日本の物流を支える救世主!?外国人トラックドライバーが語る「やりがい」「難しさ」
スーパーJチャンネル
[2024/02/03 11:00]
ドライバーの人手不足などが問題になっている「物流の2024年問題」を目前に、とある試みで注目されているのが静岡県の運送会社「マルシンレッカー運輸」です。それは、所属する50人のドライバーのうち8人、ブラジル人を雇用していることです。
意外と知らない“長距離運送の一日”に密着。彼らが語る「やりがい」と「難しさ」。さらに、トラック仕事で日本語が上達!そのワケは?運ぶことで気づいたという「ダイジな仕事」、その思いに迫ります。
■5年前に入社「漢字はすごく難しい」
静岡県の西部にある磐田市で、1982年に創業した「マルシンレッカー運輸」。北は東北から、南は九州まで、年間4万カ所に運行。日々物流を支えるこの会社…ある試みが注目されています。
来日しておよそ20年、日本の桜が大好きなロビソンさん(41)。日系3世のネモトさん(36)は、日本の刑事ドラマファン。実は、所属する50人中8人がブラジル人ドライバーです。
「モレノさん評判いいよ。行くところで話を聞くと。人当たりとかうまいんじゃないの?」
取引先から指名が入るほどの人気ドライバー、5年前に入社したモレノさん(51)。
「きょうは大阪行って(荷物を)下ろして、また積み込みして戻ります」
この日の作業は、静岡県浜松市を出発した後、およそ300キロ先の大阪府堺市まで運送資材を運び、戻ってきた静岡県内で2カ所に配送。合計およそ600キロの道のりです。
まだ辺りは真っ暗な午前3時15分、小雨が降るなか浜松市を出発します。みるみるうちに雨脚が強くなります。
気を張る運転中にもかかわらず、取材スタッフを何度も気遣ってくれる、優しいモレノさん。以前はプラスチック製品の成形工場で働いていましたが、5年前にトラックドライバーに転職しました。
「(Q.トラックドライバーの仕事は大変…?)ううん、大変じゃない。ドライバーは毎日仕事の場所が違うね。みんな違うね。これが一番良い」
違った景色を見ながら、毎日違う現場に行けるこの仕事にやりがいを感じているといいます。
順調に堺市を目指していた…その時でした。
「間違った!あぁ〜」
「(Q.間違った!?)あぁあぁあぁあぁ〜」
本来進むはずだった高速道路の分岐点を通り過ぎるミスでした。
「大阪はあまり来ないね。1カ月に1回ぐらい…漢字はすごく難しいよね…」
来日して30年というモレノさん。ローマ字表記があるとはいえ、看板で出口を峻別するのはまだ難しいといいます。
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■13時間勤務が終了「できるだけ仕事続ける」■13時間勤務が終了「できるだけ仕事続ける」
そして、出発してからおよそ4時間後。取引先の木材加工会社に到着です。
すると…すぐにシートを倒し、仮眠するモレノさん。実は、4時間走るごとに30分の休憩を取るのが、この業界のルールです。
「準備できたからいいよ」
「本当?ありがとうございます」
積んできた荷物を下ろすと…すぐさま、次の現場に運ぶ荷物を積み込みます。
そして、午前8時45分…。
「終わりました」
「(Q.全然、大阪を感じないまま戻ることに…)そうね」
大阪の滞在時間、わずか1時間20分。ご当地グルメを楽しむ時間はありません。ゆっくり食事を味わう間もなく、ランチは車内で一息つくのが日課なんだとか…。心優しいモレノさんはここでも、取材スタッフに洋梨をおすそ分けしてくれます。
再び5時間近くかけ、浜松市に到着しました。現場によっては、荷下ろし作業もドライバーの仕事です。
合計3カ所の現場を回ったこの日。早朝3時15分から仕事を始めて、実に13時間の勤務となりました。
「お疲れさま。きょう問題ないです」
「あすは何時ですか?」
「あすは4時半」
「お疲れさまでした」
「お疲れさま、バイバイ」
モレノさんは翌日の仕事に備え、午後9時ごろには就寝するといいます。
「(Q.いま51歳?)51歳」
「(Q.何歳くらいまで続ける?)できるだけいきます」
「(Q.ずっとやる?)うん」
不規則で長時間勤務になりやすいなどの労働環境の改善が、この会社だけでなく運送業界全体の課題となっています。
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■「お国柄の違い」にどう対応?■「お国柄の違い」にどう対応?
