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温泉に入ると健康になる? 意外と知られていない「温泉入浴の3つの効果」

高橋一喜温泉ライター/編集者

温泉入浴の3つの効果

古くから温泉地が保養や療養の場として活用されてきたように、温泉には心と体を整える効果がある。

人は、温泉に入ることで何らかの効果を期待している。「体の不調が改善する」「肌がキレイになる」などが典型的だろう。

温泉の効果については、なんとなく「ああ、癒やされた~」という気分になることはあるが、実際のところはどうなのだろう。

温泉のもたらす効果は、おもに次の3つに分けられる。

①薬理効果                             

②物理効果                              

③転地効果

温泉の「効能」とは?

まずは、温泉の①薬理効果(化学的効果)。温泉入浴そのものから得られる効果で、「効能」と呼ばれるものだ。

温泉には地上に噴出するまでの過程で溶け込んだ化学成分が含まれている。これらを皮膚から吸収、あるいは飲泉することによって体によい効果を得られる。

温泉の成分に応じて「塩化物泉」「硫黄泉」など泉質名がつくが、この泉質ごとに「適応症」という効能が認められている。たとえば「塩化物泉」なら切り傷、やけど、「硫黄泉」であればアトピー性皮膚炎、慢性湿疹などである。

ちなみに、肌に付着した温泉成分の効果は約3時間持続するといわれる。したがって、入浴後にシャワーなどで体を洗い流すと、温泉の薬理効果を失うことになる(成分が濃い温泉は洗い流したほうがよいケースもある)。

温泉はマッサージ効果あり?

②「物理効果」は、おもに3つに分けられる。

1つめは、「温熱効果」。温泉で体が温まることによって血管が広がる。それにより新陳代謝が高まり、体内の不要物が排泄されやすくなる。体温が上がることでさまざまな病気から身を守る免疫力が高まることも知られている。

2つめは、「水圧効果」。水圧によって体表面全体に圧力がかかり、内臓が刺激される。特に足には全血液量の約3分の1が集まっており、「第二の心臓」といわれる。

重力のかかる陸上だと足の血液は心臓まで上がってきにくいが、水中だと水圧で血管が細くなり、血液が心臓に向かって押し上げられ、血液の循環がよくなる。いわば、温泉からマッサージを受けている状態になるのだ。

3つめは、「浮力効果」。首まで温泉につかると、体重は約10分の1になる。体が軽くなった感覚により筋肉が緩み、脳がリラックスした状態になるといわれる。

非日常がもたらす効果

最後に③転地効果。

忙しない日常生活から離れ、自然豊かな温泉地に身を置くことによって五感が刺激を受ける。すると、脳内のホルモンを調節する「内分泌系」や呼吸、消化といった生命維持活動をつかさどる「自律神経系」の中枢のスイッチが入るとされている。

非日常の空間に身を置くことはストレス解消にもつながる。立教大学現代心理学部教授で、「メンタルヘルスツーリズム」を研究している小口孝司さんは、「旅行によってストレスホルモンが減少する」と述べている 。

「通常の週末を過ごす方と1泊2日の旅行に参加の方の2群を作りました。旅行群は、旅館に泊まってもらって、さまざまな活動を行っていただきました。旅行に行く前、最中、行った後に調査したところ、旅行に行った群は旅行に行かなかった群よりも、コルチゾールというストレスホルモンが低くなっていたのです」(『星野リゾート公式サイト:星野佳路代表との対談』より)

つまり、物理的にも心理的にもストレスの原因と距離を置く環境自体がストレス解消になり、ひいては病気や精神疲労にも効果を発揮するというわけだ。

じつは、この転地効果こそ、われわれが最もその効果を実感しやすい。山や森林の清涼な空気を吸ったり、大海原を目の前にしたりすると、清々しい気持ちになって、生命エネルギーが回復するような気分になる。

非日常的な空間で「ああ、気持ちいいなあ~。生き返る~」と感想がもれる。これが、まさに転地効果である。

大自然に囲まれた温泉地や情緒ある温泉街に足を運ぶ。それ自体に意味があるのだ。

涼しくなり、温泉が気持ちいい季節になりつつある今こそ、温泉旅行に出かけてみてはいかがだろうか。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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