『書店員が選ぶ絵本新人賞』大賞受賞・ただのぶこ「小学校の臨時教諭を定年退職後、創作を開始。7年絵本の賞に応募し続け、76歳で夢を叶えた」
第1回「書店員が選ぶ絵本新人賞」で大賞を受賞したのは、元小学校教諭のただのぶこさん、76歳。物語のタネは、これまで出会ったたくさんの子どもたちや、なにげない家事の時間にたくさん転がっている、と語ります(構成=篠藤ゆり 撮影=洞澤佐智子) 【写真】たださんが以前、長女のためにつくった絵本 * * * * * * * ◆孫が「ばぁば、すげえ」と言ってくれた 受賞の知らせがあったのは、家で掃除をしているときでした。68歳から、毎年絵本の賞に応募を続けて約7年。もうびっくりして、次の瞬間、涙が出てきました。 贈呈式には、兵庫の自宅から夫と一緒に上京しました。普段こういう場に出る機会がないので、突然知らない世界に飛び込んだ気分(笑)。私には孫が4人いるのですが、中学2年になる男の子が、「ばぁば、すげえ」と言ってくれたのが、一番のご褒美ですね。 私は絵を専門的に勉強したことはありません。最初に絵本をつくったのは、長女が2歳のころ。夜になると「絵本のんで(読んで)」と本を抱えてくる娘のために、彼女を主人公にした絵本を描いてあげよう、と思ったのです。 踏んだ落ち葉が足の裏にたくさんくっついて、どんどん背が高くなる女の子のお話とかね。いまもうちにあります。でもそのうち子育てが忙しくなり、絵本どころではなくなってしまいました。
出産を機に小学校教師の仕事をやめ、専業主婦をしていましたが、下の子どもが高校に上がると、毎日虚しさが募るようになって。自分だけ社会と繋がっていないような気がするんですね。家事を終えると、なんだかつーっと涙が出てくる。それで50歳のとき、臨時教員として仕事に復帰することにしました。 小学生も低学年だと、いくら「静かにしましょう」と言っても、教室はわいわいがやがや。ちっとも静まりません。ある日、困り果てた私は、黒板の隅っこに「おこりんぼうでわがままでいじわるなお姫様のお話」と書いて、ひとりで語り出しました。もちろんお話の筋など決めていない、アドリブです。 すると前のほうからだんだん静かになって、「先生、その子どんな顔してるん?」なんて聞いてくる。黒板にお姫様の顔を描きながら、私は娘に絵本をつくったときのことを思い出していました。お話って素敵だなあ。帰ってすぐ、そのお話を絵本にしました。これが再び絵本をつくるようになったきっかけです。 定年退職後は絵本の読み聞かせボランティアをしたり、つくった絵本を「ほしい」という近所の人に差し上げたりしていました。そうしたら夫が、「嵯峨美術大学に絵本の講座があるようだよ」と教えてくれたのです。 絵本の描き方だけでなく製本の仕方まで学べるというので、受講を決めました。週1回の講座でしたが、電車だと片道3時間。それでも楽しくて、65歳から4年間通って、その間に12冊の絵本をつくりました。