、「貿易風」は東から西に吹く風。この貿易風に乗ってラピュタに行く、という話をしているのですから、東のトルコから西のギリシャに向かう場合、立地としては完全に合致しています。
もしラピュタに向かって西から東へ行こうとする場合は、「偏西風」に乗らなければなりません。
タイガーモス号の飛行距離は微妙なところ
ただ距離としては少々ブレがあり、時系列として、シータが日の出を見たのがだいたい朝7時頃。そこからドーラの船でラピュタを目指し、翌日の夜明けごろにラピュタに遭遇することになります。飛行時間として23~24時間。
ドーラたちの飛行船「タイガーモス号」は、巡航速度65㎞、最高速度133㎞。砦からラピュタまでは約2000㎞といったところです。トルコ・カッパドキアからギリシャ・メテオラの直線距離は約1200㎞ないですので、距離としては満たないですね。ただし、タイガーモス号は道中で進路が狂います。
パズー:「そうか、ぼくらは東へ進んでるはずなんだ!ブリッジ!」
ドーラ:「えっ?北へ向かってるって?コンパスは東をさしてるよ」
夜明けが横から、ということはほとんど真北に進んでいるようなものです。このため実際的な距離がどの程度だったかは分かりにくいですね。ただ、それ以前に「ラピュタ」が動いてしまっているので、あまり決定的なことは言えないかもしれません笑
新説!ゴンドアはゴンダールがモデル(国はエチオピア)
一方「北」に位置するというシータの故郷であるゴンドアの考察や検証は、他でも面白いものばかりで、特に大好きです。身も蓋もない言い方をすれば、モデルや舞台地はいろいろと混ざっているような気がします。
ゴンドアはジョージア「ウシュグリ村」説
ただ、そんな中でも、景観という点ではジョージアの「ウシュグリ村」はかなりリアル!この村は世界遺産「アッパー・スヴァネティ」のうちに登録されています。
この村がゴンドアのモデルなら説得力があります。ジョージアは意外なほど山間で、ロシアとの国境には非常に高い山がそびえます。筆者が行ったときは冬でしたのでそれはもう極寒でした。機会があれば夏に行きたいですね。
ちなみにジョージアはカッパドキアから北西に位置します。ゴンドアが北というのなら、立地として合致しています。
ゴンドアはインドorネパール説
一方ネパールがモデルという説は、パズーのセリフによるところが大きいです。
見たいんだ、シータの生まれた古い家や谷やヤク達を…」
実は正直、「えっ、ヤク!?」と思いました。ヤクという動物の生息地が示すのは、つまりモデルはネパールまたはチベットということになります。ゴンドアから見る山はヒマラヤです。そういう意味では確実なのですが、文化的にはちょっと違いそうで、モデルと表現してよいのか微妙なところ…。
ちなみにネパールで比較的ゴンドアに名前が似ていて、雰囲気の良い村を発見したので、筆者としては「ガンドゥクGhandruk」という村を推しておきます!アジアのゴンドアです。
一方で、ラピュタには「ラーマーヤナ」「インドラの矢」に触れるシーンがあり、インドには「ゴンドワナ」という地名もあるので、インドモデル説も好きです。ナウシカのクシャナなど、ジブリにはインドを連想する響きも出てくるので、どことなく関連あるかもと思ってしまいます。ただ、ゴンドワナにヤクはいません!
新解釈エチオピア「ゴンダール」説
そんな他の説を除けて、筆者がゴンダールを推している理由は3つあります。それは名称、立地、旧約聖書によるものです。
ちなみにゴンダールはアフリカ大陸エチオピアに位置していますが、多くの民族集団から構成され、混血の多い国です。エチオピア人種に限っていえば、黒人(ネグロイド)と白人(コーカソイド)の中間的な特徴を有し、びっくりするほど美男美女が多い。伝統的にキリスト教徒が多くいます。
エチオピアはかつて強大国で13~20世紀に至るまで「エチオピア帝国」として存続していました。今では小さな町という風情のゴンダールですが17世紀には首都とされ、世界遺産にも登録されています。そんなゴンダールには古からの伝説があり、創始者は「ソロモン王」の血筋だということが伝えられています。
ソロモンとは誰かというと、巨人兵士「ゴリアテ」を倒した「ダビデ」の息子です。その地にシータの故郷があったとすれば、どこか暗示的ですよね。
尚、ゴンダールの北側にある「シミエン国立公園」には高山が連なっており、「アフリカの天井」と呼ばれるほど。世界遺産にも登録され、なんと1978年に世界ではじめて世界遺産に登録された12件のうちのひとつです。
ラピュタの中の旧約聖書・バベルの塔
ラピュタには旧約聖書の逸話が隠されている
本筋と離れますので少しだけ…。上記の項で触れた通り、パズーの「ラッパと鳩」、ムスカの「ゴリアテ」や「ソドムとゴモラ」、それにゴンダールの「ソロモン」、これらをつなぐと現れるのは「旧約聖書」です。
これに沿って考えた時、ラピュタの構造が「バベルの塔」をモデル・イメージにしている可能性は高いと思います。
「バベルの塔」と「バビロンの空中庭園」がモデル?
