●役作りで“嫉妬心”あらわに「私生活に支障が」

女優の矢作穂香と俳優の犬飼貴丈がW主演を務めるABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『ひともんちゃくなら喜んで!』(ABCテレビ毎週日曜23:55〜、テレビ朝日毎週土曜26:30〜※TVerで第1話&最新話を見逃し配信中)は、天使のような新人人事コンサルタント・人見まもる(矢作)と、悪魔のようなブラック企業社長・佐京紫織(犬飼)が新人離職率100%の超ブラックアパレル会社「ジェットブラック」の大改革に挑むラブコメディ。先週放送の第3話、そして今週末放送の第4話では、乃木坂46を昨年卒業した北野日奈子演じる営業部のエース社員・桃井亜里沙がモンスター社員として主人公の前に立ちはだかる。

桃井は“マウント四天王”と呼ばれるモンスター社員の1人で、佐京に色目を使う女は絶対に許さないという嫉妬心が大暴走するキャラクター。今回は演じる北野に、役を通して知ったという自分自身の嫉妬心や1日で覚えたというオープニングのダンスについて、そして“チームワーク”に悩んでいる人へのアドバイスや3月に控える舞台への意気込みを聞いた。

女優の北野日奈子 撮影:宮田浩史

○■“ヤバい女”役、つかんでからはノリノリに

――出演発表時のコメントで、北野さんは演じる桃井さんを「ヤバい女」だと感じたと話していましたが、演じて難しかったところや楽しかったところを教えてください。

台本を読んでいくと、そのヤバさを無事に演じられるのかと不安が募るばかりで(笑)。でも現場に入ってからは、“共演者の皆さんが演じるキャラクターから見た桃井さん”を感じることで役をつかむことができ、自信を持ってノリノリで演じられるようになりました。

――桃井さんの見せ方でこだわったところは。

手はちょっと高めに添えて首はちょっとかしげて、本読みのときには母音が長めで耳に残るような“THEぶりっこ”といった話し方を心がけていましたが、最終的にはディテールよりも「いかに相手をゾッとさせられるか」ということに重きを置くようになりました。嫌な思いをさせるお芝居ができたときは、カットがかかると穂香ちゃんが睨んでくれたりして(笑)。穂香ちゃんを含め、共演者の皆さんとはすごく仲良くなれました。空き時間になるとスタッフさんから「打ち合わせの声が聞こえないから、ちょっと静かにして」と注意されるほど楽しくおしゃべりをしていました。撮影が終わってしまうのが寂しくて、こんな気持ちになっているのは私だけかなと思っていたら、皆も「終わったら喪失感がすごそう」とか、「このメンバーで撮影するのはこのシーンが最後です!」と口々に言っていて、まもなくクランクアップなのですが、現場は卒業式前のような雰囲気です(笑)。





○■撮影が終わっても縁が続く仲間

――空き時間はどんな話で盛り上がりましたか。

千葉県出身者が多かったので、ローカルな路線トークやディズニーに行きたいねという話で盛り上がりました。西役の(福冨)タカラさんは趣味がドラマ鑑賞らしいのですが、佐京さんと人見さんのキュンキュンシーンを目の前で見て、視聴者みたいに「ヤバい! ヤバい!」と反応しているのが面白くて! カットがかかるたびに皆で盛り上がっては、スタッフさんが近づいて来たら「シーッ! 来る来る来る!」って静かになって、まるで先生に怒られる生徒みたいな(笑)。撮影が終わっても、人としての縁が続いていくと思える仲間ができました。



○■役に影響受け、感情吐露するように

――桃井さんは嫉妬深いというキャラクターですが、北野さん自身は人間関係で嫉妬するタイプですか。

桃井さんを演じたことで、嫉妬するタイプだと気づいてしまったんです。乃木坂46時代は修学旅行に参加できなかったり、皆が遊ぶときに参加できなかったりして。友達は私がすねると分かっているので誘ってくれたものの、私はお仕事があって断ることしかできなくて、寂しさからの嫉妬心を感じていました。自分が行けないのは仕方ないことだから口にしないようにしていたのですが、桃井さんを演じたことで「素直に自分の感情を吐き出していいんだ」と気づいてしまって、私生活に支障をきたしています(笑)。友達がSNSで「今日“犬会”した」と書いていると「え、誘われてないんだけど」と連絡するようになっちゃって。母と電話しているときにも途中で妹が入って来ると「入って来ないで!」と言ったりして、いまさら妹がライバルになりました。最初は桃井さんをどう演じようかと悩んでいたのにスイスイ演じられるようになって(笑)。素直に口にするようになったことで、まわりは迷惑かもしれませんが、私自身は気持ちよく生活ができているので桃井さんに助けられたなと思っています。

●乃木坂46のダンスは「堂々とやる」ことを大切に

○■犬飼貴丈からツッコミ「堀ちゃんはそんなこと言わない」

――オープニングではキャストの皆さんがダンスを披露していますが、裏話があったら教えてください。

犬飼さんのダンスを撮り直してほしいです!(笑)片足に体重を乗せて4カウント動く振り付けがあるのですが、膝が内側に入りすぎちゃっているところが気になっていて。つい「社長の足の長さが活かせていない!」と桃井さん目線になってしまいます。犬飼さんには「結構下手っぴですね(笑)」とズバッとお伝えしたのですが、同期の堀(未央奈)と共演したことのある犬飼さんには「堀ちゃんはそんなこと言わないのに、怖い!」と言われてしまいました(笑)。私は乃木坂46では“ダンス下手組”でしたが、「たとえ下手でもいかに堂々とやれるか」でカバーできていたので!



