羽多野 渉「夢に向かって進んでいけば、必ず光が見えてくる」 ――ニューシングル『You Only Live Once』をリリース
2016年12月21日でアーティストデビュー5周年を迎える羽多野 渉。そんな彼のデビュー5周年を記念した「5th Anniversary Project」が発表された。まずは、TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のエンディング曲になっている『You Only Live Once』のリリース。続いてミニアルバム、ライブDVDの発売、全国ライブツアーの開催、そしてアーティストブックの発売、と目玉企画のオンパレードだ。これまでの振り返り、そして、これからの活動への意気込みを羽多野本人にたっぷり語っていただこう。

撮影/すずき大すけ 取材・文/花村扶美
スタイリング/高山良昭 ヘアメイク/ゆうり

「羽多野 渉の存在はどうでもいいんです」



――今年の12月に、アーティスト活動5周年を迎えるということで、おめでとうございます!!

ありがとうございます!!

――ご自分のなかではあっという間の5年間でしたか?

やっぱり人間、歳を重ねてくると1年があっという間なんですよね。2001年にTVアニメデビューして今年で15年ですが、特にこの5年間は音楽という未知の領域に足を踏み入れたこともあって、本当にあっという間でした。



――デビューシングルの『はじまりの日に』のMVで、公園のベンチに座る羽多野さんを見つめる女の子がいましたが、5年経ったわけだからもう大きくなっているでしょうね。

子どもの成長ってあっという間ですからね。そう言えばあのロケの日、その子からお礼の手紙をいただいたんです。待ち時間にお母さんとふたりで書いてくれたみたいで、「今日はありがとうございました」って。今でも宝物です。

――素敵なお話ですね。

でも、覚えてなかったらどうしよう。「羽多野さんって誰ですか?」って言われたら俺、泣いちゃうかもしれない(笑)。

――(笑)。羽多野さんにお会いするたびに感じるんですけど、いつも礼儀正しくて謙虚な姿勢で接してくださって……。

そんな……お誉めいただき、ありがとうございます(笑)。

――デビューして15年が経つのに、なぜいつまでも変わらぬままでいられるのでしょうか?

なんでしょう……? つい先日も尊敬する先輩のひとりと対談させていただいたんですが、その先輩にも「会ったときからずっと変わらない」っておっしゃっていただいて。自分では意識してないけど、そう見えるということは今後も変わらないだろうし、30年経っても変わらないと思います(笑)。きっと根本的に、声優のお仕事をさせていただいてることがうれしいんでしょうね。

――小学生の頃からの夢なんですもんね。

そうなんですよ。本当にこの仕事が大好きで。だからこの幸せを1年でも2年でも長く続けたいって思っているんです。それは音楽活動も一緒ですね。プロデューサーから「5周年ですから5つのプロジェクトやりましょう!」って言われたときに、「そんなにやったらこれで最後になっちゃう〜!」って心配になったほど(笑)。1年でも長く歌い続けていたいから、長くやるためにはどうしたらいいかっていつも考えています。

――ドカーンと行くより、慎重に行きたい、と。

自分が前へ前へって出るのは、あまり得意ではないんです。アニメのキャラクターを超えてしまうのは、よくないとも思っていますし。極論を言うと、羽多野 渉の存在はどうでもいいんです。だけど、羽多野 渉が演じるキャラクターの声は、絶対にみんなの記憶に残ってほしいと思ってやっています。



――仕事への向き合い方も謙虚ですよね。

最初からこうだったというわけではなく、確実にいろんな人の影響を受けていると思います。この業界に入ってからも、たくさんの先輩たちからアドバイスをいただいたり、それこそ厳しいお言葉もいただきますし、そういうことを経て築いてきた人間関係のおかげで今の自分があると思うので。

――偉大な先輩たちの背中を見てきたんですね。

そうですね。自分が声優になって幸せだなと思うところなんですけど、役者としても人としても尊敬できる方がまわりに多いですね。僕がいる世界って本当に素晴らしい世界なんですよ。だからキャリア15年ではまだ全然ひよっ子で、こんなところで満足してる場合じゃないんです。

