ヘルシートーク:女優・夏川結衣さん

2018.05.01 274号 05面

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」(松竹)

「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」(松竹)

 ◆山田洋次監督の最新作、テーマは「主婦への賛歌」

 山田洋次監督「家族はつらいよ」シリーズの第3作目、「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」(松竹)が5月25日から公開されます。第1作目は「熟年離婚」、2作目は「無縁社会」がテーマでしたが、今作は「主婦への賛歌」がテーマ。気遣いのない夫にたまりかねて家を出る主婦・史枝を演じた夏川結衣さんに、山田組の現場での話やご自身の食生活についてお話を伺いました。

 ●演じながら主婦の大変さを実感!初めて明らかになる史枝の人生も見どころ

 前作の打ち上げの時にシリーズ3作目をやることは決まっていて、監督に「次は夏川さんが大変になるぞ」と言われていたんです。でも、「またまた~(笑)」くらいにしか考えていなくて。実際に台本をいただいたら、家出はするし、フラメンコを踊るシーンもあって、「えーっ!」とビックリ。フラメンコはスタジオに通って練習しましたが、本当に大変でした。

 第1作から平田家の男性チームはダメな夫が多いですよね。手のかかる人たちだなと思っていましたが、とうとう今回、専業主婦の史枝が、まったく気遣いのない夫の言葉に、それまでの不満を爆発させて家を飛び出します。

 それによって、史枝がどんな人生を歩んできたのか、夫とどのように出会ったのかが、初めて明かされるんです。演じている私も初めて知って、「そうだったんだ!」って。ちょっと不思議な感覚です。

 山田監督の演出は派手なドンパチはないけれど、ひとつひとつのシーンが、女性の機微をうまく表現していると思います。例えば、自分が主婦であると自覚している史枝は、家を出るときにも子どもにお弁当をつくって出ていくんです。お財布だけ持って無鉄砲に出ていくという発想をしない。弁当をつくって出ていく方が、怖いですよね。ここは、監督も最後まで考えてこだわったシーンでした。

 「アイロンもちゃんとかけてくれ」と言われました。アイロンのかけ方ひとつで、家事をちゃんとやっているという印象を与えなければなりません。仕事を持った忙しい主婦のかけ方とは違うわけです。買い物の仕方も違う。本当に主婦って重労働だなと思いました。

 ●現場では、文句を言わずに放っておく本当の家族のような関係に

 この映画を見た方から、「今回が一番家族の会話に無理がないね」という感想をいただきました。シリーズでやってきているので、それぞれが役に近づいて、他の演者さんとの距離も近くなった気がします。やたらべたべたすることもないし、しゃべらなきゃという気遣いもない。本当の家族っぽい関係ですね。

 実際、山田監督の現場は緊張感がすごいので、いつもくたくた。だからいつまでも気を遣ってはいられないんですよ。それを踏まえての自由。文句を言わない。放っておいてあげる。自然とそうなってきたことがシリーズを通して感じられます。

 私はシリーズ作品が初めてだったのですが、出演者のみなさんとは、絆は深くなるけれど甘えは決して許されないという関係ですね。家族の誰も甘えることなく、自分の役に真剣に取り組んでいます。同じメンバーで、スタッフもほぼ同じ。でも、収録が終わるとそれぞれが別の現場に行き、経験を積んでまたここに戻ってくる。それが訓練になっているんですね。メンタル的にも強くなったと思います。監督の演出は厳しいのですが、一人一人に向き合って、足したり引いたりしてくださるので、鍛えられますね。

 ●週に3回は鍋でたっぷり野菜を食べています!最近のお気に入りは「豚しゃぶ」

 家出先のロケ地は長野県の茂田井宿でした。監督の「たそがれ清兵衛」ゆかりの地でもあります。そこに立って仕事ができることが光栄でした。浅間山がドーンとあって、とても美しいところです。歴史にもふれた気がしました。水がとにかくおいしかったですね。だからお酒もおいしくて。

 地元の婦人会の方々が、炊き出しで70人ものスタッフをもてなしてくださったのが、いい思い出として残っています。特にきのこのスープが絶品。鶏だしにいろいろな種類のきのこが入っていて、しょうゆで薄く味付けしてあって。ホッとするやさしい味でした。

 他にも、お母さんがつくってくれるようなカレーや柿のサラダ、デザートにはりんご。家にいるような温かい気持ちになりました。食材もいいし、味もいい。あまり食事を取らない監督も、この時ばかりは召し上がっていましたね。

 私は野菜が大好きで、週3回は鍋にしてたっぷり野菜を食べています。いま一番のお気に入りは、豚しゃぶ。豆苗とねぎを入れて、しゃぶしゃぶにした豚肉で豆苗とねぎをまいていただきます。おいしいですよ。葉物野菜が高かった時期は、豆苗を冷蔵庫の中にストックしておきました。白菜のせん切りと桜えびの炒め物も得意料理です。

 毎日、主婦業で忙しい女性たち、特にダメ夫を持つ女性たちに、家事の手をちょっと休めてこの映画を見てもらい、笑って泣いて、共感していただけたらうれしいですね。

 ◆プロフィール

 なつかわ・ゆい 熊本県出身。1993年映画「空がこんなに青いわけがない」でデビュー。1994年「夜がまた来る」でヨコハマ映画祭最優秀新人女優賞受賞美貌と演技力をあわせ持つ女優として人気に。山田洋次監督の「家族はつらいよ」シリーズには1作目から登場。第3作目の今回は家出をする主婦の役で存在感を示している。

 ●私たち〈主婦〉辞めます!妻の反乱で、夫たちに史上最大のピンチが訪れる!

 「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」(松竹) 2018年5月25日(金)全国公開

 Story:三世代でにぎやかに暮らす平田家に泥棒が入り、主婦・史枝(夏川結衣)のへそくりが盗まれた。夫・幸之助(西村まさ彦)からは、いたわる言葉どころか「俺の稼いだ金でへそくりしていたのか」と心ない言葉が。我慢の限界に達した史枝は家出を決行。これまで家のことはすべて史枝任せにしていた家族はオロオロするばかり。突如、主婦がいなくなった家族の、笑って泣ける大騒動ドラマ。

 ○キャスト:橋爪功 吉行和子/西村まさ彦 夏川結衣/中嶋朋子 林家正蔵/妻夫木聡 蒼井優

 ○監督:山田洋次

 ○脚本:山田洋次 平松恵美子

 ○公式サイト http://kazoku-tsuraiyo.jp/

 (C)2018「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ3」制作委員会

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