2月6日より、WOWOWにてアニメ『デトロイト・メタル・シティ』(以下『DMC』)が放映される。若杉公徳の同名ギャグマンガを原作とするアニメ版『DMC』は、2008年8月にOVAとしてリリース。同時期に松山ケンイチ主演による実写版映画も大ヒットしたので、こちらも記憶に新しい人は多いはず。WOWOWでは、このアニメ版『DMC』を毎週金曜深夜0時30分より放映。PG-12として過激なネタも完全解禁されるので、昨年『DMC』で盛り上がった人も、そうでない人もぜひ見逃さないでほしい。

『デトロイト・メタル・シティ』の主人公、ヨハネ・クラウザーII世

<ストーリー>
オシャレポップスを愛する青年、根岸はプロデビューを夢見て上京したが、レコード会社で歌わされることになったのは悪魔的デスメタル! 「デトロイト・メタル・シティ」のギターボーカル・"ヨハネ・クラウザーII世"として自分の意思とは裏腹に、過激なパフォーマンスと歌詞で大ブレイクしてしまう!

監督は『蟲師』からギャグ作品まで幅広く手がける長濱博史氏。制作は『鉄コン筋クリート』などのSTUDIO4℃が担当。原作の持ち味を忠実に活かしつつ、よりグレードアップしたDMCワールドが展開されている。またヒロイン・相川由利役には『DMC』ファンを公言する長澤まさみがゲスト出演。そのほか実写版キャストから松山ケンイチ、加藤ローサ、李闘士男監督が特別出演するなど、盛りだくさんの内容となっている。

本作のキーマンと言えばもちろん「クラウザーさん」ことヨハネ・クラウザーII世。その声を演じ、劇中のデスメタルも熱唱した声優・うえだゆうじに『DMC』制作当時の模様をうかがった。

<うえだゆうじ プロフィール>
福岡県出身。大沢事務所所属。二枚目、三枚目を問わない幅広い演技で、『機動戦艦ナデシコ』テンカワ・アキト役から『ポケットモンスター』タケシ役まで多数の代表作を持つ。最近の参加作に『機動戦士ガンダム00』ビリー・カタギリ役、『RIDEBACK』菱田春樹役など。

当初からうえだに決まっていた!? クラウザーさん

――アニメ版は最初から「クラウザーさんはうえださんの声で」という指名だったそうですが。

「長濱監督と音響スタッフの間では、どうも当初からそのプランだったみたいですね(笑)。ありがたい話で」

――収録はいつごろから?

「2007年の秋からでした。先にセリフを収録してから絵を当てるプレスコ方式だったんで、まず全話分のセリフを収録して、それから曲が揃うのに合わせて2008年から歌の収録が始まって。なにしろデスメタルなんで、一気に録れないですからね。週に1回くらいのペースで、ふた月ぐらいだったかな? 毎週毎週コツコツと録ってました。喉の調子を気遣ってくれて、ほぼ一発録りのような、歌のレコーディングとしては一曲一曲は極めて短い収録時間でしたね」

――なんだか失敗が許されない映画の爆発シーンの撮影のような。

「あはは、その例えはいいですね。通常レコーディングは最低でも3時間ぐらいかけるんですが、『DMC』の場合は軽くテストをやって、もう本番! みたいな感じでした」

――全部で15~16曲収録したそうですが、サウンドトラックなどでまとめて聴けたりするんですか?

「これがないんですよ(笑)。あと、一部しか使わない曲でも、監督のほうから『一応、全部録ってもいいかな……?』という要望もあり、全曲フルコーラス歌ってます」

――うえださんはそれまでデスメタルを聴く機会はあったんですか?

