アノマロカリスの眼、レンズ3万個?

2011.12.13
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太古の海に生息した最強捕食生物アノマロカリスの想像図。右下は、その複眼の化石の拡大写真。

Illustration courtesy Katrina Kenny, University of Adelaide; Photograph inset courtesy John Paterson
 カンブリア紀の海棲捕食生物アノマロカリスの複眼は、3万個以上の個眼(レンズ)で構成されていた可能性があるという。現生の昆虫や甲殻類と同等以上の視力があったようだ。 新発見は、5億1500万年前の化石の調査結果に基づいている。オーストラリア南部、カンガルー島のシェール岩層から出土し、体長は1メートル程度、飛び出た2つの眼の大きさは2~3センチあった。アノマロカリス(Anomalocaris)は、ラテン語で「奇妙なエビ」を意味する。

 人間の眼は大きなレンズが1つだけだが、昆虫や甲殻類の複眼は6角形などの複数の個眼で構成されている。個眼はそれぞれ異なる情報を脳へと伝達するという。

 研究チームのディエゴ・C・ガルシア・ベリード(Diego C. Garcia-Bellido)氏らは、顕微鏡で化石の個眼を数え、驚くべき結果を得た。「1つの眼の半分だけで1万6000個もある。まるで想定外の数だった」。同氏はスペインにあるマドリード・コンプルテンセ大学の古生物学者である。

 両眼とも、反対側は岩に埋まっているため確認できないが、同数のレンズがあることは想像に難くない。

◆カンブリア紀の“ホホジロザメ”

 アノマロカリスは、5億4200万~5億100万年前のカンブリア紀最大の生物。歯が円形に並んだ口と、口の両脇から伸びるトゲで覆われた触手が特徴だ。この触手で、絶滅した節足動物「三葉虫」などを捕らえていたと考えられる。

 カンガルー島の同じシェール岩層からは、アノマロカリスの糞の化石も見つかった。ガルシア・ベリード氏は、「幸運にも、三葉虫の残骸が入っていた」と話す。同氏の研究チームは、ナショナル ジオグラフィック協会研究・探検委員会(CRE)から継続調査に向けた資金援助を受けている。

 今回の調査結果は、「アノマロカリス最強説」を補強する新たな証拠となった。カンブリア紀の海では、食物連鎖の頂点に君臨するホホジロザメのような存在だったのだろう。

 アノマロカリス類は非常に成功した種で、魚類に駆逐されるまで4000万年も繁栄した。

 研究の詳細は、12月8日発行の「Nature」誌に掲載されている。

Illustration courtesy Katrina Kenny, University of Adelaide; Photograph inset courtesy John Paterson

文=Christine Dell'Amore

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