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毎クールドラマ出演の森田甘路、コミュ障“矯正”で俳優に!癒しは“ハロプロ参拝”

長谷川まさ子フリーアナウンサー/芸能リポーター
放送中のドラマの撮影裏話まで明かしてくれた森田さん(撮影:すべて長谷川まさ子)

 「あれ、この人また出てる」…そんな印象を与える俳優・森田甘路(かんろ)さん(36)。それもそのはず。森田さんはここ数年、毎クールごとドラマに出続け、多い時にはワンクールで3本のドラマを掛け持ちしたこともある、若手バイプレイヤーなのです。主役の隣りで時に笑わせ、嫌味を言い、そして何だかいつも何かを食べているイメージ。そんな森田さんに、舞台稽古の合間を縫ってお話を聞いてきました。

ーここ数年、テレビで引っ張りだこ。ご自身ではどう感じていますか?

 何か需要があって呼ばれていると思うのですが、いまだに自分の中ではそれが何か分かっていなくて、俯瞰(ふかん)できていない部分がありますね。太っているから呼ばれているのかって考えても、もっと太っている人いるし、物珍しさから呼ばれているのかなって。

 ただ、30過ぎて事務所の先輩の生瀬(勝久)さんから「なんで自分が呼ばれているかを自覚したほうがいいぞ。誰でもできる芝居は誰にでもできるんだから、君が呼ばれている意味を考えて、君しかできないことをやりなさい」と言われてからは意識して仕事するようにはなりましたね。

ー忙しくなったと感じたのはいつ頃からですか?

 ありがたいことに、所属していた劇団「ナイロン100C(Cは正式には摂氏記号、以下同様)」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ氏主宰の劇団)の研究生から劇団員に昇格したタイミングで、「モテキ」(2010年・テレビ東京)というドラマにお声を掛けてもらい、監督がすごく僕の卑屈な表情を「面白いね」って言ってくださって。その時は本当に無名だったんですけど、業界的には「物珍しいやつが出てきたぞ」っていう感じで、何本か続けてお仕事をいただきました。

 でも、その後に停滞した時期があって、「このままじゃダメだな」って何か次につながるように爪痕を残さなければと思った時期はありました。そうやって自分なりに頑張っているうちに、20代後半になって、同じ監督に呼んでいただいたり、仕事がコンスタントに入るようになりました。

 自分の中では、28歳くらいの時に映画「イニシエーション・ラブ」(2015年公開)のオーディションで役が決まってからは、途切れずに仕事をいただけるようになった印象はありますね。30歳の時に「でぶせん」(2016年・Hulu、日本テレビ系)で主役に抜擢されてからは、毎クール毎クール仕事が途切れることなく呼んでいただけるようになりました。

ー毎クールどころか、同じクールに違う作品にということもありましたよね

 ありましたね。同じ時期に撮影していたわけではないですが、コロナ禍で予定が変わったりして、放送が重なって3本っていうことがありましたね。こんなありがたいことは、今後はもうないんだろうな。

 作品の撮影が多少被ったとしても、役がこんがらかることはないですが、スタジオを間違ったことはありますね。「あれ、今日どっちだっけ?」ってなって、砧スタジオなのに生田スタジオに向かっていたことはありました。

 「休みがない」と思われがちですが、暇な時もありますよ。舞台が始まっちゃうと連日稽古になりますが、映像は自分のポジションが出っ放しの役ではないので、1日で一気に撮って後は休み…みたいな。

 主役だった時は、1ヵ月で2日くらいしか(休みが)なかったです。「いやーもう主演はいいや」って思っちゃいましたね(笑)。主演ってこんな大変なんだって。コンスタントに主役をされてる方って、本当に休めない。休みは必要だなって思いましたね。

ーそもそも、なぜ俳優になろうと思ったんですか?

 興味を持ったという意味では、子供の頃に伊丹十三さんの映画「タンポポ」(1985年公開)を観て、ただひたすら食べているだけの映画なんですけど、それがすごく印象的で、そこから食べ物が出てくる作品を見るのが好きになって。

 高校生の時に「ランチの女王」(フジテレビ系)っていう洋食店がテーマのドラマを見た時に、「役者さんてすごいな。この作品の世界に行きたいな」って。その時は役者になる方法も分からないからそのまま大学に進学したんです。

 そしたらたまたま友人に「学生演劇をやっているから観に来ないか」って言われて。初めてお金を払って観に行って、「役者さんってこんなに自由なんだ」って思いました。その頃、自分は社会性が低くて、人とのコミュニケーションがまともに取れなくて、自分のことが大嫌いだったんです。人の目を見て話せない、遅刻する、人との約束を忘れる…といった感じだったので、このまま大人になったらやばいなってこともあり、“矯正”という意味で始めたところはありましたね。

ー学生演劇からプロになろうと思ったのは?

