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裸のフィギュア役の衝撃から10年を経た佐々木心音。30代、人生の岐路で出逢ったヒロイン役で新境地へ

水上賢治映画ライター
「クオリア」で主演を務めた佐々木心音  筆者撮影

 石井隆、瀬々敬久ら、いわゆる鬼才と呼ばれる監督たちのミューズとなってヒロインを務めてきた、佐々木心音。

 近年では「娼年」や「愚か者のブルース」など、バイプレイヤーとしても確かな存在感を放つ彼女だが、今秋公開となる2本の主演映画「道で拾った女」と「クオリア」でみせる姿は、「演技者として新たに覚醒して、次なる領域に入ったのではないか」と思わせる。

 それほど何かを予見させる女優・佐々木心音がそこにいる。

 鮮烈な印象を残した2013年の「フィギュアなあなた」のドール役から本格的に女優のキャリアをスタートさせて約10年。新たな飛躍を予感させる彼女に「道で拾った女」と「クオリア」の両主演作について訊くインタビュー。

「道で拾った女」に続き「クオリア」ついて佐々木に訊く。全七回。

「クオリア」で主演を務めた佐々木心音  筆者撮影
「クオリア」で主演を務めた佐々木心音  筆者撮影

30代に入り、ひとつの岐路に立つ。

自身に問う。「自分が一番したいことはなんなのか」と。

 はじめに、養鶏場を営む家族と彼らにかかわる人々のいびつな人間関係をシニカルな視点で描いた本作「クオリア」は、長年俳優として活躍してきた牛丸亮の初の劇場長編映画。2021年、「劇団うつろろ」が上演した舞台の映画化になる。

 佐々木は、出演の経緯をこう振り返る。

「まず、『クオリア』のお話しをいただいた時は、30代を迎えて、わたしがひとつ岐路に立った時期でした。

 具体的に言うと、30代に入って、自分自身と向き合って考えたんです。『自分が一番したいことはなんなのか』と。

 で、やはり『お芝居をもっともっと極めたい』と思ったんです。

 今まで以上にお芝居に打ち込んで、演技ということと改めて真剣に向き合って突き詰めたい。これまでの自身を一つリセットして、第二章ではないですけど、役者として新たなスタートを切りたいと思いました。

 そういう思いのもと、心機一転をはかって個人事務所を構えて活動し始めることにしました。

 個人事務所ですから当然、自ら動かなければならない。ということで、役者仲間の交流の場だったり、映画関連の方が集まる場であったり、そういうところにちょこちょこ顔を出していたんです。

 そういう場に出ていたとき、牛丸さんと一緒になることがあって、今回のお話しをいただきました」

牛丸監督との出会い

 牛丸監督とはそれ以前に役者として出会っていたという。

「ほかの作品で何度かご一緒したことがあったので知らない仲ではありませんでした。

 ただ、牛丸さんが、越智良知さんの作・演出の舞台の映画化の許諾を得て、自ら監督して映画を作ろうと動いていることは、まったく知りませんでした。

 役者仲間のイメージがありましたから、久々にお会いして、映画を作ろうとしていることを知ったときは驚きました。でも、牛丸さんは相当な数の(映画)を観てよく知っている映画大好きな方なので、そうなるのが自然だよなあとも思いましたね」

「クオリア」より
「クオリア」より

わたしもこの輪の中に入りたいと思いました

 こういった場で何度か会う中で、あるとき、田中優子役をやってみないか打診されたという。

 牛丸監督によると田中優子役以外の役はあらかた決まっていた。ただ、田中優子だけがなかなか見つけられないでいた。でも、田中優子こそがキーパーソンで彼女が決まらないと映画化には動き出せない。そこで白羽の矢を立てたのが佐々木だったという。

「そういう場で何度かお会いして、あるとき、牛丸さんからご連絡をいただきました。『田中優子の役、佐々木さんにいいと思うんだけど、一度脚本を読んでもらえませんか?』と。

 で、読んだんですけど、優子以外のの役は誰がやる予定ということも聞いていて。

 キャストも込みで脚本と連動させて読むと、ちょっと興奮しちゃうというか(苦笑)。

 キャストもほぼ知っている方たちだったので、この人とこの場面を演じたら、どういうことが起きるんだろうとか、ここでこういうボールを投げたとしたら、どんなボールを返してくるのだろうとか、いろいろと想像をめぐらすことができてお芝居するのがワクワクしてくる。

 この時点ですぐに『やります』と返信したぐらい。

 キャストのみなさんが役にはまっていて、わたしもこの輪の中に入りたいと思いました」

最初は、主演としても座長としても現場を背負えるか不安に。

最後は「喜んでこの作品と人生を共にしよう」と思いました

 ただ、実は「主演」ということにちょっと躊躇ったところがあったという。

「ほんとうに恵まれていると思うんですけど、わたしは20代前半でけっこう主演を務めさせていただきました。その経験が役者として大きな財産になっていることは確かです。

 ただ一方で、役者としてキャリアを重ねる中で、3番手、4番手ぐらいだったり、ほんの一瞬の出演の役だったりというところにおもしろみを見出したところがあった。

 いわゆる脇役と呼ばれる役をどうすれば輝かせられるのか、どうすれば作品を下支えできる役割を担う事ができるのか、ものすごく考えるようになって難しさを含めてすごくやりがいを感じていたんです。脇役をきちんと任せられるような役者になれるよう努力しているところがあった。

 だからこそ、主演を務めるのは躊躇ったといいますか。

 主演は、自分が望んでもなかなかできないことは重々承知している。そう簡単にできるものではないこともよく知っている。

 年齢が上がるにつれて、そういうチャンスがそうそう巡ってくることではないこともわかっている。

 ただ、しばらく脇での活動が多かったのもあり、主演としても座長としても現場を背負ってきちんとした結果を出せるのだろうか。

 そういった気持ちが入り混じって、ちょっと主演を演じることに簡単に踏み出せない自分がいた。

 でも、今回のお話しは逃したくない。

 なので、一瞬、『主演か』と考えたんですけど、俳優としてちょうど十年目になる年。このタイミングでこのようなチャレンジができるというのは、わたしにとってとても有意義なことは間違いないので、喜んでこの作品と人生を共にしようと、受けさせていただきました」

(※第二回に続く)

「クオリア」メインビジュアル
「クオリア」メインビジュアル

「クオリア」

監督:牛丸 亮

原作:越智良知 

出演:佐々木心音、石川瑠華、木口健太、久田松真耶、藤主悦ほか

公式サイト https://eiga-qualia.studio.site/

新宿K`s シネマにて12月8日(金)まで上映、以後全国順次公開予定

筆者撮影以外の写真はすべて(C)2023映画「クオリア」制作委員会

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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