[J1第32節]浦和 1−2 神戸/11月12日/埼玉スタジアム2002

 勝点8差の3位・浦和と首位・神戸が対戦したゲームでは劇的な幕切れが待っていた。

 73分にCBマテウス・トゥーレルが大迫勇也の折り返しをヘッドで合わせて神戸が先制するも、後半アディショナルタイム、90+1分に浦和のホセ・カンテが味方との連係で崩して同点弾を奪う。

 そして迎えた90+6分。浦和は右サイドでFKを得ると、引き分けのままでは優勝の可能性が消滅する状況でGKの西川周作が攻め上がる。

 しかし、その動きに浦和のマチェイ・スコルジャ監督は激しいジェスチャーとともに何か声をかけていた。

 そして中島翔哉が蹴ったボールは西川の頭の上を越え、神戸GK前川黛也の手の中に。前川は即座に前線に残っていた大迫へフィードを送ると、大迫は無人のゴールへ劇的な決勝弾を流し込んだのだ。

 直後に浦和ベンチ前ではピッチへ激しいジェスチャーを送り、その場に座り込んで敗戦を嘆くスコルジャ監督の姿があった。

 試合後、その浦和指揮官は件のシーンに関して「この試合をどうしても勝ちたいという強い想いが表われた状況でした。大事な試合をどうしても勝ちたいという強い気持ちが全員にあったなかで、かなり大きなリスクを冒しながら前線に上がったという形でした」と語るにとどめた。

 また失点後にベンチに向けて大きく手を広げていたアレクサンダー・ショルツは「そこに関しては何を伝えれば良いのか分かりません」と複雑な表情を浮かべたのも印象的だった。

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 一方で、失点シーンの背景を明かしてくれたのは西川だ。

「僕の判断でした。ただ勝ちたかった、それだけで、勝つしかないと思っていましたし、引き分けでは意味がないと感じていました。

 チームとして勝つ姿を見せたかったところで失点にはなりましたが、しっかりとキーパーチームでいつも共有していたことではあるので、今は落ち着いて受け入れていますし、やはり勝ちにいったというところでした」

 試合後にはスコルジャ監督とのやり取りもあったという。

「監督としては試合終わったあとに、言って欲しかったと、上がる時に、確認して欲しかったと。そう共有事項として話していました。でも自分としては勝つしかないと思っていましたし(ベンチからの)声は聞こえていましたが、そういう姿勢を見せながらいきたかったというのは考えていたので結果、フォアにも誰もいけておらず、カウンターで失点になりましたが、そこはしっかり受け入れながら、前を向いてやっていきたいです

(監督は)みんなの前でしっかり話してくれて、『シュウはいつもセーブで助けてくれている』と。あのシーンに関しては上がって欲しくなかったが、リスペクトしてくれていると話してくれました。

 失点になったことで、いろんな見方をされると思いますが、勇気あるプレー、行動は示し続けていかなくてはいけないなと思いますし、そこはゴールキーパーの価値だと感じます。これまでもたくさんミスをしてきましたし、そこから学んで成長してずっとやってきているので、しっかり生かしていきたいです」
 
 対して神戸側は各自の判断が決勝弾へとつながったようだ。

 神戸の吉田孝行監督は「僕は指示を出していないですが、過去の試合でもビハインドの状況で(前線に人が)残ったりはありましたし、先ほどサコ(大迫)が話しているのを聞いていると、西川選手が上がっていったのを見て、これは残っておこうと思ったと言っていたので、サコの賢さが良かったと思います」と振り返る。

 そしてGK前川に関しは「(大迫が)残っていたところ見れていましたし、素晴らしいキックで気持ちよく代表にいってくれると思います」と称賛。

 当の前川はこう語る。

「西川選手が上がってきたのは分かったんですが、サコくんが一枚、ああいう形で残っているのは分かっていませんでした。自分の意識的には取ったあとのカウンターというところで、常に前を意識しているので、その時に顔を上げたらサコくんがいたので、狙って蹴ったという形でした。

 練習ももちろんしてきていましたが、僕的には下手なボールでありましたが、常に前を見ることやチャンスがあれば狙っていくところはミスがあっても続けてきたところなのでああいう形で今回結果として出せたのは良かったです」
 
 そして殊勲の大迫は「相手も1点絶対に欲しい状況で、僕らも絶対に欲しい状況だったので、(キーパーが)上がったのを見て冷静に判断できたと思います」と口にする。

 重要な一戦は、各選手の判断が結果にも表われた。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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