約半数は「今の場所、将来過疎化するかも、不便になるかも」と不安に思っている
約5割の人は「人口増加や高齢化で地域の将来が不安」
人口減少や高齢化に伴う過疎化で、地域社会が希薄化し、便宜性が損なわれる状態が懸念されている。2015年10月に結果が発表された内閣府の「国土形成計画の推進に関する世論調査」によれば、約半数の人が現住所の過疎化による不安を感じているという。
該当調査対象母集団では、85%が居住地域の人口減や高齢化を実感している。それではその質問を踏まえた上で、回答者自身の居住地域の将来に不安を感じているか否かを尋ねたところ、全体では5割近くが同意を示す形となった。不安を持たない人も5割強で、ほぼ二分している。
心境の強度では不安派における強い懸念が2割足らず、非不安派は約1/4が強い楽観。やや楽観論が強い。
もっともこれは全体の平均値で、回答者の年齢階層や居住地域別では、大よそ高齢者≒地方居住地域者ほど不安を抱く人が多い。
人口の都市部集中、地域の過疎化は言葉として報道などで語られているだけでなく、多くの人の身の回りで実感できる状況が見聞きされており、現実問題として認識されている。大都市圏では不安を抱く人は4割に届かないが、地方に至るに連れて不安を持つ人の割合は増え、町村部居住者では6割を超えるようになる。また強い不安を持つ人の比率が増えるのも特徴的。例えば大都市では不安派のうち強い不安は3割足らずだが、町村部では4割を超える。
不安内容は空き地増加による治安の悪化や閑散化、お店の閉店
それでは具体的にどのような状況を想定して不安を抱いているのか。不安を感じる人にその具体的要素を確認したのが次のグラフ。
上位3項目は内容的に類似しているもので、「空き地や空き家の増加に伴う治安の悪化、建物倒壊リスク」「街の閑散化」「閉店店舗の増加による便宜性低下」が並んでいる。典型的な過疎化の状況でもあり、進行形の問題として認識していること、あるいはイメージとして思い浮かぶ将来像を不安視していることが分かる。閉店店舗は高齢化が主な原因だが、人口減少が係わる場合もあり、上位2項目がいずれも人口減少から直結する結果であることを合わせると、人口減少による状況の変化が主要な不安要素であることが分かる。
この不安要素も、回答者の居住地域で少なからぬ違いを示す。
空き地・空き家の増加、閑散化、就業場所の減少、交通機関の利便性低下、医療や育児サービスの低下は都市部より地方の方が危機感は強い。他方、店舗閉店、近所交流の減退、行政サービスの低下は都市部の人ほど強い危機感を抱いている。都市部と地方それぞれにおける人口減少や高齢化に伴う懸念事項の違いが明確化されており、興味深い結果となっている。
興味深いといえば、大都市圏に内包されるものの、東京都区部ではややイレギュラーな値が出ているのにも注目したいところ。空き地や空き家への懸念は地方よりも強く、閉店店舗の増加、文化や伝統継承の維持、育児サービスの低下にも強い危機感を抱いている。他方、公共交通機関への不安は無く、医療・介護サービスへの不安も他地域より一段と低い。東京在住の人が求めている、安心していることの実態が透けて見えるようでもある。
■関連記事: