今さら聞けない「春闘」 時期や流れ、2024年春闘基本方針を解説
春闘とは、春季生活闘争の略称であり、労働組合が行う賃上げ要求を中心とした交渉をいいます。新年度の労働者の賃金を中心とした労働条件の改善を求めて、毎年2月~3月の春頃にかけて行われるため、春闘という呼び名が付きました。春闘では、各企業の労働組合が全国中央組織の労働団体や産業別組織の指導・調整のもと、要求を各企業に提出して団体交渉を行います。
なぜ春闘が行われるのか
労働組合が足並みをそろえて交渉することには、労働者の権利である「団体交渉権」を行使するという大きな意味があります。労働組合による団体交渉は、憲法28条で規定された労働者の権利の一つです。会社側は、団体交渉を不当に拒否することはできません。 そもそも、春闘が始まったのは1956(昭和31)年頃といわれています。それまでの労働組合は企業別に組織されていたこともあり、賃金を中心とした労働条件を決定できる優位な立場にある経営者と交渉できるだけの力を持っていませんでした。弱い交渉力を補うため、労働組合が産業別にまとまり、同時に賃上げを要求する形となったのが今の春闘です。 当初は、国鉄などの公益事業関係の労働組合が最初に賃上げを要求して春闘相場を形成し、その後民間企業に波及させていましたが、次第に民間企業でも賃上げを要求するようになり、高度経済成長期の中で業績好調な金属関係の労働組合が全体を引っ張っていきました。 賃上げを目的に始まった春闘は、バブル崩壊後は雇用維持が争点となるなど、時代背景と経済環境によって変化しながら、さまざまな要求を行っています。
春闘における要求
春闘の目的は、労働者の待遇の改善です。待遇には、賃金、教育訓練、福利厚生施設、災害補償、解雇などすべての労働条件が含まれますが、もっとも重要とされているのが「賃上げ」です。非正規雇用の労働者の待遇改善や、ワーク・ライフ・バランスの確保なども含まれます。 ■賃上げ 賃上げは、春闘の大きな争点です。賃上げは、「定期昇給(定昇)」と「ベースアップ(ベア)」の二つからなります。定期昇給とは、年齢や勤続年数に応じて自動的に給与が上がる制度をいいます。ベースアップは、年齢などに関係なく、労働者全体の賃金水準を引き上げるものです。 ほかにも、賃上げ要求では「男女間賃金格差および生活関連手当支給基準の是正」「初任給等の取り組み」「賞与などの一時金」などが掲げられています。 ■働き方の改善 近年、企業で大きなテーマとなっているのが「働き方改革」です。労働者の働きやすさを重視した、長時間労働の是正や労働時間の短縮は、春闘の争点の一つとなっています。 また、新型コロナウイルス感染症が拡大したあとに広がったテレワークは、労働者のワーク・ライフ・バランスを実現させる手段の一つとして認識されるようになりました。そのため、テレワーク拡充にあたっての取り組みなども、近年の要求に含まれています。 ■非正規社員の待遇改善 1990年代以降、派遣社員や契約社員、パートなどの非正規雇用が拡大しました。非正規社員と正社員の待遇格差は、日本が抱える労働問題の一つです。正社員・非正規社員の不合理な待遇格差を禁止する「同一労働同一賃金」が2020年4月(※)から施行されていますが、依然として不安定な待遇を受ける非正規社員は少なくありません。春闘では、こうした非正規社員の待遇改善に向けての要求を行っています。 ※大企業と派遣は2020年、中小企業は2021年より施行 ■ジェンダー平等、多様性の推進 改正女性活躍推進法および男女雇用機会均等法の周知徹底と点検活動、あらゆるハラスメント対策と差別禁止の取り組みなどが、要求に盛り込まれています。