ラピュタの構造は外側から見ると、上部の庭園部分と下部の建物部分に別れているのがわかります。この建物部分が、「バベルの塔」を連想するつくりになっているのではないかというのが筆者の見解です。
また庭園部分は「バビロンの空中庭園」を意識している可能性も大いにあると思います。この2つは古代世界の中では、「空中」や「天」というワードから連想する、代表的な建造物であると言えます。
地図をひっくり返すと場所が完全合致!
メテオラとカッパドキアの場所は合致
地図はこのままで「貿易風」の設定と、ゴンドア=ウシュグリ村説を採用するのもありかなとは思います。それはともかくも、ラピュタへは真西ではなく真東へ向かったということで、この設定を生かすために地図をひっくり返すことにします。
ひっくり返すと…?
すると、これまでの仮説が、驚きのレベルでマッチ…!
炭鉱街・城塞=カッパドキアから「ずっと北」がゴンドア=ゴンダール、「真東」がラピュタ=メテオラ、このすべてが合致します。ゴンダールは大陸が異なるので一見遠くに感じられるかもしれませんが、トルコからみれば、エチオピアはイギリスやインドよりも近いです。
どうでしょう、ラピュタのモデルはギリシャ・メテオラ説、説得力が増しませんか?
ラピュタの根幹!そもそもシータはギリシャ語
実はシータもドーラもギリシャ語
ここまできて、ラピュタの基礎とでもいうような、そもそもの話をしましょう。
そもそも、「シータ」はギリシャ語です。高校の時に数学で現れる、あれ。大文字Θ小文字θのシータ。ギリシャ語から名前を取ったのはかねてより構想があったようです。
加えて「ドーラ」、これもギリシャです。ギリシャ人の女性の名前。語源としてはドロテア(ドロシー)や、テオドラの省略あるいは派生からなるようです。ドーラの息子たちはギリシャ語ではなくフランス語名を採用していますので、もしかしたらドーラの亡き夫はフランス人ということかもしれません。
「竜の巣」とドラゴンの語源とは
さらに、ヨーロッパの竜は、その語源はすべてギリシャ語に行きつきます。ラピュタの映画の中の「竜の巣」に直結するわけではありませんが、「竜=ドラゴン」は古代ギリシャの「蛇=ドラコーン」が語源になっています。この蛇が次第に変化し、ギリシャ神話の中で「有翼の蛇」が描かれるようになります。
実はドラゴンの以前に、蛇自体、世界中の様々な神話に登場する存在です。これは潜在的な恐怖だけでなく、脱皮の「再生」に見る神秘性など、畏怖の思いがあってのことかと思います。日本でも白蛇は縁起が良いなどと言いますね。そのために単なる蛇から翼を有する存在になったのかもしれません。
恐れや力また神性は、ドラゴンにも引き継がれているように思いますし、中世になってからは、この翼で「空気を乱す」存在として描かれるようになります。これが「低気圧=竜の巣」の発想のもとになっていると考えられます。
ムスカとシータの本当の名前と呪文の秘密
ラピュタの王?ムスカの本名にもギリシャ語が!
そしてギリシャ・メテオラ説への追い上げですが、実はムスカの名前にもギリシャ語が使われています。ムスカとシータはラピュタの王族で、本当の名前があるのは映画の中で明らかですよね。
ムスカ → 「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」
ムスカ自身が説明していますが、ラピュタ語で「トエル」は真、「ウル」は王。このためシータの名前は「ラピュタの真の王リュシータ」ということになります。ではムスカは?
ムスカの名に「トエル」が使われていないのは、ラピュタの真の王ではないからです。代わりにあるのは「パロ」。
この「パロ」こそギリシャ語であり、「代わりに」「ある権限のもとで」「副」といった意味のある言葉です。現代の「パロディ」の語源でもあります。つまりムスカは真の王ではなく、代理の王であり、「ラピュタの副王ロムスカ」ということになります。
ここまでくると、逆にラピュタの物語がギリシャとまったく関連が無い、とは言いづらくなってきますね。
ムスカという名前のモデルは?
