NECは11月9日〜10日、「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2017」を都内で開催した。本稿では、9日に行われた代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野隆氏の基調講演「Orchestrating a brighter world〜デジタルトランスフォーメーションで共に創る未来」の内容をダイジェストでお届けする。

NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 新野隆氏

実世界を見える化するNECのデジタル変革

新野氏はまずデジタルを活用してNEC自身の変革の事例を挙げた。NECではデジタルトランスフォーメーションについて「実世界を見える化し、さまざまな分析をすることで、ヒト・モノ・コトに新たな意味性を付加し、それによって、企業・産業、都市、ヒトに活力を与えるという一連の流れ」のことだと考えている。

活用した自己変革は4つの分野で行われている。

1つは、営業・マーケティングで、AIを使って、顧客のニーズに合致した提案を行っている。AIを使うことで、潜在顧客の抽出精度は通常の施策と比較して4倍になったという。

2つめは、設計・開発の変革でAIを活用したプロジェクト品質の向上だ。過去3年分のデータを分析し予測モデルを作成し、プロジェクトの25%の進捗段階で80%の確率で成否判定ができるようになった。

3つめは、サプライチェーンの変革だ。生産計画にAIを導入し、BTO品の部材在庫を45%削減した。

4つめは働き方改革だ。RPAを使って業務を自動化し、伝票処理を70%削減できた。

製造、金融、医療 - 労働生産性を変えるAI

「IDCの調査では国内コグニティブ/AIシステム市場でNo.1を取ることができました。われわれ自身が変革を進め、これをもとにお客様のデジタルトランスフォーメーションを推進していこうとしています」(新野氏)

続いて新野氏は、デジタルによる社会の変革について見通しを述べた。

世界の人口が増える中、国内人口は減っていく。2030年には、3人に1人が高齢者となり、生産年齢人口が1:1.85となり、今のままでは継続できない社会になる。

そこで、デジタルを使ってどういう価値提案ができるかが問われることになる。新野氏はNECが、製造、金融、医療などの分野でさまざまな取り組みを行っていることを紹介した。

製造の分野では、住友電気工業と協力してAIを推進した事例がある。AIによる自動検査と判別を行い、検査費用を60%削減したという。また、金融の事例としては、東京証券取引所や楽天証券などと協力して、売買審査の業務で不正取引を検知する取り組みを進めてきた。

医療分野では、北原国際病院などを中心とする医療法人社団KNIの事例がある。医療や診断の現場でITを活用するデジタルホスピタルを推進している。患者が不穏行動が起こす40分前にその71%を検知したり、退院後の予測を84%の精度で行うといった成果を出しているという。

AIが社会の安心・安全にも貢献

一方、世界的にみると、2030年には人口が約85億人、都市人口が50億人、年間旅行者が18億人になると見込まれている。NECでは、そうしたなかで、空港、街中、イベントで発生する課題に対処していこうとしているという。

空港では、テロ対策を含めた安心・安全を確保するための取り組みを進めている。具体的には、ワシントン・ダレス国際空港で顔認証システムなどを提供することを紹介した。

街中については、京都府警とAIを活用した犯罪予測システムを共同開発し、年9000万人の旅行者を守っている。過去の犯罪発生データと犯罪理論を組み合わせて分析し、犯罪リスクの高い場所を予測、警らルートを作成しているという。

イベントの安全・安心な取り組みとしては、サウス・ウェールズ警察と協力して行ったUEFAチャンピオンシップのスタジアム警備がある。監視カメラ付きのクルマでスタジアム周辺をまわり、17万人の来場者を監視対象者リストに載る50万人とリアルタイムに照合して、安全を確保したという。

「世界や日本で起きているいろいろな課題をデジタルで解決しています。デジタルによって新しい価値を生んでいくことができると思っています」(新野氏)

そのうえで新野氏は、そうした価値を生む技術やノウハウ、サービスを解説していった。AIについては、「従来のものと大きく考え方が変わっていないが、それを支える技術が進歩したことが大きい」という。