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『魔法のリノベ』で目が怖い部長役。原田泰造が自分の出演作を3回観る理由と『笑う犬』以来の指針とは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
カンテレ提供

波瑠が住宅リノベーションの営業に敏腕をふるう役で主演するドラマ『魔法のリノベ』。彼女の元上司を原田泰造が演じている。普段の温厚さは影を潜め、腹の内が読めず目の奥が笑ってないのが、ゾッとするほど怖いと話題だ。ネプチューンでお笑いの一線に立ち続ける一方、俳優のキャリアも重ね、演技力を高く評価されている原田のスタンスを聞いた。

ニヤついて真顔になったり細かくやってます

――『魔法のリノベ』で原田さんが演じる有川拓は、1話から部下に「負けるんじゃないぞ」と静かに圧をかけてゾッとさせたり、「怖い」「夢に出そう」と話題になっています。

原田 曲がったことが大好きな役で、すごく楽しいです(笑)。こんな感じかな、あんな感じかな……と練習していって、現場で演出家さんとも話し合って、形を変えていってます。

――笑顔でも目が笑ってなかったり。

原田 台本では「ニヤリ」と書いてあることが多いんですよね。ここまでニヤついて、ここから真顔で、またニヤつく……とか、結構細かくやっています。

――番組公式ツイッターに「普段の泰造さんは超絶いい人なだけに、ギャップに毎回ゾクっとします」とありました。この現場に入ったら、有川モードになる感じですか?

原田 ないない(笑)。撮るまでは全然普通にしていて「よーい、スタート」で入ります。

――大手リフォーム会社の部長という部分で、下準備したこともありますか?

原田 スタッフさんにもらった資料を読みました。どういう会社かとか、リフォームとリノベーションがどう違うとか書いてあって。現場にも本物のリノベーション会社の人がいて、わからないことがあると教えてもらっています。

リノベーションをするなら家にサウナ部屋を(笑)

――住宅リノベーションで興味を惹かれたこともありました?

原田 全然馴染みはなかったんですけど、面白いな、やってみたいなと思ったりもしました。本当にやるなら日数もかかるし、人も入ってくるし、大変なこと。腹を括らないとできない感じがしますね。

――難しいことを抜きにしたら、どんなリノベをしたいですか?

原田 サウナ部屋を作りたいなと(笑)。

――自宅でサ道ができるように(笑)?

原田 そう。大々的に(笑)。石を積んで密閉して……とかいろいろ考えて、屋上にあったらいいなと思いました。出来たらととのうはずですけど、奥さんに止められちゃうから、作れないですね(笑)。

――映画『ミッドナイト・バス』に長距離バスの運転手役で主演した際は、教習所に通って大型二種免許を取られたとか。そこまで行かなくても、役作りは毎回念入りにするんですか?

原田 原作を読んだり、役のことを考えたりします。『ミッドナイト・バス』のときは、監督に「免許を取って」と言われたんですよね。今回も何か資格を取るように言われたら、頑張るつもりでした。その代わりに資料を読んでいるうちに、リノベーションはお客さんの幸せを形にする素晴らしいことだとわかりました。

演じ方を考えるのが楽しいのはコントの延長かも

――原田さんは「芸人と俳優の仕事を分けていない。オチがあるか、ないかだけ」と発言されていたことがありました。俳優を始めた頃から、そう考えていたんですか?

原田 やっぱり最初は畑が違う感じがして、結構悩んでいたと思います。オチがないのが恥ずかしかったり。ネプチューンでは誰かに何かを教わったことはなくて、自分たちでやってきたので、台本があって台詞を読むことに戸惑っていたかもしれません。やっているうちに、だんだん慣れていったのかな。 

――それで、今はお笑いとの境目がなくなって?

原田 そうですね。ネプチューンで潤ちゃん(名倉潤)、ケン(堀内健)といるときは仕事。俳優は「部活に行ってくる」という感じ。部活と言ったら違うかもしれないけど、別の部署というか。

――演技に対する考え方や準備の仕方が、変わってきたりはしました?

原田 役のことを考える時間は増えたかな。役作りって何なのか、よくわかっていませんけど、役の背景を想像したり、どう演じようか考えるのはすごく楽しいです。それは最初から、あったかもしれません。

――もともと俳優もやりたいことではあったんですね?

原田 やりたかったです。エキストラの会社に入っていたこともありますから。初めてやらせてもらったのが『ママに宿題』という昼ドラで、『ボキャブラ(天国)』の頃だったから、意外と早かったんですよね。

――今思えば、原田さんの演技の才能は早くから注目されていたのかと。

原田 いやいや。でも、僕らはコントで3人で演じていたから、そのまま延長した楽しさがあったかもしれません。

子どもの頃にテレビでお笑いもドラマもいっぱい観て

――何か作品を観て、演技に興味を持ったことはなかったですか?

原田 僕が子どもの頃のテレビは『(オレたち)ひょうきん族』もあれば、ドリフ(ターズ)もいる。『池中玄太80キロ』もあれば『(3年B組)金八先生』もある。テレビばっかり観ていて、自分もこの世界に入りたいとずっと思っていました。

――まさにお笑いもドラマも込みで観ていたんですね。

原田 ドラマは他にも、『西遊記』とかいっぱい観ていました。映画の世界でもジャッキー・チェンやブルース・リーがいたり、『ロッキー』があったり。子どもの頃、ワクワクして刺激を受けたものは、いっぱいありました。

――原田さんはよくジム・キャリーに例えられます。

原田 似てると言われます。ジム・キャリーを観たのは大人になってからで、あんなにすごい演技はできませんけど、影響を受けた1人ではあるかな。ジャッキー・チェンも大好きだったし、西田敏行さんや武田鉄矢さんにも憧れていて。お笑いでもウンナン(ウッチャンナンチャン)さん、ダウンタウンさん、とんねるずさん……とすごい先輩たちがいっぱいいて、すべてから刺激をもらいました。

難しいウツの役も演じ甲斐がありました

――今までで特に悩んだ役はありますか?