ちなみに完全な主観ですが、「ロムスカ」となると「ロム」が強調され非常にラテンっぽく感じ、「ムスカ」となると「スカ」が協調されスラブっぽく感じます。
ただそもそもヨーロッパ圏は「A」で終わる男性名は本当にまれだと思います。たとえばミカエルをミカなどと省略形で呼ぶようなことはありますが、名前としてはインディアナとヨシュアくらいしか調べても出ませんでした。
それもあって、「ムスカ」は案外ギリシャの有名な郷土料理「ムサカ」をもじっただけじゃ?と筆者は思っています。「ムスカ」にそっくりですよね。ギリシャ版のラザニアのようなもので、ボリュームがあっておいしいですよ。
…これが正解だったら逆にどうしよう笑
呪文リーテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール
一方、ラピュタ語で「我を助けよ」「光よ、よみがえれ」。この呪文のモデルや語源についてはいろいろ考えましたが、謎が解けませんでした。ただどうも「リーテ・ラトバリタ・ウルス」と「アリアロス・バル・ネトリール」で、文章が別れてそうです。ということは、シンプルに考えればこうなります。
アリアロス・バル・ネトリール→ 「光よ、よみがえれ」
そこで、気ままに英語化してみました。
ちょっとラピュタ語の発音に寄せた単語をチョイスしていますが、そう遠くない気も…。いや微妙か…。少なくとも西洋の言語がモデルになっているのかな?と思いましたが、逆に具体的な言語が成立しないように注意したのかもしれませんね。
そして最後の呪文「バルス」はトルコ語
「バルス」の呪文でトルコの設定が生きてくる
そして炭鉱街のトルコ・カッパドキア説が、ここで回収されます。というのも、「バルス」がトルコ語だという説はかなり浸透しており、モデルがカッパドキアならガッチリ筋が通るというわけ!
現地発音は「バルシュ」に近いですが、その意味は「平和」。隠された意味とはいえ、ラピュタの映画のラストシーンとして最後の呪文が「破壊!」となるよりは、「平和!」の方がずっと良いと思いませんか?
おまけ 日本の友ヶ島や他のモデルは?
以下はおまけです。まさかモデルは日本にも?!上記の他にラピュタに出てきそうな景色で知られるスポットをご紹介します!
日本のラピュタ「友が島」
和歌山県の無人島。地ノ島、虎島、神島、沖ノ島を総称して友ヶ島と呼びますが、ラピュタのモデルのよう!と話題になるのは「沖ノ島」です。もとは旧陸軍の要塞で、この中の「第三砲台跡」がとても良い雰囲気。浮かんでいるラピュタの建造物部分に似ています。レンガ造りのため、一見日本の風景とは思えません。自然に帰りゆく姿は、廃墟好きにもたまらないスポット。
メテオラにも通じる「シーギリヤ」
紅茶の国としても有名なスリランカ、シーギリヤの遺跡もまたインパクト大でラピュタを思い起こさせます。岩の上のメテオラが天空の修道院なら、岩山に建てられたシーギリシャは天空の国。登るのは大変ですが、頂上からは素晴しい景観が広がります。中腹にある壁画もまた美しく、印象的ですよ。ラピュタのモデル候補地としてだけでなく、見どころが多くおすすめの国スリランカです。
崩れゆくラピュタ「ベンメリア」
ベンメリアはカンボジアのアンコールワットの近くにある遺跡。こちらも廃墟好きの聖地で、修復されていないその崩れた様を見ることができます。東南アジアの森の濃いグリーンと崩れた建物はラピュタを連想させ、かなりおすすめ。筆者は訪れた際、それはもう大興奮でした。自由に見学できますが、崩れているため一部危険です。あくまで自己責任で。
壮観の天空都市「マチュピチュ」
言わずと知れたペルーの天空の都市マチュピチュ。人生に1度は行きたいと思っている人も多いと思います。山を背に浮かび上がるような大迫力の古都で、ラピュタのモデルとしても申し分ないです。ワイナピチュからの景色もそれは壮観です。失われたインカ帝国の遺産としても、非常に重要な遺跡。
まとめ ラピュタのモデルはメテオラ説
いかがでしたでしょうか?
新しい視点のメテオラ説ラピュタ解釈を、楽しんで頂けたなら幸いです!
ジブリ作品は、いろいろなテーマや土地が混ざり合ってこその魅力があり、具体的に何がモデルということはないのかもしれません。ただこの記事を通じて、ラピュタは予想外にギリシャ・トルコに関係する点が多いことはお分かり頂けたかなと思います。
メテオラはビジュアルこそ映画のラピュタとは違いますが、人知を超えた景観が広がる様子は感動的。ラピュタのモデルとしても納得できる壮大な建造物群ですので、ぜひ機会があれば訪れてみてくださいね!(ただしメテオラは聖地のためマナーは守りましょう♪)
余談ですが、この記事を書くか迷っていた折に、本当に偶然トルコ人の「バルス(バルシュ)」さんに出会いました。現地では人名でも使われるとのことで、いい名前ですよね。その上、日本人に大人気になる名前です!そんな縁から記事を書こうと決めた次第。
そのうちナウシカもやろうかな!
ジブリファンのための聖地巡礼も旅のきっかけです!新しい時代の旅を検討したい方はこちらも参考にどうぞ♪
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