元中日ドラゴンズ投手の鈴木孝政氏「打者として記憶に残るあの1球」
東海ラジオ『ドラゴンズステーション』5月12日放送の「記憶に残るあの1球」のコーナーで、コメンテーターの鈴木孝政氏が、自身のプロ野球人生で放った唯一のホームランについて話した。投手出身の鈴木氏にとって「あの1球」というと「打たれた球、負けの1球」が圧倒的に多いということになるが、この日は敢えて、打者としての1球を選んだ。
鈴木孝政、中日ドラゴンズ入団3年目のシーズン。対阪神戦。試合は4対4の同点。8回からマウンドに上がった鈴木は、まず無得点に抑えた。9回の攻撃は、その鈴木から。抑え投手が打席に立つ機会は少なく、その時は、自分が先頭打者だと気づくのが遅れたらしい。「お前からだ」と言われて、慌てて打席に向かおうとした。
「悪いけど、打つ気もない。(抑え投手として)次の回を抑えなくてはいけない」。それしか頭になかったという鈴木。さらに、自分のバットもなく、投手共有のバットも見当たらず、しかたなく、年齢の近い藤波選手のバットを借りて打席に入った。マウンド上は、阪神の抑えの切り札、安仁屋宗八。
「初球、イチ、ニの、サンで、思いっきり振ってやろうと思った」鈴木。「ストレートをイチ、ニの、サンのタイミングで振ったら、当たってしまった」しかし「自分では、思いっきり引っ張ったつもりだったが、ライト方向へ飛んでしまった」という打球は、そのままポール際へ。ギリギリのホームラン。
鈴木氏は「テレビ放送は、CM中だったので、映像が残っていない。新聞も、打った時の写真がない。残っている写真は、二塁を回っているときのもので、マウンド上には、がっくりする安仁屋さんが写っていた」と話した。当時は、投手が打席の時は、テレビカメラも回っていないことが多く、写真のカメラマンも、気を抜いていたようだ。
鈴木氏は(自分がホームランを打って、二塁を回っているときの)写真を「今も大切に持っている」そうだ。ホームラン賞(3,000円)の祝儀袋も同様。鈴木氏は、この日の試合で、決勝ホームランを放ち、勝利投手となり、勝利打点も記録した。まさに、投打に大活躍の一夜だったわけだ。
鈴木氏が「あの1球」について話した直後、サプライズ(鈴木氏には内緒)で「あの1球」を投げた安仁屋宗八氏が電話で登場した。安仁屋氏は現在、RCC中国放送で解説を務めている。安仁屋氏も、あのときの場面をよく覚えていると言い「彼(鈴木氏)にとっても最初で最後の1本だが、私にとっても、プロ野球生活で投手に打たれた唯一のホームラン。まさに、あの1球」と続けた。
「あの1球」をきっかけに、鈴木氏は、現役時代に、安仁屋氏から、よくアドバイスをもらい、それが非常に役立ち、感謝しているという。そして、現役を退いてからも、球場で会えば、安仁屋氏が気さくに声をかけてくれることを、ありがたく思っているということだ。今回のサプライズに、鈴木氏は、かなり驚いていたが、同時に感激している様子だった。
東海ラジオのプロ野球解説者がコメンテーターを務める『ドラゴンズステーション』(月~金16:00~19:00)。番組の中の「記憶に残るあの1球」のコーナーでは、解説者が、現役時代・コーチ時代を通して経験した、今でも鮮明に記憶に残っている試合や出来事を紹介している。鈴木氏のほか、ドラゴンズステーション東海ラジオのプロ野球解説者は、権藤博氏、鹿島忠氏、山本昌氏、山﨑武司氏、谷繁元信氏、大西崇之氏、井端弘和氏、森野将彦氏など。
- ドラゴンズステーション
- 放送局:TOKAI RADIO
- 放送日時:毎週月曜~金曜 16時00分~19時00分
※該当回の聴取期間は終了しました。