原田 全部面白かったですね。時代劇で刀を持つのも楽しかったし。

――大河ドラマで大久保利道、近藤勇と歴史上の人物も演じられました。

原田 歴史の本も読んだし、お墓参りもしました。ヒーローを演じている気分でした。

――『ツレがうつになりまして。』のうつ病の役も、すごくリアルで印象に残っています。

原田 あのときは病気のことも調べましたけど、症状は様々だったので。ツレさんがどういう人なのかを考えて、近づこうと努力して気持ちもわかろうとしたら、ああなったんだと思います。現場にご本人(原作者の夫)が来てくれたんです。もう病気は治っていましたけど、お会いして観察して、何が辛かったのかも考えました。ああいう役は難しいですけど、演じ甲斐もありました。

ワチャワチャしていたことを真剣にやろうと

――たとえば何かの現場で監督に言われたりして、原田さんの演技の軸になったことはありませんか?

原田 いつも自分の中に指針としてあるのは、『笑う犬』でコントを撮っていたときのことですね。あそこで鍛えられたと思います。ずっと3人で活動してきた僕たちが、ウンナンさんや同世代の芸人と一緒にやらせてもらって。1日に何本も、台詞をパンと入れて演じて、また次のコント……と延々と繰り返していました。その前に台本をみんなで見て、「これはやれる。これはやれない」という会議をしてから、ギュッと集中するんです。僕の中で演じる面白さは、青春時代にそこで見つけた気がします。大変だったけど、真剣にやるほど楽しくて。

――たくさん場数を踏みつつ。

原田 内村(光良)さんが座長で、驚いたんですよね。台本を「こんなふうに演じるの?」とか。すごく疲れていて車イスでやってきて、全力でコントをやって帰っていくのを目の前で見たときは、「半端でない世界だな」と実感しました。ちょっと感動して、それまでネプチューンでワチャワチャやってきたことを、ちゃんとしないといけないと思いましたね。

反省点も繰り返し観ると許せるので(笑)

――25年以上続けてこられた“俳優・原田泰造”の強みは、ご自分ではどんなことだと思われますか?

原田 何にもないですよ(笑)。俳優をやっている感覚が、今もそんなにないかも。出させてもらっているだけ。ただ、僕は自分が出たドラマを観るのが好きなんですね。楽しくて何回も観ていて。家で自分で観るために、ドラマをやっているところがあります(笑)。

――これだけキャリアを積まれて、今でもそんなに出演作を観るんですか?

原田 観る観る(笑)。バラエティでもそう。1回「面白いな」って観て、もう1回巻き戻して、3回目は自分のところだけ観て(笑)。そういうのが楽しくて。

――役者さんの中には、「自分の演技を観ると反省点ばかり目が行ってしまう」という方も結構いるようです。

原田 そうなんですよね。1回目は反省点ばかり見えて、「今のは見間違えだったかもしれない」と思って観直して(笑)、「やっぱりダメだったか……」と思いながら3回目を観ると、許せたりします(笑)。

――ネット投票で「演技がうまいお笑い芸人」の1位になっていました。

原田 それはすごく嬉しいです。ランキングが下がるとチクショーと思ったりはします(笑)。でも、特に目標とかはなくて、いろいろな役をもらえたらいいなというだけです。

ドラマの中盤で何を考えているのかわかります

――先ほど出た部活的な感覚は、50代になられてからもありますか?

原田 部活といっても軽くやっているわけではないですけど(笑)、そういう楽しさは全然変わらないですね。

――最後に話が戻りますが、『魔法のリノベ』の序盤で特に印象的だったことはありますか?

原田 有川は最初はそんなに出てこなくて、何を考えているのかまったくわからない。ただ「この人、イヤだな」と思われる役なんですよね。グローバルステラDホームという会社自体、波瑠さんたちのいるまるふく工務店と比べるとダークさがあって。チームワークも良くないし、欲まみれな感じですけど、そういう部分がドラマのスパイスになっていたらいいなと。

――今後、有川のドス黒さが露わになったりもするのでしょうか?

原田 中盤くらいになって、なぜこういう人間なのか、何をやりたいのか、ちょっとずつ出てきます。そうなると、まるふくとの関わりも出てくるから、後半もまた面白いと思います。

Profile

原田泰造(はらだ・たいぞう)

1970年3月24日生まれ、東京都出身。

1994年に名倉潤、堀内健とネプチューンを結成し、『タモリのSuperボキャブラ天国』などで注目される。1995年にドラマ『ママに宿題』で俳優デビュー。2000年に『編集王』で初主演。主な出演作はドラマ『奥さまは魔女』、『篤姫』、『龍馬伝』、『ごちそうさん』、『サ道』シリーズ、映画『ジャンプ』、『ボクの妻と結婚してください。』、『ミッドナイト・バス』など。ドラマ『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)に出演中。ネプチューンとして『しゃべくり007』(日本テレビ系)、『ネプリーグ』(フジテレビ系)、『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)、『ジョブチューン アノ職業のヒミツぶっちゃけます!』(TBS系)にレギュラー出演中。

『魔法のリノベ』

カンテレ・フジテレビ系/月曜22:00~

公式HP

*写真はカンテレ提供

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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