 学生演劇って1、2回やって解散しちゃうようなもので、その後は幼馴染とコントライブに出たりしていたんですけど、それも半年位で終わっちゃって。あれよあれよという間に就職活動が始まって就活していたんですけど、ちょうどその時に「ナイロン100C」の新人オーディションが10年ぶりに開かれるというチラシを見て、記念受験と思って受けたら受かって。内々定もらっていた企業もあったんですけど、自分の中でどっちが珍しい人生を歩めるかなって天秤にかけた時、何の変わり映えもない人生だったから、ちょっと挑戦してみようかなと思って劇団を選びました。

 ケラさんの舞台は観たことがあったんですけど、劇団の舞台は観ないままに入ってしまって。右も左も分からないし、なんで僕が受かったのかもよく分からないけど、気づいたら稽古場にいましたね。

 演技の基礎訓練とかもなく実戦投入されたので、先輩のお芝居を観て盗んで独学するしかなくて。ただ、そう簡単に盗めないというか。うちの劇団員の先輩は結構独特なフォームを持っている方が多くて、その先輩方も多分独学で習得したフォームなんで「教え方なんて分からない」って(笑)。めちゃくちゃそこは苦労しました。そこでまず“独学する力“を学んだ感じです。

ーその劇団を、4月10日で退団と発表がありましたね

 「ナイロン100C」の舞台にあまり出ていないのに、いつまでもぶら下がっているのもなんか申し訳ないなと思ったのと、15年間在籍して、もっといろいろなところで演じたいという気持ちが大きくなっていったんです。それに、自分に家族ができ子供ができと環境も変わる中で、「自分一人でやっていく力をつけたいな」と思って退団させていただきました。

ー今は泉鏡花の戯曲「夜叉ヶ池」のお稽古中ですよね

 演出家の森新太郎さんとは3回目なんですけど、何回も稽古を重ねて作っていく方で、自分の台本の読み込みの甘さに気付かされたり、体力的にも精神的にもしんどくて、タフさを求められます。でも舞台って、歪んだ背骨をまっすぐにしてくれる場所だなって思っていて。強制的に頭をフル回転させるし、他の仕事にも役立つ武器を作っている感じで、自分の中でブラッシュアップさせていくっていう感覚ですね。だから舞台は継続的にやっていきたいなと思っています。

 泉鏡花は初めてなんです。大正時代の難しい言葉にはちょっと苦戦していますけど、内容はシンプルで人間の欲が行き着く先はどうなるんだろうとか、その中での男女の純愛が描かれていたり、当時からしたらこんなファンタジーってあまりないジャンルだったんじゃないでしょうか。

 僕は、両極端な”めちゃくちゃふざけた鯉の妖怪”と“ベタに悪い人間”の二役をやるんですけど、泉鏡花の世界に浸ってます。

ー「ゲキカラドウ2」(テレビ東京系)も放送中ですが、本当に食べているんですか?

 食べています!実は、辛いものが苦手ですぐお腹を壊します。なので、激辛料理を食べる前にヨーグルトでなんとなく膜を張って(笑)。お店によっては、お客さんが胃痙攣(いけいれん)で救急車で運ばれたことがあるくらいのところもあるので、強烈な場合は少し抑えてもらうこともありますが、辛い演技って辛くないとできないので、自分たちが食べられるギリギリの辛さで食べています。

 僕はご飯と一緒に食べる役なので、実はテクニックというか吸引力とか咀嚼(そしゃく)力も必要なんですよ。口の大きさだけではなく、口に入れたものを一気に消すっていう(笑)。すぐにセリフがある時は、飲み込むこともありますよ。

ー森田さん、食べているシーン多いですよね

 最近多いですね(笑)。ウリにしていきたいです。ただ、おいしいと思って食べているだけなので、これからもっと食べる芝居というのを突き詰めていかなきゃとは思っていますね。

 僕は松田優作さんの食べ方がすごく魅力的だなと思っていて。食べると言うより、喰らっているんです。でも、おいしそうに見えるんですよね。相手に見せる食べるではなくて、ただ無心に自分の糧にしている食べ方が、自分の最終的な目標ですね。