「本当に超高齢化。働き手がいない。若い衆だって、しっかりしたところ行くならドライバーにならないよ、普通」
そんな状況を打開しようと、マルシンレッカー運輸では元々静岡県に多く住んでいたブラジル人に注目したといいます。
「日本人を募集してもなかなか来ない…。採用してどんな感じか見てみようと始まった。真面目だし、しっかりやってくれる」
「僕たちも弱音はかないようにしているが(ブラジル人従業員は)それ以上に弱音はかない。職場の雰囲気が和らぐ」
会社としても、ブラジル人が働きやすいようにバックアップ。社内には日本語だけでなくポルトガル語も表記しています。
「こういうふうに行くんだよと、写真や地図で見せた方が理解しやすい」
たとえ看板の漢字が理解できなくても、現場に行けるよう目印となる建物やルートをまとめています。
免許の取得費用の負担や週休2日の徹底。給与体系なども日本人ドライバーと平等にしているといいます。
「(Q.なんでトラックドライバーに?)お給料ね、こっちいっぱいね」
「(Q.お金がいっぱい?)そう」
未経験で入社しても、週5日勤務で月収23万円から。昇給と年に2度のボーナスもあり、収入面での不満はないといいます。
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■ドライバーになり…日本語が上達■ドライバーになり…日本語が上達
日本語が上手なロビソンさんは、来日およそ20年でドライバー歴は4年。この仕事を始めて、日本語が上達したといいます。
「以前の仕事が工場で部品を作る。あまり(日本語が)しゃべれないね。トラック会社に入りました。日本語を毎日使う。電話とかお客さんの受け付けとか」
ドライバーは一人で取引先に出向くため、日本語力の上達につながっているといいます。
「毎日、言葉を1つ覚えている。きょう1つ。あすも1つ。あさっても1つ」
分からない日本語は、すぐさま調べるのがロビソンさん流です。
渋滞もなく、スムーズに仕事を終えたこの日、覚えようとしていた言葉は“幸運”という日本語でした。
「(Q.きょうはパーフェクト?)パーフェクト。ちょっと待って…あの…運?運持ってきました」
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■子ども生まれ勤務体制を調整…「優しい会社」■子ども生まれ勤務体制を調整…「優しい会社」
「13時間をすぎる前にトラックを止めて仮眠しないといけません」
先輩ブラジル人が後輩に指導する体制も、徐々にできつつあります。
「マルシンは外国人にいつも優しい会社。なんでかというと、外国人にチャンスをあげている」
それを身に染みて感じたのは、2年前。妻が出産してからだといいます。
「それまではいつも遠くに行っても全然問題なかったけど、子ども生まれてから家に帰りたいなって」
そんなリカルドさんの希望を踏まえ、泊まりがけの仕事は外してくれたのだといます。
「ブラジル人はすごく家族を大事にする。そこはうまく調整して家族の時間を取れるよう工夫している」
「前は3日間くらい家に戻らない日もあった。でも、妊娠してから距離も近くなって安心。子どもが『パパ!パパ!』って。たまにパパの方が好きかなって、私がすねるぐらい」
トラックドライバーがさらに不足するとみられる2024年を目前に、変化はすでに始まっています。
「自分が今やっていることは大事なことだと思っている。例えばおむつ運ぶ時に、赤ちゃんたちのためとか、お菓子積む時はスーパーに運んで他の人が買う(ことを思う)。大変だけどうれしい」