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アルジェリアのタッシリ・ナジェール国立公園のブーメディアンにあるピラミッド型の岩。ゾウと人間の絵が描かれている。 (PHOTOGRAPH BY MATJAZ KRIVIC)
アルジェリア南東部にあるタッシリ・ナジェール国立公園の名を聞いたことがある人は少ないだろう。アフリカ最大級の国立公園であるにも関わらず、あまりに人里離れたところにあるため、その存在はほとんど知られていない。
サハラ砂漠の中央部に位置し、面積7万2000平方キロメートル(北海道の9割弱)におよぶ公園は、先カンブリア時代の広大な砂岩台地の名残でできている。
オレンジ色の砂丘から奇岩がつき出ている不思議な光景は、気の遠くなるような長い年月をかけて、砂岩台地が侵食されてできたものだ。
しかし、それらはタッシリ・ナジェールの魅力の半分に過ぎない。もう半分の魅力は、その岩の表面に古代の人々が描いた見事な芸術作品の数々だ。
先史時代を今に伝える絵
タドラール・ルージュは、タッシリ・ナジェールの中でもひときわ美しいエリアだ。アルジェリアの首都アルジェから飛行機で2時間半のオアシスの街ジャーネットから、四輪駆動車で訪れることができる。
ツアーを催行するガイドが適当な場所を見つけて車を停めると(ガイドにつくのは決まって、遊牧民族のトゥアレグ族だ)、観光客は岩に刻まれた古代の岩絵を直接その目で見ることができる。
タッシリ・ナジェールでは、1万5000点もの岩絵が見つかっている。1950年代に、その多くを記録したフランスの考古学者アンリ・ロートは、この場所を「世界で最も偉大な先史時代の美術館」と呼んだ。しかしロートは後に、その破壊的な仕事ぶりが批判された。
これらの野外美術館は、時を超えて様々な人々がここに来ては去っていったことを物語っている。興味深いのは、特に目立って完成度が高い岩絵の多くが、現在はもっと南に生息するゾウやキリン、サイ、カバといった大型哺乳類を描いていることだ。
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