×

「賛成」と「反対」死刑制度、意見の対立点

2016年10月28日 17:21
「賛成」と「反対」死刑制度、意見の対立点

 日本弁護士連合会(日弁連)の宣言が注目されている。日弁連は今月7日、福井市内で人権擁護をテーマに大会を開き、死刑制度の是非について議論を交わした。そして、「死刑制度の廃止を目指す」とする宣言を賛成多数で採択した。日弁連が死刑廃止を打ち出したのは、今回が初めて。


――被告人の側に立つ弁護士としては、やはり皆、賛成だったのか。

 現在、弁護士は全国で3万7000人余りいるが、死刑制度の是非については、実は意見が分かれている。特に犯罪被害者を支援している弁護士らは「遺族は死刑への思いが強い」などとして、死刑廃止に反対、死刑制度は残した方がよいとしている。

 日弁連は弁護士登録の前提として全員が加入することになっているので、意見の分かれる事柄について、日弁連として宣言を出すべきではないとの声も聞かれる。

 実際、今回の投票に参加したのは786人で、そのうち賛成は546人、これは3万7000人余りいる弁護士全体のわずか1.5%に過ぎず、弁護士全体の意向が十分反映していない可能性がある。


――どういう点で意見が対立しているのか。

 まず、死刑廃止に賛成する意見としては、死刑は憲法の禁止する残虐な刑罰にあたるという。また、えん罪の危険性を挙げている。無実の人を誤って犯罪者にしてしまい、死刑を執行してしまったら取り返しがつかないというわけだ。

 イギリスでは1950年に男性の死刑が執行されたが、その3年後に真犯人が見つかったことがきっかけで、死刑を廃止した。

 また、「死刑廃止が世界の流れだ」とも主張している。いま、世界では140か国が死刑を実質的に廃止している。そして、国連も死刑制度がある国に対し、「死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議を行っている。死刑を執行している国の方が圧倒的に少ないということだ。

 一方、“死刑存続派”の意見を挙げると、まず“死刑廃止派が訴える”残虐な刑罰にあたるという点が、刑罰が残虐かどうかは刑の執行方法についてみるべきであって、現在の絞首刑という執行方法は残虐とは言えないと主張する。これは、最高裁判所の考え方でもある。

 「死刑は犯罪を抑止する効果がある」とも主張している。

 さらに重視しているのが、国民の多くが死刑を支持していることだ。内閣府が2年前に行った世論調査では「死刑は廃止すべき」と回答しているのは約1割にとどまる一方で、「死刑もやむを得ない」と回答している人が約8割に上っている。

 特に、犯罪被害者の中に「加害者を死刑にしてほしい」という意見を述べる人が少なくないことも根拠になっている。

 今年3月、地下鉄サリン事件から21年になるのを前に開かれたシンポジウムでは、事件の被害者や遺族から「親として死刑のボタンを押したい」などと、死刑執行を強く望む声が多く聞かれた。

 一方で、日弁連の大会の中で作家の瀬戸内寂聴さんがビデオメッセージを寄せたが、その中で「殺したがるバカどもと闘ってください」などと死刑制度を批判した。

 これに対しては「加害者への極刑を求める遺族への配慮に欠ける」として批判の声が上がり、瀬戸内さんはその後、「誤解を招いた」などと謝罪している。


――対立を解くカギはあるのか。

 今回のポイントは「終身刑をどうみるか」。日弁連は死刑を廃止する代わりに「仮釈放の可能性がない終身刑制度」の導入を検討するべきとしている。

 世論調査では、終身刑が導入された場合、死刑に肯定的な意見は約8割から5割程度に減っている。ただ、凶悪犯を一生涯、税金で面倒を見ることへの反発もある。

 いずれにしても、裁判員として死刑判決に関わる可能性がある以上、国民一人ひとりが死刑制度の是非を真剣に議論する必要がある。