火星には生きた微生物が残っていて、地下で休眠中である可能性が浮上!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「火星には微生物がいて、地下で休眠中かもしれない」というテーマで動画をお送りしていきます。
●かつて温暖だった火星
現在の火星は非常に乾燥しており、平均で-50度を下回る極寒の世界です。
さらに地表を守る大気もほとんどなく、磁場も存在しないことから、宇宙から降り注ぐ有害な高エネルギー宇宙線(放射線)に晒されています。
このような過酷な環境が広がる火星の地表では、到底生命は存在できないでしょう。
実際にこれまで人類が行ってきた様々な火星表面の探査の中で、直接的に生命が発見されたことは一度もありません。
現在の火星は乾燥した無機質な世界ですが、これまでの探査で川が流れたような地形や、水がないと形成されない物質が発見されたりと、かつての火星表面に液体の水が豊富に存在していた証拠が数多く発見されています。
現在の火星にも、極地方には大量の水の氷が存在し、さらに地下には液体の水が残っている可能性も示されています。
かつての火星の温暖な環境はかなり長い期間継続していたようで、その間に生命が誕生していても不思議ではありません。
大昔の火星を生きていた生命の痕跡を見つけようと、現在も盛んに研究が行われています。
●圧倒的な放射線耐性を持つ細菌
先述の通り現在の火星では、乾燥した極寒の世界が広がり、さらに強力な放射線である宇宙線が降り注いでいます。
ですがこのような過酷な環境でも生きられるほど、圧倒的な放射線耐性を持つ微生物が存在します。
「デイノコッカス・ラジオデュランス」という細菌は、極めて高い放射線耐性を持つことで知られています。
名前のラジオデュランスは「放射線に耐える」という意味があります。
放射線が物体に与えるエネルギーの大きさを「グレイ(Gy)」という単位で表します。
人は10Gyで、あの最強生物クマムシでも数千Gyでほとんど死に至るのに対し、デイノコッカス・ラジオデュランスは5000Gyでは死滅せず、15000Gyでも3分の1以上が生き残ります。
25000Gyに相当する放射線を浴びてやっとほとんどが死に至るそうです。
これは火星表面から少しだけ潜った地点における放射線の強度から計算すると、そこで実に120万年間も生き延びることができる計算です。
●火星の地下で微生物が眠っている!?
かつての火星に微生物が存在し、現在もその痕跡が残っている期待はありますが、温暖な環境だったのは遥か昔のことであり、現在に至るまでの何億年、何十億年もの間過酷な環境を生き延びているとは考えにくいです。
先述のデイノコッカス・ラジオデュランスであっても、火星環境で何億年間も耐え抜く放射線耐性は持っていないと考えられていました。
ですがそんな常識を覆すような驚くべき新発見が、2022年10月の末に発表されています。
○想像をさらに超えた放射線耐性
以前、デイノコッカス・ラジオデュランスが25000Gyに相当する放射線に耐えうると判明した実験では、彼らは液体の水が存在するような、乾燥しておらず、低温でもない環境下で放射線を照射されていました。
一方今回発表したノースウェスタン大学の研究チームは、デイノコッカス・ラジオデュランスを火星表面と同様に「乾燥・低温な環境下で凍らせた上で」強力な放射線を照射する実験を行いました。
どの環境が結果に影響を与えているのかを理解できるよう、デイノコッカス・ラジオデュランスを乾燥だけさせた場合、凍らせただけの場合でも同様の照射実験を行っています。
なお、このグラフの横軸が放射線の強度、縦軸が生存割合となっています。
実験の結果、乾燥・低温環境下のいずれの場合でも、乾燥・低温環境下にない場合よりも強力な放射線に耐えられることが判明しました。
特に乾燥かつ低温の環境下においては、デイノコッカス・ラジオデュランスは14万Gyという、従来知られていた25000Gyの5倍以上の強度の放射線まで耐えることができています。
これだけの放射線耐性がある場合、火星の地表から深さ10mの地点では実に2億8000万年もの間、彼らは放射線の中で生き延びることができる計算になります。
彼らがこれほど過酷な環境で生き延びられる理由は2つ挙げられています。
1つ目は放射線に破壊された体内の物質の働きを抑制する「抗酸化物質」が体内に豊富に含まれていること。
2つ目はDNAのコピーを大量に持っており、放射線に破壊されたDNAを直ちに修復できるためとのことです。
○圧倒的放射線耐性から導かれる結論
今回得られた結果から、温暖だったかつての火星の地下にもデイノコッカス・ラジオデュランスのように優れた放射線耐性を持つ微生物が存在してた場合、それらがなんと現存している可能性が示されています。
今回の結論である2億8000万年という生存期間は極めて長いですが、それでも火星が温暖な気候だったのは何十億年も前のことなので、彼らのような微生物でも現在まで生き延びることはできなそうです。
ただし、火星表面に隕石が衝突するなどした場合、その周囲では高温で氷が解け、一時的に液体の水が復活することもあります。
そのようにして休眠、復活を繰り返し、微生物が現存している可能性もあるようです。
また、探査機に付着した地球由来の生命が火星の放射線環境に耐え、環境を汚染する可能性、そして火星のサンプルを地球に持ち帰った場合、それが逆に地球環境を汚染する可能性も示されています。
微生物の耐久能力は、人類の想像を超えています。
彼らが惑星間を渡って環境汚染を起こさないよう、探査に当たっては細心の注意を払う必要がありそうです。