勝っても負けても、ビーチの主役は浅尾美和。ビーチの妖精の試合は報道陣も5倍に膨れあがる!

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 妖精の望みは、とうとう叶うことはなかった…。浅尾美和・草野歩組(エスワン)は、ビーチバレー国内ツアーの最終戦となったペボニアカップも2戦2敗で最下位の7位タイ。3日目以降に進むことができず、会場となった千葉・館山を後にした。

 浅尾は今シーズン、ロンドン五輪出場の目指し、5年間蜜月関係であった西堀健実(フリー)と袂を分かち、新しいパートナーを求めた。その相手が草野だった。

 草野は、昨季、尾崎睦(湘南ベルマーレ)とともに参戦2年目にしてツアー初優勝。アジア選手権でも銅メダルを獲得し、男子にも劣らないジャンプサーブとスパイクを武器に、次代を担う若手有望株と言われている。浅尾は、西堀との5年間で優勝は1回のみ(2009年ビーチバレージャパン)。万年3位の位置から抜け出すには格好のパートナーだった。

 浅尾の高さとスピード。草野のパワーと攻撃力。歯車が噛み合えば、国内での優勝は当たり前。海外でも通用するポテンシャルはある。性格的にも、浅尾の繊細さと気配りが草野の豪快さとマイペースと相まって、良いチームができると思われた。

 国内第2戦大日本印章オープン。浅尾は、1日目にはセットを落としても「作戦失敗しちゃった」と笑顔があったが、2日目に、まさかの敗戦で予選敗退が決まると、笑みが消える。つづく第3戦大阪カップも5位に沈むと、顔に明るさが消えていく。試合後の会見でも、あらぬ方向を見つめ、質問に「えっ?なんでしたっけ?」と聞き返す。心ここにあらずであった。

 その後、チームは異例の個別練習を決断する。「課題、やりたい練習が違うから」と草野は説明したが、レシーブ力に劣る浅尾を基本から鍛え上げるのが目的。そのかいがあったのか、ビーチバレージャパンでは準優勝。しかし、この時期からチームの状況は深刻になってくる。

 試合では、浅尾がサーブで狙われることが多く、そのレシーブの乱れから失点することが多かった。草野は、自慢の攻撃力を生かすことができず、何もしないまま点を重ねられる。自身のジャンプサーブが決まらないと試合にならない。そんな状況に欲求不満は溜まっていく。試合中、お互いに掛ける声も減っていった。

 勝っていればいいのだろうが、プレイで歯車の噛み合わない2人の性格も合わなくなってくる。会見でも、草野は実直に話そうとするあまり不満も口にしてしまう。浅尾は、そんな草野に気を使ってしまい、うまく話せない。試合後に話し合う場面も、一緒に行動するところも見かけなくなった。

 しかし、第7戦川崎市長杯では一転、浅尾は大声を張り上げ、草野もそれに応える。浅尾のレシーブの調子も良く、決勝まで進む。優勝はならなかったが、ツアーでは今季最高位。アサクサ復活かと思われたが、浅尾が「同じ相手に次、あたれば勝てる」と話すに対して、草野は「まだ何かが足らない」と、ちぐはぐな受け答え。最後まで歯車が噛み合わないまま終戦を迎えた。

 強い選手、巧い選手と組むからといって勝てるわけでもないが、最強と思われたパートナーを得ても優勝することができなかった。元パートナーの西堀は今季ツアー2勝を挙げ、アジア大会日本代表にも選ばれた。浅尾は大きく水をあけられることになった。これでチーム解散となると、ロンドンへの道は白紙。さらに来年の国内ツアーのシード権も難しい状況にある。

 しかし、ビーチバレー界をここまで引っ張ってきた彼女の活躍を見たいファンは多い。ビーチバレーは読みと経験のゲーム。まだまだである。ツアー優勝もオリンピック出場も、叶わぬ夢というわけではない。

(取材・文=小崎仁久)

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