タンザニアで続くアルビノ狩り

2013.01.25
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タンザニア西部のカバンガ保護センター(Kabanga Protectorate Center)で、17歳のエンジェル(Angel)さん(左)は、母親のベスティダ・サルバトリー(Bestida Salvatory)さんと再会を果たした。父親違いの弟エゼキエル(Ezekiel)君も一緒だ。アルビノに加えて皮膚癌を患うエンジェルさんは4年前、実の父親が率いるグループに襲撃され、実家から避難を余儀なくされた。

Photograph by Jacquelyn Martin, AP
 タンザニアでは、皮膚や毛髪、目のメラニン色素に欠乏をきたす遺伝子疾患、すなわちアルビノ(先天性白皮症)として生まれることは、死刑宣告を意味すると言っても過言ではない。2006年以降、71人が命を奪われ、29人が襲撃されている。1万7000人とされる同国のアルビノの多くは政府の保護下にあるが、ほとんどは緊急避難の施設であり、今後の見通しは誰にもわからない。 アルビノのルーツは東アフリカのこの国と考えられ、現在、国民の1400人に1人という高率だ(世界平均は2万人に1人)。しかも、不死身の幽霊である、または呪われた家庭に生まれるといった迷信が拡散している。だが最も恐ろしいのは、幸運のお守りや薬の材料にする目的で殺害、遺体を切断し、呪術医に売るケースが後を絶たないことだ。手足4本と耳、舌、鼻、性器が“一式”とされ、7万5000ドル(約680万円)の値が付く場合もあるという。

 タンザニアのアルビノたちが直面するもう1つの恐怖は性的暴行だ。主に北西部の人里離れた地域などで、アルビノの少女が男に襲われる事件が頻発している。アルビノとの性交渉で、エイズ(後天性免疫不全症候群)が治るというデマが信じられているのだ。犠牲者の正確な数は不明。社会的な烙印(らくいん)を押されるため、被害を名乗り出る犠牲者は少ない。2007年の推計によると、同国ではおよそ140万人がエイズを発症するHIVに感染している。

 アルビノの殺害や襲撃の横行により、多くの家族が崩壊を余儀なくされている。センターに保護された子どもの中には、二度と両親に会えなくなったケースも珍しくない。また、白人男性と関係を持ったと疑う夫に捨てられ、母親が1人で育てる場合もある。思いあまって一部の患者は、一番の理解者、つまり同じアルビノとの結婚を選ぶ。しかし、両親が共に抱えた遺伝子疾患は、生まれてくる子どもに引き継がれる確率が高まってしまう。

 タンザニア政府は、アルビノ患者の殺害を止めようと公衆の啓発に取り組んでいるが、闇市場ではいまだに身体が高値で売買されているのが現状だ。“アルビノ狩り”はブルンジ、ケニア、スワジランドなど、アフリカ各地に広がり、タンザニアに運ばれるケースも多いという。

Photograph by Jacquelyn Martin, AP
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