――なるほど。話は変わりますが、ソロのアーティスト活動をスタートさせてすぐの頃のインタビューで、「アーティスト活動という表現は、どこか気恥ずかしいので、“ほんの少し歌を歌わせていただくことになった”みたいな言い方をしてもらえるとありがたい」とお話されていたんですけど……

あぁ、そうですね。

――さすがにもう慣れましたよね?(笑)

いやー、全然慣れないですね(笑)。この5年のあいだに、僕と同じく本業は声優だけど、アーティスト活動している方たちと一緒にステージに立たせていただいて、いろんなパフォーマンスのやり方やセルフプロデュースの仕方を見て学ばせてもらっていくうちに、“自分はどうなりたいんだろう”と改めて考えたんです。その結果、自分は「アーティスト・羽多野 渉」と「声優・羽多野 渉」を別にしたくない、ひとりの声優が音楽活動をやっているんだと思うようになりました。

――ということは、主軸はあくまでも声優で、そこから派生して歌も歌うし、ナレーターがあったり、ということですか?

そうですね。声優の仕事のひとつとして、アーティスト活動をさせてもらっているという考えです。歌を歌うときは、作詞家さんが作られた世界に「声優・羽多野 渉」が入りたい。そこに声優が歌う意味があることに5年経って、やっと気づきました。これが僕の音楽活動なんだと(笑)。



「レコーディングでは英語の歌詞に苦戦しました(笑)」



――さて、5周年記念プロジェクトの第一弾として、TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』のエンディングテーマにもなっている『You Only Live Once』が11月23日に発売となります。

『ユーリ!!! on ICE』の世界に羽多野 渉の歌声の素材を使っていただいて、どんな曲ができるだろう?というコンセプトのもとやらせていただきました。だからこの曲に関しては作曲や作詞には携わっていなくて、おまかせで作っていただいたんです。

――近未来を感じさせるような、キラキラした楽曲ですね。

なんというジャンルになるかはわからないんですけど、すごくオシャレっていうのはわかりました(笑)。最初、聴いたとき曲の仕上がりがあまりにもカッコよくて、「僕の歌声、いらなくないですか?」って思いました(笑)。

――そんな…(笑)。

もう曲だけで完結していて、どういうふうに自分の声をこの曲とシンクロさせるのか、まったくイメージできなかったんです。

――プロデューサーさんからはどんなお話を?

楽曲の制作をしていただいたPIANOの冨永(恵介)さんからは、今回はアニメーションのなかで流れている音楽と親和性を持たせたい、アニメと世界観が分かれることがないように、アニメの流れのなかでスーッとエンディングに入っていけるような曲を作りたいという説明を受けました。結果、今までの自分の楽曲にない色になったんじゃないかなって。

――羽多野さんってこういう曲も歌うんだというのが新鮮だったし、振り幅の大きさも感じられる曲でした。

僕もまったく同じ感想を持ちました。こういう歌も歌えるんだ!って(笑)。



――歌詞についてはいかがですか?

先に光が見えるような、そんな歌詞ですよね。『ユーリ!!! on ICE』は勝生勇利という男の子が主人公で、フィギュアスケートの世界が描かれているんですね。僕も小学校のときにスピードスケートをやっていたんですが、フィギュアスケートの世界ってアニメであまり触れられてこなかったので、非常におもしろいなと。

――放送開始直後から、ものすごい反響ですね。海外のスケートファンからも注目を集めています。

しのぎを削って切磋琢磨している世界のなかで、選手たちにはどんな景色が見ているんだろうっていうのを想像させるような……そこに登場するいろんな人物を思い浮かべながら聞いていただくと、とてもおもしろいんじゃなかろうかと思いましたね。

――『You Only Live Once』というタイトルを訳すと「人生は一度きり」。タイトルからも悔いのない生き方をしようというメッセージを感じます。

自分の夢や目標に向かって進んでいけば、必ず光が見えてくるよっていうメッセージを、みなさんに伝えられたらなと思います。

――レコーディングで苦労されたところはありますか?

なにしろ、英語の歌詞が多くて大変でした。でもインターネットがあれば、単語を打ち込むだけで、意味がわかる! 便利な世の中になりましたよねぇ(笑)。

――発音のほうはバッチリでした?

