フィリピンと日本を結ぶ「泳ぐ宝石」ニシキゴイ

この記事をシェア

2021年1月4日

新年吉祥Navi Manila Interview

 

 おなじみの魚、コイ(鯉)は英語でカープ(CARP)、タガログ語でカルパ(KARPA)。そして最近、日本のコイはそのままKOIで国際的に通じるようになりつつあります。
「泳ぐ宝石」「泳ぐ芸術品」「幸運のシンボル」と呼ばれるニシキゴイが、世界の愛好家に NISHIKIGOIとして親しまれているのです。ニシキゴイの飼育はフィリピンでも人気の趣味。ニシキゴイを通じてフィリピンと日本を結ぶコイビレッジ・ペットモールのカーター・リーさんにフィリピンのニシキゴイ事情について聞きました。(聞き手・時澤 圭一)

 

見た目もめでたい4歳の紅白20万ペソ(上)と頭部に赤い丸の模様を持つ丹頂8万ペソ(下)(コイビレッジ・ペットモールで撮影)

 

 

コロナで在宅時間増え
ニシキゴイ飼育が人気

 

 コロナ禍によるロックダウン中もコイビレッジは閉鎖せず、スタッフは働いていました。2000匹以上のニシキゴイのほか、ウサギや犬、爬虫(はちゅう)類の世話をするため、閉鎖はできません。ただお客様が来店できないので、ニシキゴイの写真を撮影してSNSに投稿し、オンラインで販売しました。コロナ禍の中でも、ありがたいことに、毎日のようにニシキゴイは売れています。もともとコイビレッジには10代の方から年配の方まで幅広い年齢層のお客様がいらしたのですが、ロックダウン中は特に60歳以上の方が増えました。外出が制限されたため、自宅でニシキゴイを育てて、眺めるのが楽しみとなったのでしょう。

 

 ニシキゴイは日本から空輸します。適切な方法により、ちゃんと生きたままフィリピンまで運ぶことができます。 
 コイは水質など環境の変化にも強い魚です。十分な酸素と、肥満にならないように適量のエサを与えれば、大きく育ち、長く生きる。コイビレッジでのエサは日本、台湾、中国製の配合飼料ペレットと、時々、特製のミミズを与えます。 

  飼育環境が良ければ1年で25センチ以上になり、一般に1色のみのニシキゴイほど大きくなります。平均寿命は15年から20年。最も長く生きた記録は岐阜県にいた花子という名のニシキゴイで、推定226歳と言われています。

 

選び抜かれて育ち価値を生むニシキゴイ

 

昨年10月の「長岡錦鯉品評会」で成魚桜大賞を受賞したカーター・リーさんのニシキゴイ。昔黄金(むかしおうごん)と呼ばれる品種。体長約80センチ。輝くウロコが美しい。(写真:Mr. Carter Lee)

 

見事な発色と体形は
日本の環境なればこそ

 

 私は例年3、4回は新潟県小千谷市や長岡市、福岡県久留米市へ1〜5歳のコイを買いに行きます。最近行ったのは去年の2月。コロナ禍が終息したら、またすぐに行きたいと思っています。日本の品評会には、タイや香港などのアジア、ドイツなどヨーロッパからも多くの愛好家、バイヤーが集まります。
 ニシキゴイの価値を決める基準は、体形、色、模様、なめらかに泳ぐことなど。高く評価されるのは、潜水艦のような堂々とした体形を持ち、色と模様が濃く、強く、鮮やかに現れているコイです。また、メスの方が大きく育ち、体形が良くなる傾向があるため、オスよりも評価が高くなります。

 

 代表的な品種は、白い魚体に赤が入った「紅白」、紅白に黒の模様が加わった「大正三色」、大正三色に比べ黒が多い「昭和三色」。品評会で優勝するのもこの3種からで、オークションでは高級車並みの値段が付くこともあります。コイビレッジで扱っているニシキゴイは、1匹300ペソから50万ペソです。

 当店にはフィリピンで生まれたコイもいますが、日本のように鮮やかな色と立派な体形を持つように育てるのは本当に難しい。日本は池の底の土壌やきれいな水など、ニシキゴイを育てるのに適した自然の要素に恵まれていると思います。

 

ニシキゴイの代表的な品種のフィギュア。右から「紅白」、「大正三色」、「昭和三色」。

集団で泳ぐフィリピン生まれのニシキゴイ。約1歳。

 

縁起が良いとされるのは
フィリピンでも

 

 ニシキゴイは性格が温厚な魚です。中でも茶鯉と呼ばれる品種は、人に慣れやすいことで知られています。池で茶鯉といっしょに飼うと、ほかの品種のコイもフレンドリーになると言われます。
 私にとってのニシキゴイの魅力とは、交配し、色合いや模様のいい幼魚を選別、間引きをして、立派なニシキゴイをつくり出すこと。間引きしたニシキゴイは、当店で飼育しているカメやワニにエサとして与えています。選別して育てるニシキゴイには1日8回から10回エサを与え、池の水は毎日取り換えてきれいに保つ。手間をかけ、すばらしく成長するのを見るのが魅力です。

 

 日本と同じく、フィリピンでもニシキゴイは縁起の良い魚とされています。風水でもコイは幸運を象徴する魚です。
 ニシキゴイを趣味として本格的に飼育する場合には、少なくとも1・2メートルの水深がある池が必要となり、大きければ大きいほどいい。浄水や酸素補給のための装置をそろえることも考えると、やはり富裕層の趣味といえるでしょう。

 

 

カーター・リーさん Mr. Carter Lee コイビレッジ・ペットモールのマネジメントメンバーの一員。ニシキゴイの愛好家であり、自宅の池でも飼育している。 本業は建設会社のマネジャー。「ニシキゴイ用の池の造成もお任せください」。

 

Koi Village Pet Mall 
マカティ市マガリャネスのコイビレッジ・ペットモールは、ニシキゴイ愛好家のジェイム・リム氏が2005年に開業。ニシキゴイをはじめ、イグアナやカメなどの爬虫類、ウサギ、モルモットなどを飼育・販売している。ブラカン州パンディに養鯉場ハヤシ・コイファーム(Hayashi Koi Farm)がある。「フィリピン・ナショナル・コイ・ショウ」や爬虫類の展示会も主催。
所在地:Santiago Street, Paseo de Magallanes, Makati City 

 

Advertisement