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ワインの生産も消費もほぼないジンバブエからティスティング世界一決定戦へ!その挑戦を追う

水上賢治映画ライター
「チーム・ジンバブエのソムリエたち」より

 ワインの生産はもとより消費もほとんどないジンバブエ共和国出身の4人のソムリエが「世界ブラインドワインテイスティング選手権」に初参戦。23カ国の一流ソムリエたちと相対する!

一瞬、フィクション?と思いきや実話という、このチャレンジを密着取材しているのがドキュメンタリー映画「チーム・ジンバブエのソムリエたち」だ。

 手掛けたのは「世界一美しいボルドーの秘密」が世界的な評価を受けたオーストラリアのフィルムメーカー、ワーウィック・ロスとロバート・コー。

 再びユニークなワインの旅へと誘ってくれる二人に話を訊く。(全四回)

ワインは理解することでまるで旅をしているような気分になれる

 先で触れたように二人がワインに焦点を当てるのは前作「世界一美しいボルドーの秘密」に続いてとなる。

 そもそもの話、二人はいつぐらいからワインに興味を持つようになったのだろうか?

コー「僕は父から大きな影響を受けています。

 父がワインをこよなく愛している人で、それこそいろいろなワインを家にコレクションしていました。

 そして、何を隠そう僕にワインの味を教えてくれたのも父です。夕食時に僕にひと口だけワインを飲ませてくれたのです。

 それだけではなく、ワインにまつわる話もよくしてくれました。たとえばこのワインはどんな生産者が作っているとか、ここのワイナリーはこんな歴史があるといったことを教えてくれました。

 そういったこともあって僕はもう気づいたらワインに興味をもつようになっていました。

 ワインがすばらしい点は、香りを楽しみ、飲んで味わい、そのワインを理解することでまるで旅をしているような気分になれること。ワインを飲むことでその国の文化やその土地の気候や風土うまで探索することができる。

 単なるお酒だけでは終わらない奥深さがあるところがワインのすばらしいところだと僕は思っています」

「チーム・ジンバブエのソムリエたち」のロバート・コー監督
「チーム・ジンバブエのソムリエたち」のロバート・コー監督

実はワインの生産者でもあります

ロス「実は、わたしは若いころはまったく興味がなかった。さっきロバートは父親が大のワイン愛好家であったことを話していたけど、わたしの父はスコッチ派だった(笑)。

 わたし自身がワインをはじめてというか、ちゃんと意識して味わうようになったのは20代半ばぐらいだったと記憶している。

 はじめはおいしいかそうでもないかぐらいだったけど、飲めば飲むほどおいしいだけではない、その味が複雑で多様で、ほんとうにいろいろなタイプのワインがあることに気づきました。それから食べ物との相性でも味がかわってくる。

 そういうおもしろさがワインにはあって、すっかりその世界にハマってしまいました。

 で、僕はフィルムメイカーであるのだけれど、もうひとつ顔があって。実はワインの生産者でもあります。(オーストラリアの)メルボルンの南のほうにあるモーニントン半島、ペニンシュラというところでワインを生産しています。ワイン生産者としてのキャリアも20年ぐらいになります」

実はワイン生産者でもある「チーム・ジンバブエのソムリエたち」のワーウィック・ロス監督
実はワイン生産者でもある「チーム・ジンバブエのソムリエたち」のワーウィック・ロス監督

「世界一美しいボルドーの秘密」を経て考えたこと

 前作「世界一美しいボルドーの秘密」を作り上げたあと、二人はこんなことを考えていたという。

ロー「『世界一美しいボルドーの秘密』を作る前、2010年か2011年ぐらいのときに、ワーウィックと二人でよく話していたのは、ワインを通していろいろなストーリーを語りたいよね、ということでした。

 その中で、まず『世界一美しいボルドーの秘密』を発表することになったわけだけど、この作品では、世界でも最高峰とされるボルドーワインに焦点を当てた。

 このワインに魅了された人々にカメラを向けながら、中国人富豪たちによって値段が高騰していることといったボルドーワインをめぐる現実を浮き彫りにしていった。

 いわばボルドーをひとつの切り口に、ワインのマーケットというものを世界視点でみて、いろいろな角度から検証して現在地を語るような作品になった。

 で、次となったとき、今度はより人間をクローズアップしたパーソナルな作品はできないかと考えたところがありました」

ロス「映画作りをする一方で、さきほど話したようにワイン造りもしていて、いつかその二つが合致するときがくるだろうと思って生まれたのが『世界一美しいボルドーの秘密』でした。

 この作品は、さきほどロバートが話したことプラス、僕は香港生まれなので、ずっと中国に関心を寄せてもいた。

 なので、わたしにとってパーソナルなものを含んだ作品にもなりました。

 そういうわたし自身の体験があって、次を考えたとき、今度はワインのマーケットや世界といった、いわば大きなテーマというよりは、個人に寄せたものがおもしろいのではないかとの思いがロバートと同じように生まれました。

 ワインの世界に身を置く人の人生がみえてくる、その人の物語を語るような作品ができないかと考えていました」

(※第二回に続く)

「チーム・ジンバブエのソムリエたち」ポスタービジュアルより
「チーム・ジンバブエのソムリエたち」ポスタービジュアルより

「チーム・ジンバブエのソムリエたち」

監督:ワーウィック・ロス&ロバート・コー

公式サイト https://team-sommelier.com/

ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて公開中、

以後、全国順次公開

写真はすべて(C)2020 Third Man Films Pty Ltd

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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