2018年02月16日
株式会社川島織物セルコン(本社:京都市 社長:山口進)は、本社に併設の織物文化館(京都市左京区)で、“明治維新150年”にちなみ、明治期に制作した綴織壁掛「富士巻狩」の製作過程を紹介する特別展示『川島織物傑作「富士巻狩」に挑む』展 を2018年2月20日から2019年1月31日まで開催します。
綴織壁掛「富士巻狩」は、明治宮殿 西溜之間の壁面を飾る壁掛として製作した縦6.06メートル、横3.03メートルの一対(2枚一組)の織物です。明治宮殿は、その名の通り明治天皇のお住まいとして1888(明治21)年に竣工した建物で、当社も内装に使われた織物を納入していたことから、この壁掛の製作のご用命をいただきました。
綴織壁掛 原画 「富士巻狩(左隻)」今尾景年筆
今回の展示では、日本画家 今尾景年の描いた原画をはじめ、織下絵や試織など、綴織の製作に纏わる様々な資料を展示します。また、宮殿の内装をイメージするために制作した宮殿の起こし絵や、富士裾野の写生時の古写真など、忠実な描写のための資料を通して、製作を指揮した二代川島甚兵衞(当社創業2代目)のモノづくりへのこだわりを紹介します。
綴織壁掛は1898(明治31)年に完成し、明治宮殿の西溜之間に飾られましたが、1945(昭和20)年5月、第二次世界大戦の空襲にあい、明治宮殿と共に消失してしまいました(※)。そのため、これらの資料は明治宮殿の内装を知る上でも、たいへん貴重な資料となっています。
※別の綴織壁掛が掛けられていた時期もある。
<参考資料>
・綴織壁掛 原画 「富士巻狩」 1893年
・綴織壁掛 織下絵「富士巻狩」 1893年
・明治宮殿 起こし絵 1884年
・猪の試織用織下絵と試織(下記写真) 1893年頃
試織用織下絵
試織
※会期中一部作品の展示替えを行います。(展示内容については事前にお問い合わせ下さい)
今回の展示では「猪の頭蓋骨標本」という、織物に纏わる博物館としては、珍しい物を展示します。
実はこれも、二代川島甚兵衞の拘りのモノづくりを語る上で欠かせない一品なのです。
猪の頭蓋骨標本
綴織壁掛「富士巻狩」は、2枚一組の壁掛です。
一対のうちの1枚が織りあがったところで、その1枚を納めたところ、宮内省より「残り一枚の牙は単牙に訂正せよ」との命が下りました。これはお納めした壁掛に描かれている猪の牙が2本あることに、"事実と異なる"との指摘でした。
二代川島甚兵衞は、富士山麓に生息する猪の牙は2本であることを観察・確認してからして製作していたため、事実と異なる物は描けないと、近辺に住む猟師から猪の頭蓋骨を譲り受け、宮内省に持参し、2枚目の壁掛けも2本の牙を描く事を納得いただきました。
このエピソードは、この頭蓋骨標本と共に、1902(明治35)年に二代川島甚兵衞が制作記録として残していた手記から見つかりました。二代川島甚兵衞は妥協しないモノづくりを次代に伝えるため、この様な手記を多く残しています。
1889(明治22)年に二代川島甚兵衞が京都・三条高倉に建てた三階建ての洋館「織物参考館」に始まる国内最古の企業博物館。初代・二代 川島甚兵衞がモノづくりの研究のため世界中から収集した染織品、古書類、製作してきた原画類・試織など、織物に関する貴重な資料を保管しています。
館内では、これらの史資料や当社が手がけてきたプロジェクトにまつわる資料やエピソードを紹介し、織物の魅力や当社のこだわりのモノづくりを紹介しています。
ホームページ:
http://www.kawashimaselkon.co.jp/bunkakan/
アクセス:
●地下鉄「国際会館」駅より
・ 京都バス(50/52系統)「小町寺」下車 徒歩約5分
・ タクシー 約10分
●叡山電車 鞍馬線「市原」駅下車 徒歩約7分
●京都駅より タクシーで約40分