作家の東野圭吾氏が第71回菊池寛賞を受賞し、1日、都内のホテルで行われた贈呈式に出席した。

東野圭吾氏

文藝春秋の創業者・菊池寛が日本文化の各方面に遺した功績を記念するための賞として1952年に創設した同賞。東野氏は「デビュー以来40年近くに亘り、ミステリー小説の世界をけん引。普遍的な世界観に裏打ちされた作品群は幅広い支持を集め、本年国内累計1億部突破。映像化、翻訳を通じて国内のみならず世界をも夢中にさせている」として受賞した。

受賞のスピーチで、東野氏は先日亡くなった伊集院静さんとのエピソードを披露。

「一緒に直木賞の選考会をやらせていただいたんですが、受賞者をお店で祝ってますと、他の店で飲んでおられた伊集院さんが来られたんです。なぜかサンダル履きで、“受賞者を祝いに来たんじゃないんだよ。あんたに話があった来たんだ。あんたと選考やるのが楽しかったんだよ。だってあんたさ、話してるうちに意見を変えるもんな。だから話しがいあるんだよ。他の連中はさ、◯って言ったら◯のままで、×って言ったら×のままだろ? でもあんたはさ、◯が急に×になったり、×が◯になったりするから、それがいいんだ”と言われました」

それを聞いて、うれしかったという東野氏は「コロコロ意見や考えを変えるのは、私の得意技だからです」と、その理由を説明。

「日本は政治家を筆頭に、一旦言い出したら、意見を変えちゃいけない、考えを変えたら恥だという雰囲気があるような気がします。そんなことはないです。(小泉純一郎元首相のように)原発を勉強して危ないなと思ったら、賛成から反対に転じて大いに結構じゃないですか。ここにいる皆さんも、意見を変えたら恥だとか、“一旦ああ言っちゃったから引っ込みつかないなあ”なんて思ってませんか? いくらでも意見変えて、全然構わないですよ。そうしないと話し合いって進まないじゃないですか」と、信条を力説した。

そして、「明日からと言わずに、もう今夜から。人の意見を聞いて、人間は変わったほうがドラマチックです。そうやって肩の力を抜いて、どんどん変化して生きていきましょう」と呼びかけた。