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女子プロ野球 2019シーズン開幕戦 第一試合リポート

中川路里香フリーランスライター

女子プロ野球2019シーズンが、3月23日にわかさ生活スタジアム京都で開幕し、ヴィクトリアシリーズ 春季リーグがスタートしました。今シーズンの週末開催日は、ダブルヘッダーが多く予定されおり、23日は土曜日だったため、開幕初日から、さっそく、京都フローラ対埼玉アストライアと京都フローラ対愛知ディオーネの二試合が行われました。

このコラムでは、第一試合となった、京都フローラ対埼玉アストライアの試合の模様をリポートします。

開幕セレモニーを経て、プレーボール!

試合前は、開幕セレモニーが行われました。

全選手を代表してあいさつをする、京都F・小西美加投手
全選手を代表してあいさつをする、京都F・小西美加投手

「10年前、女子プロ野球リーグ設立当初は、『女の子だから野球はするな』などと言われたものですが、今は『女の子だから野球をしよう』と言われるまでになりました。今後は、世界から注目されるリーグを目指していきます」。グランドに整列した全球団の選手たちを背に、女子プロ初年度からプレーを続ける、女子球界のレジェンド、京都フローラ 小西美加投手による力強い宣言ともとれる、堂々たる挨拶が印象的なセレモニーでした。

京都フローラvs埼玉アストライア

先制許すも京都フローラが逆転勝利

埼玉 100 000 3 4

京都 014 000 X 5

(先攻)埼玉アストライア

1 中 中田

2 遊 只埜

3 左 加藤

4 捕 今井

5 一、三 田口紗

6 D 泉希

7 右 みなみ

8 二 山崎、田口真

9 三、一 奥村

投 谷山―海老

(後攻)京都フローラ尾

1 中 三浦

2 遊 厚ケ瀬

3 捕 村松

4 一 岩谷

5 右 中村

6 二 三原

7 D 中嶋

  代打 シェー

8 左 白石

  代打、左 田中

9 三 佐々木

  代打、三 戎島

投 小西

開幕投手を務めた京都F・小西美加投手
開幕投手を務めた京都F・小西美加投手

 

 京都フローラの開幕投手、小西美加投手は、立ち上がり制球力に苦しみ、初回に1点を先制されましたが、2回裏に岩谷美里選手のレフト線に今シーズン第1号のホームランが飛び出し、同点に追いつきます。

同点ホームランを放ち、喜びで沸く選手たちに出迎えられる、京都F・岩谷選手
同点ホームランを放ち、喜びで沸く選手たちに出迎えられる、京都F・岩谷選手

3回裏には、三浦伊織選手がプロ入り10年目にして初のスタンドインのホームラン(1号)を放つなど、一挙4得点で勝ち越しに成功。最終回には1点差まで詰め寄られながらも、小西投手が完投し、5対4で京都フローラが開幕戦を白星で飾りました。

「投打のバランスがいい」。川口知哉監督は今季に自信

試合前、京都・川口知哉監督は、順調な仕上がりだと話していました。「うちは打ちますよ。だけど、守備も心配していないし投手陣も揃っている。要するに、どこをとっても問題ないということですね(笑)」と、今季への自信を覗かせていました。

その理由のひとつが、5名のベテラン選手の存在です。今年の京都フローラには、プロ10年目となる第一期生選手5名が所属しています。エースの小西美加投手、走攻守揃っているショートの厚ケ瀬美姫選手、頼れる四番、岩谷美里選手(ファースト)、器用さと足があるセンターの三浦伊織選手、オールラウンドプレーヤーの中村茜選手(ライト)です。ファンは、彼女たちをレジェンドと呼んでいます。

一方で、その他の選手はプロ1、2年目が目立ち、中堅選手を見ません。レジェンドたちが超若手をうまく引っ張ってくれるだろう、という信頼があるということなのでしょう。

チーム内容がそのような図式であるだけに、川口監督は「打線の7、8、9番がカギ。上位打線へつなげてくれるとかなり勝算が高くなる」とも語っていました。

レジェンド達が魅せた!

この試合を勝利に導いたのは、レジェンドたちでした。

予想とは裏腹に、初回に1点を許した小西投手でしたが、2回裏に岩谷選手が同点ホームランを放ち、振り出しに戻しました。思い切り振り抜いた打球は、レフト際ポールギリギリに入り、一度はファウル判定となりましたが、川口監督によるチャレンジ申告でホームランと認定、それまでの選手の硬さが一辺に吹き飛んだ一打となりました。

3回裏の4得点の場面では、相手エラーでランナーを得たチャンスで、三浦選手がライト方向へ見事な2ランホームランを放ち、それに勢いづきさらに2点を加え、大きなリードをつくりました。

2ランホームランを放った、京都F・三浦伊織選手
2ランホームランを放った、京都F・三浦伊織選手

リードを守り抜いた、小西投手。5対1で迎えた6回表に、疲れが出てきたのか、死球、フォアボールもあって一点差まで追いつかれ、なおも最終回には先頭打者へのフォアボール、連打などで一死一二塁のピンチを招きながらも、最後は、ファーストフライとレフトフライに打ち取り、127球を投げ抜き、見事、チームを勝利に導きました。

最後まで小西投手と決めていた

 開幕戦勝利にホッとした表情の川口監督。「予想通り、開幕独特の雰囲気に硬さも出て、苦しい試合展開となったが、しっかり打ってリードが作れたので良かった。小西はボール先行だったが、よく投げきってくれました」と、各選手たちをねぎらいました。

 決して調子は良くなかった小西投手。しかし「5回までもってくれた時、たとえ結果逆転されても、最後まで小西で行こうと決ました」と話します。「信頼している投手が打たれて負けたのなら納得できますから。もちろん、リードを守ってくれると信じていましたけれどね(笑)」

試合後の選手たちの表情

試合後、ヒロインインタビューに答える、京都F・岩谷選手(左)、三浦選手
試合後、ヒロインインタビューに答える、京都F・岩谷選手(左)、三浦選手

 小西投手は、自身の投球を振り返って、「ダメダメですね。でも、硬さもなかったし(終盤打たれたのは)疲れからではないです。原因はわかっています」と話し、その中でも最終回でのピンチを良く切り抜けられたことについては「意地ですよ、意地!(笑)」と話しました。

 ランニングホームラン記録はあるものの、プロ入り初のスタンドインのホームランを打った三浦選手は、「手応えというよりも、軽い感触だったのによくあそこまで伸びたな、という感覚です。入るときって、そんなものですかね」と少し興奮気味に話していました。「1本出たからって調子に乗りませんよ(笑) 毎打席センター返しを狙うだけです」と、浮足立たないところは、さすがはレジェンドです。

 スコアだけを見ると5対4と一点差ゲームでしたが、京都フローラのベテラン選手たちが存在感を見せつけた、ある意味京都フローラ快勝といっていい試合でした。

写真:著者撮影

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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