深海のサンゴにも被害、原油流出2年

2012.04.23
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石油掘削基地ディープウォーター・ホライズンの原油流出事故の発生中、油まみれになった鳥や、油でぬめる海岸などの写真がニュースで大きく取り上げられたが、一方で、海底の生態系が受けた被害は波の下に隠されたままだった。しかし、最近の調査によって、原油流出が深海のサンゴにも影響を与えたことを示す有力な証拠が明らかになった。

Photograph by Charles Fisher, PSU
 石油掘削基地ディープウォーター・ホライズンの原油流出事故の発生中、油まみれになった鳥や、油でぬめる海岸などの写真がニュースで大きく取り上げられたが、一方で、海底の生態系が受けた被害は波の下に隠されたままだった。 しかし、最近の調査によって、原油流出が深海のサンゴにも影響を与えたことを示す有力な証拠が明らかになった。それは写真の試料にもはっきりと見て取れる。このサンゴは枝の先端がオレンジ色をしているが、おそらくすでに死んでいる。「原油の流出規模が大きく、また海の表面ではなく深いところで起こったため、これらの生物群集に重大な影響を与える結果となった。その影響について、われわれはようやく理解し始めたところだ」と、ペンシルバニア州にあるハバフォード大学の地球化学者ヘレン・ホワイト(Helen White)氏は述べている。

 ホワイト氏が主著者として手がけた研究は、深海の生態系における原油流出の影響を調べた最初の研究の1つだ。石油タンカーが起こす通常の原油流出事故では、深海の生態系は影響を受けることがない。

 ホワイト氏の研究チームは、複数の潜水機を使って、影響を受けたメキシコ湾のサンゴを調査した。このサンゴは、今回の研究の科学分野を指揮したペンシルバニア州立大学のチャールズ・フィッシャー(Charles Fisher)氏が2010年、マコンド油井の原油流出が止まってから3カ月後に場所を特定していたものだ。ホワイト氏はさらに、2次元ガスクロマトグラフィー技術を用いて、マコンド油井から北東約11キロに位置するサンゴ礁で見つかった原油残留物から、物質の同定に用いられる“指紋”を採取した。

「1カ月後に戻ってみると、茶色い毛のようなものに厚く覆われていた部分のサンゴは死んでいたが、さほど厚く覆われていなかった部分は、回復の兆しを見せていた。このサンゴ群が今後回復するのかどうか、回復する場合どのようにして回復するのかは、現時点では不明だ」とホワイト氏は述べている。現在進められている研究では、サンゴが原油流出事故や原油の自然な浸出にどのように対処しているのかに関する重要な情報が得られる見通しだという。

Photograph by Charles Fisher, PSU
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