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政府が検討している給付金3万円などの対象となる低所得者世帯とは?その内訳や所得分布は?

島澤諭関東学院大学経済学部教授
写真はイメージです(写真:イメージマート)

報道によれば、岸田文雄首相は、月内にまとめる追加の物価高騰対策について、住民税非課税対象などの低所得世帯に一律3万円、子育て中の低所得世帯には子ども1人につきさらに5万円の給付を検討しているとのことです。

岸田首相、低所得世帯に現金3万円給付検討 子育て世帯には5万円(2023年3月15日 毎日新聞)

これまでも、低所得者世帯に対して、給付金が支給されてきました。ここで改めて住民税非課税世帯について見てみたいと思います。

データはすべて厚生労働省「令和3年国民生活基礎調査」によっています。

まず、日本の全世帯5142万世帯に対し、住民税課税世帯が3924万世帯ありますので、差し引き住民税非課税世帯は1218万世帯、割合は23.7%です

図1 住民税課税世帯数と住民税非課税世帯数(単位:万世帯)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図1 住民税課税世帯数と住民税非課税世帯数(単位:万世帯)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

その1218万世帯のうち、高齢者世帯は767万世帯、非高齢者世帯は451万世帯と、高齢者世帯が全体の63%を占めています。

図2 住民税非課税世帯のうち高齢者世帯と非高齢者世帯数(単位:万世帯)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図2 住民税非課税世帯のうち高齢者世帯と非高齢者世帯数(単位:万世帯)(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

その所得分布を見てみると、住民税非課税となるおおよその所得水準200万円未満の層が736万世帯、60.4%を占めていますが、日本の平均世帯所得564.3万円を上回る所得を得ている世帯(ここでは600万円以上として計算)も40万世帯、3.3%あることが分かります。

図3 住民税非課税世帯の所得分布(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図3 住民税非課税世帯の所得分布(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

さらに、子ども一人当たりにつき5万円の給付が付加される住民税非課税でかつ子どものいる世帯は85万世帯、住民税非課税世帯全体1218万世帯に対して7%となっています。

その所得分布を見てみると、住民税非課税となるおおよその所得水準200万円未満の層が28万世帯、32.9%を占めていますが、日本の平均世帯所得564.3万円を上回る所得を得ている世帯(ここでは600万円以上として計算)も15万世帯、17.6%あることが分かります。

図4 住民税非課税世帯(子どものいる世帯)の所得分布(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成
図4 住民税非課税世帯(子どものいる世帯)の所得分布(出所)厚生労働省「国民生活基礎調査」により筆者作成

もちろん、住民税が非課税となるのは、家族構成や住んでいる自治体、所得の源泉によって異なるので一概には言えませんが、住民税非課税世帯だからといって、一律に給付するのではなく、厳格な所得制限を設け、支援対象を本当の意味での低所得世帯に限定し、可能な限り手厚くするべきだと考えますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?

関東学院大学経済学部教授

富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学准教授等を経て現在に至る。日本の経済・財政、世代間格差、シルバー・デモクラシー、人口動態に関する分析が専門。新聞・テレビ・雑誌・ネットなど各種メディアへの取材協力多数。Pokémon WCS2010 Akita Champion。著書に『教養としての財政問題』(ウェッジ)、『若者は、日本を脱出するしかないのか?』(ビジネス教育出版社)、『年金「最終警告」』(講談社現代新書)、『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社)、『孫は祖父より1億円損をする』(朝日新聞出版社)。記事の内容等は全て個人の見解です。

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