暴君と年上の愛人役で共演する菅田さん(写真左)、秋山さん(写真右) 撮影/森田晃博
俳優は月を欲しがる
──まず、この戯曲をどう感じましたか?
菅田 読んでみたら意外な発見がいっぱいあって、すごく面白かったです。滑稽で、ユーモアもあるし。カリギュラは極悪非道という表面的なイメージが先行していますけど、すごく共感できるんですよ。
秋山 私もカリギュラ=暴君、みたいなイメージしかなかったんですが、いろいろな魅力があるんですね。セゾニアとしては“女”を演じなければいけないんですが、母性愛的な部分も大きいのかなと思ってます。
菅田 本読みをして一気にわかりましたよね。書かれたのは70年も前ですけど、全然古くない。栗山さんの言葉を借りるなら、肉体的な疲労より精神的な論理に追いつめられるという感じなんですが、「あ、面白いな」と思えて安心しました。いま演じることができて幸せです。
秋山 私は配役を聞いたとき、「彼は合うな」と思ったんです。それは彼が、枠の中に入っていないというか。思いもよらないような、いろんな面を出されるから。
菅田 カリギュラは王だし、状況や人間関係は自分とはまったく違うんだけれども、先入観で思っていたより全然近くて。「欲しくてたまらない孤独を完成させるんだ」とかね。僕は彼を、狂気ではないと思うんです。
秋山 こういう世界を日常でやっているんだものね。
菅田 芝居には答えがないから自己評価しかないし。
秋山 栗山さん、みんなの初めての本読みを聞いた後、すごく喜んでましたね。
菅田 あれはうれしかったな。栗山さんは名言メーカー。いい言葉をたくさんくださるから、勉強になります!
「なんかそうなっちゃった」瞬間が美しい
──役づくりのやり方は?
秋山 役づくり、私はあんまり考えないかなぁ(笑)。
菅田 僕もです。“出たとこ勝負”みたいなところがあるので。
秋山 そういう感じがするよね。そこが素敵だなと思ってます。昔、親子の役で共演したとき(『麒麟の翼~劇場版・新参者~』)も、なりきり方がすごくて。あ、今回は親子じゃないんですけど、私はもう親みたいな気持ちだから(笑)。
菅田 あのときはまだ10代で、水難事故で全身不随になってしまった役でしたね。懐かしいなあ!
秋山 そのときから素晴らしいと思ってました。役づくりもあまりきっちりやりたがる人だと、私はやりにくかったりするので(笑)。
菅田 そういう意味では似ているのかも。栗山さんもその場その場の瞬間を大事にされて「毎日、違う孤独でいいから」と。理屈じゃなくて「なんかそうなっちゃった」という瞬間こそが美しいとおっしゃる。それで、安心したんですよ。
秋山 そうね。栗山さんは「昔の台本だけど、現代だ」って。あまり古典的な演技をさせようとはなさらないのよね。菅田くんはライブ感とか瞬発力を持っていらっしゃるから、楽しみ。
──お互いに聞きたいことは?
菅田 うーん、何だろう。好きな食べ物は?(笑)
秋山 (笑)。好き嫌いはないんです。
菅田 肉か魚なら?
秋山 お寿司かな。コハダが好き。
菅田 あーっ、僕も寿司がいちばん好き! いいですね、光りもの!(笑)
秋山 菅田くんは、趣味がたくさんおありなのよね。いまのいちばんは?
菅田 うーん、今なら車かな。家族用に車を買って、いま納車待ちなんです。それを乗り回して運転に自信がついたら、好きな車を買おうと。
秋山 栗山さんの愛車で練習させてもらったら?
菅田 いいですねー!(笑)
構えずに見て欲しい
──では、この作品の魅力を改めて。
秋山 今回は、菅田さんのファンはうれしいんじゃないかなぁ。生でいろんな面を見られるし。
菅田 ビジュアルはカッコいいものになると思います。アバンギャルドなんだけど中性的すぎない。男装か女装か、なんてレベルじゃないので。
(取材・文/若林ゆり)
『カリギュラ』 “不条理の哲学者”ことアルベール・カミュが手がけた衝撃的な戯曲を、栗山民也の演出、カリギュラ役を菅田将暉という夢のタッグで上演。カリギュラの残虐行為を受け入れるほどに盲目的な愛を注ぐ愛人セゾニアに秋山菜津子、憎悪と共鳴を覚える純粋な詩人シオピンに高杉真宙、ほかに谷田歩、橋本淳など。11月9日から11月24日まで、新国立劇場 中劇場にて公演中。その後、福岡、兵庫、宮城公演あり。詳しい情報は公式HP(https://caligula.jp)で確認できる。
●PROFILE●
すだ・まさき 1993年2月21日、大阪府生まれ。2009年『仮面ライダーW』でデビュー。13年、映画『共喰い』で注目を浴び、俳優、アーティストとして第一線で幅広く活躍。映画の代表作に『あゝ荒野』『アルキメデスの大戦』など。ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』など。舞台『ロミオとジュリエット』など。'20年には主演映画『糸』が公開予定。
あきやま・なつこ 10月8日、東京都生まれ。舞台を中心に映画・ドラマなどで活躍する実力派女優。舞台『プルーフ/証明』『ブルールーム』『タンゴ・冬の終わりに』『きらめく星座』などで数々の演劇賞に輝いている。映画の最新作に『108~海馬五郎の復讐と冒険~』『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-『海風』』がある。