◇メジャー第1戦◇マスターズ 事前情報◇オーガスタナショナルGC(ジョージア州)◇7555 yd(パー72)

2011年にローアマチュアを獲得、10年後の21年に優勝した「マスターズ」に、松山英樹がキャリアで13回目の出場を果たす。オーガスタナショナルGCでの戦いの直前にチェックした14本のクラブは、2シーズンぶりのツアー優勝を遂げた2月「ジェネシス招待」から一見、不動。ただし、生命線のアイアンセット(4番からPW)は3月の「アーノルド・パーマー招待」で総入れ替えされている。

モデルは1年前から愛用する住友ゴム工業「ダンロップ スリクソン Z-フォージド II」のままだが、微細な調整が加えられている。重心の位置をわずかにトウ側に寄せ、重心距離を長くした。その違いはわずか1ミリ未満だというから驚きだ。

住友ゴム工業のツアー担当・宮野敏一氏によると、松山とこのアイアンに関する構想は昨秋にスタートした。23年のレギュラーシーズンを8月に終え、10月に日本での「ZOZOチャンピオンシップ」を控えた時期。「アイアンに“しなり”が欲しいというニュアンスの要望がありました。当時はシャフトをやわらかくすることでしなりを出したんです」と明かす。大会では初日、2日目にそのアレンジを加えたアイアンセットでプレー。ところが、実際には「しなりが強すぎた」(宮野氏)こともあり、3日目は元のセットに戻していた。

そこで新シーズンに向けてマイナーチェンジを施したのが今回のアイアン。松山自身が「細かい部分なので、なんとも言えず、それが本当に良いのかどうかも分かっていないけれど、いまのところアイアンには満足いっている」と好印象を抱いている。

フェースを眺めた限りでは違いはまったく分からない代物を、宮野氏は「以前のアイアンよりも、(ヘッドの動きに)良い遅れが生じて、インパクトゾーンと球がフェースに乗っている時間がより長いように見える。その結果、球が左右にブレない感じ」と説明する。ジェネシス招待の優勝直後に総入れ替えしたのも、「松山プロがマスターズを見据えているからこそ。その頃から使わないと、手に馴染まないのだと思います」と代弁した。

ところで、新調前のアイアンセットには裏話がある。先述した昨年のZOZOチャンピオンシップの2日目、都内にいた宮野氏は松山の関係者から急きょ「アイアンセットを元に戻したい」という要望を受けた。元のセットを預かっていた同氏は慌てて千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野CCへ。午後の自動車渋滞を警戒し、アイアンが入った段ボール箱を手に電車に飛び乗ったという。最寄りの千葉ニュータウン中央駅で、試合を観戦したギャラリーの波をかき分けながら一目散にコースに向かった。あの日、男性が大切そうに抱えていた縦長の段ボールを見た方…。中身は松山英樹のアイアンだったかもしれません。

<松山英樹のクラブセッティング>

ドライバー:ダンロップ スリクソン ZX5 Mk II LS(9.5度)

シャフト:グラファイトデザイン ツアーAD DI(重さ80g台、硬さTX)

フェアウェイウッド:テーラーメイド Qi10 (3番15度)、コブラ キング RADSPEED ツアー(5番17.5度を19度合わせ)

シャフト:グラファイトデザイン ツアーAD DI(3番=9TX ブラックカラー/5番=10TX)

アイアン:ダンロップ スリクソン Z-フォージド II(4番〜PW)

シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアーイシュー(S400)

ウェッジ:クリーブランド RTX4 フォージド(52、56、60度)

シャフト:トゥルーテンパー ダイナミックゴールド ツアーイシュー(52度、56度=S400/60度=X100)

パター:スコッティキャメロン プロトタイプ

ボール:ダンロップ スリクソン Z-STAR XV