白ポストが設置されている駅(その1:有害図書追放運動の高まり)

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今回は、白ポストが設置されている駅を散歩します。かつては、駅に設置された白ポストをよく見かけました。白ポストは、子供に見せたくない雑誌などの有害図書(悪書)を入れるための箱です。大人たちが読むポルノ雑誌などは、電車の網棚や広場のゴミ箱に捨てられてしまうことがあるので、これを白ポストに投入することによって、子供の目にふれないようにするためのものです。

下の写真は、JR京浜東北線の蕨駅に設置されている「白い箱」ですが、現在、東京近郊で確認できる唯一の白ポストと思われます。広告誌のラックの裏にひっそりと置かれていて、ほとんど目立っていませんが、邪魔者扱いされずに今でも大切に置かれています。



白ポストが設置された時期は、1970年代から1980年代だったと考えられます。この時期に白ポストが設置された理由は2つ考えられます。
一つは、大人たちの間で有害図書(悪書)追放をさけぶ声が強まったことです。江戸時代の艶本や明治の浮世絵、戦後のカストリ雑誌など、悪所と呼ばれる図書は昔から存在していましたが、この頃は、大人と子供には明確な境界があって、児童に性欲があるとは誰も考えていませんでした。ところが 1960年代に入り、子供向けの週刊マンガ雑誌が次々と創刊されると、マンガを真似た「ごっこ遊び」などが教師や母親たちの間で懸念されるようになり、有害図書(悪書)追放運動へと発展しました。永井豪の「ハレンチ学園」はその代表例で、1970年頃、「モーレツごっこ」と呼ばれるスカートめくりが小学校で流行し、社会問題となりました。



白ポストが設置されたもう一つの理由は、戦後の少子化の進行と3DK以上の住宅の普及によって子供部屋が確保されるようになったことです。子供部屋は、豊かさの象徴であり、加熱する受験戦争に備えるための環境づくりでもありましたが、これにより、子供の遊び場所が「はらっぱ」から「個室」へと変化し、有害図書(悪書)が子供部屋に持ち込まれる危険性が高くなりました。白ポストは、有害な情報が家庭や子供部屋に浸入することを食い止めるために考え出された古典的な方策でした。(次回へ続く)



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