それがですね……正直、苦戦しました(笑)。留学経験のあるスタッフさんがいらしたので、英語の発音をどれだけネイティブに近づけるかっていうところでアドバイスをいただきました。自分の英語力がいかに低いかを思い知らされましたね。歌のレコーディングのおよそ半分くらいは英会話教室でしたから(笑)。

――そうだったんですか(笑)。

歌のテンポで「th」とか「v」の発音とか、「r」と「l」の発音の違いとかをやろうとすると、なかなかうまいこと音にならなかったりするんですよね。そういう部分は時間をかけて丁寧に歌わせてもらいました。メッセージを大切にしたメロディになっているので、ぜひ聴いていただきたいです。




「“親愛”の気持ちをプロジェクトに込めました」



――12月21日には、ミニアルバム『キャラバンはフィリアを奏でる』が発売になります。

ミニアルバムのほうは、まずはアルバムのコンセプトを考えました。で、大枠として“アルバムを通して旅をする”というテーマに決めたんです。

――具体的に言うと?

5周年ということで5曲入りなんですけど、1枚を聴くとまるで世界を旅した気持ちになれるコンセプトにしようと。使う楽器もこだわって、曲を聴いてみると“あ、中央アジアだな”とか、“ヨーロッパに入ったぞ”とか、“今、アメリカ大陸にいるんだな”ってわかるようなバラエティに富んだ内容になっています。

――羽多野さんのそのイメージを、作詞家・作曲家さんにはどうやって共有されたんですか?

場所ごとに何かストーリーがあったほうがわかりやすいし、おもしろいだろうなと思ったので、最初は中央アジアを舞台にした小説みたいなものを書いて、さらにヨーロッパに移動して、ヨーロッパでは森のなかをイメージした小説みたいなものを書いて、お渡ししました(笑)。

――小説を書かれたんですか!

小説のプロットと言いますか、ショートストーリーと言いますか…。結果、自分で作詞しろよっていうくらいの分量になりましたけど(笑)。

――そこまで、明確なイメージを持っていたら、あがってきた楽曲を聴いて、ちょっと違うなぁ…と思うことがありそうですけど……。

それがですね、ビックリするくらい毎回、思った通りの曲なんです! 僕のイメージ通りでした。紙をお渡しするだけじゃなくて、必ず会って話もさせていただいたんですけど、おしゃべりするなかで僕のこだわりや好きなものが伝わったんだと思います。上がってきたデモを聴いて、だいたいイントロからガシッとつかまれちゃうんですよ。ああ、このイントロです、僕が求めていたのは〜!って(笑)。

――今までそういったものを書いたことがあったんですか?

読む・しゃべる専門なので、書いたことはありませんでした。

――えー、それでスラスラと書けるのがスゴいです…!

いや、プロの作家さんからしたら拙い文章だと思うんですけど、気持ちというか雰囲気だけでも伝わればいいかなと思って。弟や家族に事前に読んでもらったら「難しい言葉が一切使われてなくていい」って言われました(笑)。僕がやりたいことを、みなさんが形にしてくださったので感謝しています。

――羽多野さんが書いたショートストーリー、読んでみたいです。

ありがとうございます。今回、アニミュゥモでミニアルバムを買っていただいた方への特典として、ショートストーリーを朗読したCDをつけていただけることになりました。

――ちなみにタイトルの「フィリア」というのは…?

ギリシア語で「親愛」という意味です。スタッフ間での親愛だったり、作家さんとの親愛だったり、ファンのみなさんとの親愛だったりを、ひとつひとつのプロジェクトに込めてみなさんと共有できたらと思っています。

――ミニアルバムのリリース以降も、1月に初のライブDVDの発売、1年ぶりとなるライブツアーの開催、初のアーティストブックの発売…と、ファンをワクワクさせる企画が目白押しです。

すべてのプロジェクトに自分の明確な意思が込められているので、きっと喜んでいただけるものになると思います。あと……ひとつ、僕からお願いがありまして。

――はい、なんでしょう?

みなさま、どうか貯金をお願いいたします(笑)。今からちょっとずつ貯金をしていったら、きっとCD1枚くらいは買えると思いますので……なにとぞ(ぺこり)。