――北野さんは「堂々と踊る」ことを大事にされていたんですね。ではもし今回のダンスが乃木坂46のオーディションだったとしたら、犬飼さんは……?

いや、でもそこは受かっていると思います!

――(笑)。北野さんはすぐ覚えられましたか。

私は動画が送られてきた当日に覚えたのですが、3日後に送られてきた割り振りを見たらほとんど自分のパートのダンスがなくて!(笑)でもスタッフさんも後出しで申し訳ないと思ったのか「北野さんは一応全部覚えてください」と言ってくれて、分かりやすい気遣いが好きでした(笑)。

○■“一生懸命な思いやり”が世界平和につながる

――今作には、怒りを抑える方法や嫉妬心の矛先の変え方など、学びになる要素がたくさん盛り込まれています。乃木坂46という大きな組織にいた北野さんが、チームワークに悩んでいる方にアドバイスするとしたら。

グループ活動にかかわらずですが、皆1人ひとりが価値観の違う人間だから理解し合えないことがあるのは当たり前。だからこそ人と接するときには“一生懸命な思いやり”が必要だと思っています。地球上に存在している限り、誰もが人と接しなければ生きていけないので、たくさんの思いやりがあれば世界平和も夢じゃないなと!



○■休業期間がコンプレックスになったことも

――素敵な夢ですね! また、桃井さんは佐京さんから今の会社に誘われたときのことを大切な思い出として胸に刻んでいるという回想シーンがありましたが、北野さんがこれまでかけられた忘れられない言葉はありますか。

乃木坂46時代にお世話になった舞台の演出家さんの「過去は変えられないけど、過去の持つ意味は変えられる」という言葉にとても励まされました。私は休業していた過去があり「あの時間がなければもっと……」とコンプレックスになってました。でもこの言葉に出会って、大事なのは過去に起きたことをいかに未来につなげられるかだと考え方を変えることができて、「あの時間があったから今がある」「その過去も含めて自分だ」と思えるようになりました。演出家さんにかけて頂いた言葉なのですが、自分の言葉かのように口にして周りに布教しています(笑)。



○■不安と戦いながら自分らしく

――3月からは「劇団鹿殺し」の丸尾丸一郎さんが脚本・演出を務める舞台『ダリとガラ』に出演されますが、意気込みは。

丸尾さんが演出を担当された乃木坂46の『墓場、女子高生』という舞台を見に行ったことがあるのですが、とても惹きつけられる作品でした。当時メンバーの姿をそばで見ていて、苦戦しながらも頑張れるような言葉をかけてくださる演出家さんだろうなと感じたことを覚えています。今回の舞台は実力派の役者さんがたくさんいらっしゃって不安ですが……そこをすっ飛ばして4月になってほしいくらい怖いのですが(笑)、公演が終わったときにはまた新しい自分に出会えると信じて、未来に繋がる経験になるよう頑張りたいです。

――『ひともんちゃくなら喜んで!』で桃井さんを演じると決まったときにも「不安」と仰っていましたが、新しいお仕事には不安がつきものですか。

家族にいつも「お腹痛い」「体調が悪い」と泣きつきながら何とかやってきているのですが、私はめちゃくちゃ心配性で、最悪のケースを考えて行動してしまう癖があって、それがまた自分の不安を掻き立てる要素になっています。でもそれくらい慎重でいればミスを最小限に抑えられはずなので、不安と戦いながらも自分らしく頑張っていかなきゃと思っています。

○■戦う社会人の活力になれば

――では最後に『ひともんちゃくなら喜んで!』桃井さんの注目ポイントを教えてください。

嫉妬で暴走してしまう桃井さんの気持ちは、すごく共感できる方とできない方で分かれると思いますが、このドラマでは人見さんがそのマインドや活かし方をしっかりと言葉で解説してくれるので、どんな人にも理解できる構成になっています。私は第2話をリアルタイムで見ながらTwitterで感想を読んでいたのですが、このドラマで扱っている問題って世の中で山ほど起きているんだと感じたので、生きづらさを感じている方……、私はマウント四天王の1人を演じているので生きづらさを感じさせている側の役どころですが(笑)、社会で起きている問題の解決方法を提示しているドラマなので、色々なところで戦っている社会人の方に見て頂き、また明日を頑張る活力にしてもらえたらうれしいです。



■北野日奈子

1996年7月17日生まれ、千葉県出身。2013年より乃木坂46として活動し、2022年4月30日に同グループを卒業。主な出演作にドラマ『初森ベマーズ』(15年)、『少年のアビス』(22年)、舞台『じょしらく』シリーズ(15年〜16年)、『あさひなぐ』(17年)、『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』(22年)など。2023年はドラマ『とりあえずカンパイしませんか?』(3月1日スタート 毎週水曜25:00〜)、舞台『OFFICE SHIKA PRODUCE「ダリとガラ」』(3月2日〜12日東京・座・高円寺、3月24日〜26日大阪・ABCホール)に出演する。