「ロックンローラーがロック(鍵)屋を呼んだ」と内田裕也氏

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 かつて交際していた女性への強要未遂などの疑いで逮捕されたのち、起訴猶予処分となって釈放されたロック歌手の内田裕也氏が2011年6月3日、東京・銀座の劇場で会見を開いた。報道陣からの質問が内田氏の人生観におよぶと、氏は「なるべく穏やかな人間になりたいと思う反面、やはりロックローラーとしての生き様は変えたくない」という葛藤があると語った。また、被害女性宅の鍵を付け替えたとされる件については「ロックンローラーがロック(鍵)屋を呼んでしまった」と反省の弁を述べた。

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 以下、会見での内田氏の質疑応答を全文書き起こして紹介する。

■「素晴らしいロックや映画を作っていければ、満足して死ねる」

TBS「ひるおび!」リポーター: 今回のことは大きく人生観に関わることだったと思うが、今後はこのような女性問題を起こさないという自信はあるか。

内田裕也氏(以下、内田氏): それは・・・こういうと語弊があると思うが、僕は今まで、17歳で高校を辞めてロックンロールの道に入った。(ビート)たけしさんが書いているらしいが、ものすごくシュールなことを書いている。『週刊ポスト』だと思うが「こんなことで驚いているようでは内田裕也とは付き合えない」と。「海老蔵くんの『灰皿にテキーラ』なんて軽いものだ」と書いてあった。それが良いとは思わないが。甘えていると捉えられればそうかも知れないし、今回(の事件)は全面的に自分が悪いが、ちょっと変わった奴がショービジネスにいるということを(知ってもらえれば)。そして、素晴らしいロックやそして素晴らしい映画を作っていければ、そのバランスが取れれば、自分でも満足して死ねると言える。

 必ずや僕も・・・いろんな意味合いを持っているが、クリント・イーストウッド監督。これは刑事さんにも話したが、70代になってもあれほど素晴らしい作品を提供できるというのは、ジョン・レノン亡きあと尊敬している。僕も何本かアメリカ映画には出たが、そういう「大きな夢」というか。クリント・イーストウッドと比較されると、こちらもニューヨーク近代美術館で自分のオリジナル(映画)を上映してくれたというのが唯一のプライドだ。あまり日本の方に「自分はこういうことをやってきたんだ」ということが伝わらないのが残念。そういう自慢をして、たまに酔っぱらって「俺はよ・・・」とは言うが、そう自分から言っても皆ほとんど半信半疑のような状態なので、本当に素晴らしい作品を作りたいと固く決心している。ぜひ内田裕也の末期(まつご)がどうなのか、よろしくお願いします。見届けてください。

フジテレビ「スーパーニュース」リポーター(以下、スーパーニュース): 今から2ヶ月前の4月7日、(内田氏が被災地である)石巻市へ出発されるときに取材させていただいた。その当時はプライベートで大変なときだったと思うが、そのときの心境は。

内田氏: 別に僕はそんなになんと言うか、あの時は「大変だ!」というので。まずガソリンがないのと、携行缶というガソリンを入れる缶を積んで石巻に行かなければならないので、それを集めることとか。またあの頃はミカンとかバナナを集めることができなくて大変なときだったので、そういう時はほとんどプライベートなことを考えずに、プリウスの後部座席で片道7時間半くらいかけて行った。(被災地を見て)あ然として。行った方じゃないと(惨状は)テレビではわからないと思う。

 阪神・淡路大震災の時も、(東京の)早稲田と(大阪の)心斎橋で2日間にわたって募金活動をして、陸路がダメで友達の(ミュージシャンである)桑名正博のクルーザーに大勢で乗って、接岸できないくらい危ないところへ行って神戸市役所に(物資を)届けた。昨日今日ボランティアを始めたわけでなく、そういう長いスタンスでやってきたつもり。(4月7日に)渋谷から出発する時にはまったく・・・僕はリーダー的な役割をしていたので「安全運転でみんなで頑張ろう」という風に何か不思議な力とパワーで満ちていた。そういうプライベートのことはまったく考えていない。

■「堂々とパンダになって石巻市に戻りたい」

スーパーニュース: 炊き出しのときには(被災地の)皆さん喜ばれていたが、逮捕直後にお話を聞くとがっかりされている様子だった。石巻市の被災者の方がたにメッセージはあるか。

内田氏: 先日釈放されてから、先ほどの(事前説明をしたミュージシャンの)HIRO君や三原(康可)君と話したが、やっぱりこのあとはもう一度募金活動をちゃんとして(いきたい)。ロックンロールHELP!募金というのを立ち上げて、郵便局でちゃんと管理をしていただいている。できたら僕は堂々と(客寄せ)パンダになって石巻市に戻っていって、自分の真実の心を伝えたい。必ずもう一度行って、ロックンロールをやりたいと思っている。それが一番大事だと思っていて、このまま謝罪する会見を開いて、そこで「よろしく!」というのではなくて、やっぱり前に進みたい。