「いや、洋楽とかも聴くんですけど、デスメタルはそこまで聴き込んでなかったので、急いで資料になるCDを集めまして。また英語のデスメタルと、日本語のデスメタルで雰囲気が違うんですよね。しかもデスメタルって本人の生声だけじゃなくて、それにエフェクトをかけるエンジニアの役割も大きくて、加工をどうつけるかというところで勝負してたりもするので。『DMC』でも音楽のスタッフから『あとで加工かけますんで』という話があって、じゃあ、それほどデスメタルを意識せずに歌って大丈夫かな、と思ってたんですが、結局ほとんど加工されてませんでしたね(笑)」

――もともとはデスメタルではなく、クラシック音楽をされてて。

「ええ。子どものころに親にバイオリンを習わされて、それを10代の終わりぐらいまでやってました。いまの声の仕事とは直接絡むことはないんですけど、クラシックを学んだことで音感やリズム感を育んだりとか、そういう経験はだいぶ活かされてると思いますよ。あと、かつて音響監督さんに『バイオリンやってる?』って聞かれて『はい』って答えたら、『ハーメルンのバイオリン弾き』(※)という作品が入ってきたみたいなこともありました」
(※アニメ『ハーメルンのバイオリン弾き』で、うえだは主人公ハーメル役を担当。キャラクターソングではバイオリンの演奏も披露している)

――長濱監督とは何度かお仕事されてますが、先ほどの全曲フルコーラス以外に監督から無茶振りはありましたか?

「まず役の設定がかなり極端ですからね。それをこなす労力はやっぱり通常より大変ではありました。あとはセリフの収録は僕がほぼ最後だったんですけど、すでにそれまで録った方たちのセリフが組まれてたんで、そのスキマを計ってクラウザーを入れ込むのはとんでもない足かせでした(笑)」

――うえださんのギャグ作品への参加は『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』から、今回のクラウザーさんまでと幅広いですが、ほかのマンガやアニメのギャグを見る目がシビアになったりしませんか?

「あはは。まあ、それぞれの作品は意外とニュートラルに読んだりしてるんですけど、収録現場で他人がやるギャグに関しては厳しくなってるかもしれませんね。ギャグとかコメディってやっぱり演じるとなると非常に難しいです。計算もテンションも両方必要だったり、演技の面でもタイミングの面でもピンポイントな点を突いていく必要があるんですよね。単に奇をてらったことをすれば笑えるわけじゃないですから、独特の神経は使いますね」

――なるほど。話が前後しますが、今回の話が決まる前から『DMC』はご存知でしたか?

「あるべつの現場で、僕が演じたのではないのですが『1秒間に10回"幼女"って叫ぶ』ってパロディがあって、『このシーンはこのマンガが元ネタです』って第1巻だけ渡されてたんですよ。『へえ、こんなマンガがあるんだ』と思ってたら、年月を経て『あれをやるのか……』ということになるとは(笑)」

――パロディもまたひどい単語を……。で、その元ネタが1秒間にクラウザーさんが" レ○プ"と11回叫ぶというシーンでしたが、これは本当に11回入ってるんですか?

「ええ。で、いくつかテイクを録ったんですけどね、そのなかで音の波形を数えたら、1秒間に13回"レ○プ"って入ってるテイクもあったらしくて……」

――ええええ!?

「どうやらそうらしいんです(笑)。自分じゃまったく認識してなかったんですけど」

――それはまたすさまじい……。それでは衝撃のエピソードが最後に明かされたところで、視聴者にメッセージを。

「DVDなどでまとめて見るときっと疲れてしまうと思いますので(笑)、今回毎週少しずつ見られるというのは非常にいい機会だと思います。みなさんもぜひ楽しんで見てください」

『わう*アニ HOTレビュー』にもゲスト出演中

『デトロイト・メタル・シティ』は、2月7日のWOWOW無料放送の日にも16時20分から放送されるので、未加入者はそちらからチェック。このほかWOWOWでは、アニメ情報バラエティ番組『わう*アニ HOTレビュー』をストリーミングにて無料配信中。うえだゆうじがゲスト出演し、『DMC』について語った回は2月18日まで聴けるので、当インタビューとも聞き比べてみてほしい。クラウザーさん=うえだゆうじの熱いシャウトを『DMC』本編と『わう*アニ HOTレビュー』でTAN-NOUせよ!

(C)2008 アニメ「デトロイト・メタル・シティ」製作委員会