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あなたの家の周りにも山ほどいる身近で危険な害虫その1=チャドクガ

天野和利時事通信社・昆虫記者
ツバキを食害するチャドクガの幼虫集団。正面から見るとトウモロコシのようで可愛い?

 近所の公園や生垣にツバキやサザンカがないという家は少ないだろう。夏の葉はツヤツヤと輝き、冬の花は燃えるように美しいツバキ、サザンカ。かくれんぼをする子供たちが、その茂みに身を隠すこともあるかもしれない。しかし、そんなツバキ、サザンカには、恐らく都会で最も多く、最も危険な害虫のチャドクガの幼虫も隠れている。それも大群で。

 タイトル写真を見て、何の写真か分からなかった人も多いだろう。あえて、正体不明の写真にしたのには、訳がある。

 理由の1つは、毛虫の集団の写真がトップにあると、それだけでアレルギー反応を示してページを閉じてしまう人が多いということだ。毛虫の集団が苦手と言う人(普通の人はほとんどそうだが)は、この先の写真は見ない方がいいかもしれない。

 理由の2つ目は、チャドクガの小さい幼虫は、こういう正体不明の大集団でいることが多く、好奇心旺盛な子供たちが不用意に触ってしまう恐れがあることだ。

タイトル写真の幼虫を上から見ると、こんな感じ。そろそろ気味悪くなってきた。数日前に近所の公園で撮影。
タイトル写真の幼虫を上から見ると、こんな感じ。そろそろ気味悪くなってきた。数日前に近所の公園で撮影。

 チャドクガの小さな幼虫の集団は、葉を表と裏からサンドイッチ状態にして食べ進む習性がある。それを前方から見ると、黄色い頭だけが葉の縁にずらりと並んだタイトル写真のような光景になる。ちょっと可愛いい…などと思ってはいけない。

 幼虫の毒針毛(1匹に何十万本もあるらしい)に触れると(近くを通った際に服に付着することもあるので注意)ひどい炎症になる。最初は痒く、のちに赤く腫れ上がったり、水膨れになったりする。

チャドクガ成虫。一番オシャレな雰囲気の写真を選んでみた。実際は焦げ茶色で汚らしいものも多い。被害報告は少ないが成虫にも毒針毛が残っているので注意。
チャドクガ成虫。一番オシャレな雰囲気の写真を選んでみた。実際は焦げ茶色で汚らしいものも多い。被害報告は少ないが成虫にも毒針毛が残っているので注意。

チャ(茶)の木の表示板で交尾するチャドクガのカップル。チャの害虫であることがチャドクガの名の由来。チャはツバキ科ツバキ属の木。
チャ(茶)の木の表示板で交尾するチャドクガのカップル。チャの害虫であることがチャドクガの名の由来。チャはツバキ科ツバキ属の木。

少し大きくなったチャドクガ幼虫を正面と斜め上から撮影。
少し大きくなったチャドクガ幼虫を正面と斜め上から撮影。

かなり大きくなったチャドクガ幼虫。かなり気味悪い。
かなり大きくなったチャドクガ幼虫。かなり気味悪い。

 痒いからといって、患部を引っ掻いたり、こすったりすると、毒針毛が食い込んで、症状が悪化する。万一被害にあったら(昆虫記者も他のドクガで経験済み)粘着テープで毒針毛を剥がし取った後、流水で洗い流すのがいいという。抗ヒスタミン薬やステロイド薬で治療するのはその後だ。

 最大の自衛策は、春から秋にかけて(チャドクガ幼虫は4~6月と8~9月の年2回発生するという)ツバキ、サザンカの茂みに近づかないことだ。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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