スーパーニュース: 「出発するときはプライベートなことは頭になかった」とおっしゃったが、今回の逮捕のきっかけとなったのは、報道で脅迫文と言われた文書。これについてはあとで内田さんは「脅すつもりはなかった」と発言されていると思うが、ではどういった意味での女性へのメッセージだったのか。

内田氏: まぁその辺はちょっとあれだが、担当の地検できちっと話してそのうえで「起訴猶予」となったので、そこはちょっと勘弁して・・・・本当に自分は、内田裕也が内田裕也でなくなっちゃって、何かに取りつかれたかのような思いだったというのが事実。それとなんというか相手の方の捉え方もあると思うが、若い頃はよく希林さんとも喧嘩をして手を出したということもあったが、女性に対しては絶対に手を出さないと誓っている。これでもし(今回の事件で)手を出していたら暴行傷害も付いて今こうなってはいなかったと思う。それがひとつの救いだった。

スーパーニュース: 事件のまさにカギとなった「鍵」について聞きたい。(無断で被害女性宅の鍵を付け替えたとされるが)それも(女性を)愛するが故の行動だったのか。

内田氏: それは・・・愛とかなんとか、そういうのは勘弁してください。もうちょっと時間がたったら言えるかも知れないが、発想がちょっとおかしいところがあった。「鍵を変えちゃえば(女性宅に)入れるんじゃないか」とそういう発想だった。「ロックンローラーがロック(鍵)屋に電話して鍵を変えてもらった」と、そういう・・・。本当に心から反省して二度とこういうことは絶対ありえないので、そこはひとつよろしくお願いします。

テレビ朝日「モーニングバード!」リポーター(以下、モーニングバード!): ひとつ確認したい。(妻の)樹木希林さんは「自分のほうからは絶対に面会には行きません。でも面会に来てくださいと言われればすぐ行きます」とおっしゃっていたが、この面会はどちらから・・・。

内田氏
: 僕は最近(樹木さんと)全然コンタクトを取っていないので、まぁ「いったいどういう様子かな」と思って見に来てくれたんだと思う。

モーニングバード!: ということは、希林さんのほうから来てくださった?

内田氏: ・・・だと思う。まだ話してないのでわからないが。とりあえず、窓から面会の部屋を見て(看守に)「この方に間違いないかね?」と言われて「この方です」と(答えた)。面会者の名前に「(樹木さんの本名)内田啓子さん」とあるのを見て「間違いないです」と言ったら、扉を開けてくれた。その晩はあまり眠れなかった。

モーニングバード!: それはうれしくて?

内田氏: 怖くてです。まぁよく来てくれたなととても感謝している。

モーニングバード!: 先ほど「暴力は振るわないことにした」ということだったが、「暴力があった」と報じられて・・・。

内田氏: それは言葉でちょっとこう、なんというかオーバーアクションだった。相手の方はどう思ったかわからないが、いわゆる暴力というか「パンチングをした」とかそういうことは絶対ない。それはちゃんと調書にも書いてある。

テレビ朝日「スーパーJチャンネル」リポーター: 暴力について。会見のなかでも「キレやすい」という風にご自身のことを言ったり、「どうしてかわからないが自分を見失ってしまった」とおっしゃたりした。今になって自分の性格をどう考えるか。

内田氏: なるべく穏やかな人間になりたいと思う反面、やはりロックローラーとしての生き様は変えたくないという葛藤がある。ただし、そういう性格が良いほうに向かった場合は「絶対天下無敵だ」という風に思う。アイデアや行動力については。悪いほうに働かないように、これからは本当に気をつけて後半の人生を生きたいと思う。

■男と女の関係については「伊集院静さんに聞いてほしい」

テレビ朝日「ワイド!スクランブル」リポーター(以下、ワイド!スクランブル): 確認だが、今後(被害者である)相手の女性とはお付き合いしないということでよいか。

内田氏: あ・り・え・ま・せ・ん! もうそういうことをやっていたら人間として最低だと思うし、一番最初に言ったように(相手の)幸せを願っている。それが本当の事実だ。

ワイド!スクランブル: 希林さんという人をそれだけ大事に思っていながら、他の女性とお付き合いするというのは、どういった心境なのか。

内田氏: それは・・・(作家の)伊集院静さんに聞いてほしい。文学でもそういう、シェークスピア以来、男と女の関係については解決できていない永遠のテーマだと思う。こういうことを言うとまた語弊があるかも知れないが、僕は人間がすごく好きで、なんというかガールフレンドやボーイフレンドがいっぱいいて。本当に人間が好き。それで酔っぱらって絡むこともあったと思う。その辺は別にその・・・『週刊文春』か何かの見出しだけを見たが「愛欲の1年○ヶ月」とか、さっき言ったような逮捕された(IMF専務理事だった)フランスの大統領候補とか、それほどのパワーはないと思う。普通だと思う。この事実(今回の事件)だけを見るとそう思うかも知れないが、そういうことばかりを考えて生きているわけではない。