ー森田さんの強みと弱みを教えてください

 型にハマってないというか、演技パターンを提示したり、監督の要求にすぐに応じられるので、柔軟性はあるとも言えますが、逆に言うと器用貧乏ですかね。後は精神的にちょっと弱い部分があって、すごくヘコみやすい。どうしても不安が勝っちゃって、「これから自分はどうやって生活していけばいいんだ」とか「仕事もなくなっていくんだろうなぁ」とか、常に危機感を持っています。周りからは「もうちょっと調子に乗ってもいいのに」って言われますけど、そんなことやっていたら足元をすくわれるって思います。

 最近ちょっと「筋トレ」にハマっているんです。マネジャーさんからは「キャラ変わっちゃうからあまりゴツくならないで」って言われていたのに、習慣になってジムに通いすぎちゃって、共演者からも「体型変わってきてるね」って言われて、結果マネジャーさんからお叱りを受けました。

ー多忙な中での癒しは?

 僕、「ハロプロ(ハロープロジェクト)」が好きなんですよ。僕にとってメンバーは巫女(みこ)、観に行くというより拝みに行く、参拝する感じですね。パワースポットというか。彼女たちはアイドルというよりアーティストですよね。自分の年の半分もいかない子たちがプロ意識を持って、すごい表現をするので、畑は違えど同じ表現者として刺激をもらっています。

ー大切にしていることは?

 常にアンテナを張り、生活の中でもこれがどう仕事に役立つのか考えるようになりました。以前は“自分が自分が”でどうにか爪痕を残そうと思っていましたが、最近は「I」ではなくて「We」で考えるようになり、そのためにはコミュニケーションも大事だし、チームとして作品をどうしたらいいかを常に考えています。

 僕は、運とご縁だけでここまで来たので、何がどう繋がっていくか分からないですし、一期一会を大切に、出会った人には出し惜しみせずコミュニケーションを取ることにしています。

ーこれからどうなっていきたいですか?

 NHKの大河ドラマと連続テレビ小説に出たいですね。後、当たり役を作りたい。欲張りですかね。もっと広い世界で活躍したいとも思っていて、今は世界配信がたくさんあるので、1つ言語を覚えといた方がいいかなと、2年前から独学で英語を学んでいます。

 実は、いつかクリント・イーストウッドさんに会いたいという夢があります。「グラン・トリノ」(2008年公開)を観て、作品に込めた思いを直接会って聞きたい、学びたいと思いました。今、彼は92歳なので、急ピッチで英語を頑張らなければですよね。

■インタビュー後記

一期一会を大切にしていると話した森田さんですが、実はこのインタビューもそこから始まりました。2018年に放送されたドラマ「ブラックスキャンダル」(日本テレビ系)は、記者会見のシーンが多かったため、私は監修とエキストラ出演をしていました。その時に森田さんは芸能プロダクションのマネジャー役で出演をしていて、お会いしたら挨拶をする程度、ちらっと雑談をしたかもくらいだったと思います。それから数年後、飲食店で食事をしていたら、森田さんの方から「長谷川さん、森田です」と声を掛けていただいたのです。役者でもない私に気付き、そしてわざわざ挨拶までしてくださって。私はあの時の感動をずっと忘れておらず、いつかインタビューさせていただきたいと思ってきたのです。…と言いながら私の行動が遅く、再会に随分と時が経ってしまいました。舞台「夜叉ヶ池」のチケットも買いました。鯉の妖怪、楽しみです。

■森田甘路(もりた・かんろ)

1986年6月12日生まれ、東京都出身。2008年に「ナイロン100C」新人オーディションに合格。研究生を経て2010年に劇団員に昇格。舞台のみならず、ドラマ・映画など幅広く活躍している。近年の主な出演作に、【ドラマ】『大病院占拠』(2023年・日本テレビ系)、『罠の戦争』(2023年・フジテレビ系)、【舞台】『ようこそ、ミナト先生』(2022年)、『Romeo and Juliet-ロミオとジュリエット-』(2021年)、『HAMLET-ハムレット-』(2020年)、『睾丸』(2018年)など。4月6日より、ドラマ『ゲキカラドウ2』(テレビ東京系)に出演中。5月2日からは「夜叉ヶ池」(PARCO劇場)の出演を控えている。

フリーアナウンサー/芸能リポーター

群馬県生まれ。大学在学中にTBS緑山塾で学び、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で7年間アシスタントを務める。ワイドショーリポーター歴はTBS「3時にあいましょう」から30年以上、皇室から事件、芸能まで全てのジャンルをリポートしてきた。現在は芸能を専門とし、フジテレビ「ワイドナショー」、日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」ほか、静岡・名古屋・大阪・福岡の番組で芸能情報を伝える。趣味は舞台鑑賞。

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