“有事”で注目される巨大空港

離島には不釣り合いな巨大な空港が存在する。長さ3000m、面積は那覇空港の1.3倍。“下地島空港”だ。

航空自衛隊の最南端基地、那覇空港から中国が領有権を主張する尖閣諸島まで約420㎞。戦闘機で30分を要する。下地島空港なら約半分以下の190㎞だ。

台湾有事が取り沙汰される中、この空港が俄然注目されている。パイロット出身の永岩俊道元空将は下地島空港が最重要拠点だと指摘する。

元航空支援集団司令官 永岩俊道 空将
「(台湾有事に下地島空港は)極めて重要。南西諸島にたくさん空港があるが、戦闘機等が運用できるのは極めて限られている。(戦闘機を運用できる)300mの滑走路は下地島だけだ。これは必要不可欠の空港だと思っていました」

しかし“緊急発進”が必要な時でも下地島空港は使えない。実はある文書が“軍事的な使用”を阻んできた。当時の琉球政府が日本政府と交わした、いわゆる『屋良覚書』の中に『民間航空機以外には使用させない』と明記されているのだ。

2015年には宮古島と空港を結ぶ伊良部大橋が完成、現在は民間機が発着し観光客が押し寄せている。しかし、台湾有事が浮上する中で屋良覚書の存在は薄くなりつつある。

奥平一夫元県議は台湾危機に乗じた“屋良覚書”の形骸化に危機感を募らせる。

元沖縄県議会議員 奥平一夫氏
「有事という“煽り言葉”で住民を惑わせるなと思う。有事になると米軍機や自衛隊機も飛んでくる。住民の中からも反対だと言えない、そんな場合じゃないだろうという(雰囲気になる)」

自衛隊誘致を進めてきた自民党の市議会議員は…

宮古市議会 粟国恒広議員
「今の国際情勢を見ると(屋良覚書は)考え直す時期に来ている。3000m級の滑走路は島の財産ですから」

政府が台湾有事を念頭に防衛力強化を進める一方で、宮古島市への移住者は確実に増加している。

奈良県から移住
「移住してきた。奈良県から」
関東から移住
「自然豊かできれいな所だなと思って」

市民にも危機感は殆ど感じられない。

ーー台湾有事というのは聞いたことありますか?

宮古島市民
「ないです。(話題にも)ならない」
「友達の間でも、職場でも(話題にならない)。実際に戦争が起こるという危機感はない」

しかし、既に“台湾有事”が大きく影を落としている場所がある。“鰹御殿”と呼ばれる住宅が並ぶ佐良浜漁港。沖縄県の8割の鰹が水揚げされてきた。しかし現在、中国が領有権を主張する尖閣諸島周辺での漁は中止している。

佐良浜漁協 漢那一浩 前組合長
「いつかウクライナとロシアみたいに、中国が強く出れば何か起こりかねないという思いはある」

6月、東シナ海に初めて現れた中国の最新鋭情報収集機が台湾周辺を飛行した。日米仏3か国合同演習を偵察したものとみられる。

一方、鹿児島県の鹿屋基地ではアメリカ軍の無人偵察機が運用を開始した。偵察範囲は2000㎞、台湾がすっぽり入る。アメリカと中国の対立は日本を巻き込み、既に熾烈な神経戦を展開しているのだ。