ワイド!スクランブル: 希林さんは会見のなかで「一度結婚して入籍をしたら、最後まで自分が責任を取る」とおっしゃっていた。38年間ほとんど同居されなかった裕也さんとの夫婦生活。裕也さんにとって希林さんはどんな存在か。

内田氏: ひと言でいって強い母親であり、強い女優さんであり、強い妻。この何年かは、月に1回くらい食事を共にしたり、たまに・・・僕がハワイにいたときなんかは1週間くらい、短い期間だが(現地に)来てくれたりして。部屋は別べつの部屋を取ってあるが、一緒に食事したり歩いたりとかいう風に、そういう意味でのいいお付き合いの関係にはなっていた。

ワイド!スクランブル: 先ほども少しうかがったが、裕也さん自身から(樹木さんに)素直に謝って、許してもらうということはなされないつもりか。

内田氏: (樹木さん本人に)会ったらちゃんと「今後もよろしく」と心から謝ろうと思っている。

ワイド!スクランブル: これからの人生も自分から謝る姿勢で希林さんに接していくという方法はないのか。

内田氏: まぁ土下座はしないが、希林さんのほうもわかってくれるんじゃないかと思う。この生き方を大幅に急に・・・(これまで)「おい」とか「啓子」と呼んできたので、急に「希林さん」(と呼んだり)と180度転換することはないと思うが、もう少し自分のなかで穏やかな気持ちで接していきたい。

■樹木希林さんのことは「大好き。ただ、ちょっとおっかない」


ワイド!スクランブル
: 「人間が好き」とおっしゃっていたが、これからも恋もするし、いろんな出会いがあったら・・・という気持ちもあるのか。

内田氏: いや・・・(週刊誌の)『女性自身』みたいな質問であれですが。別に「恋をする」とかそういうのではなくて、人といるのが好きなんで。問題をああだこうだとか夢を語らったりという意味のガールフレンドやボーイフレンド。別にこれからも、今までどおり食事とかは堂々とやるつもりだ。別に「反省の色(がない)」とかいうのではなくて、人間としていろんな人間が好きでこういうことを話すんだ、話し合ったところからいろんなものを・・・・あまりこういう質問を受けていると、自分がまただんだん(女性スキャンダルを起こした)IMFの専務理事みたいに思われるかも知れないが、ちょっと理解が難しいと思う。ぜひわかっていただきたい。

ワイド!スクランブル: 樹木さんを愛してらっしゃいますか?

内田氏: 大好きですよ。嫌いだったら・・・ただ、ちょっとおっかない。それはどうしてかと言うと、これは自分の恥をさらすことになるが、ロックンロールで世界中に行こうという夢がすごく強かったので、養育費を払ったこともないし、父親らしいことは何もしてやれなかった。その代わりに先ほども言ったが3つのバンドがアメリカ、カナダ、オーストラリアに行ってくれて大きな夢を(叶えてくれた)。またニューヨーク近代美術館で(映画を)やってくれた。アーティストとしてこれ以上の喜びはないという愛情をいっぱい受けたし、与えた。それしかない。

進行担当者: 会場の都合で時間となったので、内田裕也のほうから最後にひと言。

内田氏: このあと(会場となった博品館劇場では)タップの大会がある。最初、会見をどこでしようかなぁと探していて、一度(劇場の伊藤義文社長に)連絡したら1時間ならいいと。15時半から仕込みが始まるらしいので。別に僕は1時間でうまいこと逃げようというのはないし何時間でもお答えしたいが、伊藤社長のご厚意に感謝しながら、最後にしたい。

 本日は僕もちょっと汗もだくだくの状態で。なんて言えばいいのか、男らしく自分の犯した罪はいろんなものを背負ってつぐなう。これから一生懸命、仲間や後輩たちと相談して、被災地にも行くし、(韓国の)済州にも行くし。素晴らしい映画を作って、またフジテレビさんはなんておっしゃるかわからないが、日枝さん(日枝久フジテレビジョン会長)のところに謝りに行って、第39回目の「NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL」を伊藤社長が「OK」とおっしゃるのなら銀座博品館で開催したい。本日は本当にありがとうございました。ご不満な点もあるかと思いますが、今のところ自分が話せるのはこれが限界。本当にありがとうございました。そして心から反省しています。ロックンロール!

(了)

(土井大輔)