イングランド国王ヘンリー8世と6人の妻。上から時計回りにアン・オブ・クレーブズ、キャサリン・ハワード、アン・ブーリン、キャサリン・オブ・アラゴン、キャサリン・パー、ジェーン・シーモア。（IMAGE COURTESY OF STEFANO BIANCHETTI / BRIDGEMAN IMAGES）

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　16世紀のイングランド国王ヘンリー8世は、女性関係では特に評判の悪い王だった。6人の女性と次々に結婚したが、彼女らはそれぞれ、「離婚、斬首、死亡、離婚、斬首、生存」という運命をたどった。

　これを題材にしたのが、英国や米国で上演され、話題を集めているミュージカル「SIX（シックス）」だ。6人の妻たちに順番にスポットライトを当てながら、その運命を女性の視点で伝えている。ここでは、その背景となった歴史を紹介しよう。

離婚：キャサリン・オブ・アラゴン

　ヘンリー8世は、1509年から1547年までイングランドを統治した。本来は王となる運命が約束されていたわけではなかったが、1502年に兄のアーサーが15歳で早世したため、ヘンリーは王太子となった。

1509年、亡き兄アーサーの妻だったキャサリン・オブ・アラゴンがヘンリー8世の最初の妻となった。キャサリンは1516年にメアリー1世を産むが、2人の間に男児が生まれることはなかった。（IMAGE COURTESY OF PRIVATE COLLECTION/BRIDGEMAN IMAGES）

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　そのとき、王位だけではなく、兄の妻も受け継ぐことになった。それが最初の妻、キャサリン・オブ・アラゴンだ。しかし、結婚後に生まれた男児は2カ月後に死亡した。その後、1516年に女児メアリーが生まれたが、王位を継ぐ男児は1526年になっても生まれなかった。そしてヘンリーは、新たな妻を探し始める。離婚はカトリック教会に禁じられていたにもかかわらずだ。

　ヘンリーが出した答えは単純だった。王位はローマ教皇からではなく、神から授かったものであるから、王国の全権限は自らの手にある。キャサリンとの婚姻も自らの手で無効にできるはずだ。そう考えたヘンリーは、カトリック教会から決別してイングランド国教会を創設する。国教会がキャサリンとの結婚を無効としたことで、離婚が成立した。

　離婚後のキャサリンは「ウェールズ公太妃」という称号を与えられ、キンボルトン城で幽閉同然の生活を送っていたが、がんのため1536年に50歳で亡くなった。ちなみに、娘のメアリーは、1553年にイングランドとアイルランドの女王メアリー1世となり、父親が進めた宗教改革を覆そうとしたのち、1558年に亡くなっている。

キャサリン・オブ・アラゴンの娘で、のちにイングランドとアイルランドの女王となったメアリー1世は、カトリックの復活を目指してプロテスタントを迫害した。約300人のプロテスタント「異端者」を処刑したことで「ブラッディ・メアリー」（血塗られたメアリー）と呼ばれた。画像は1720年ごろの版画で、メアリー1世の統治時代にスミスフィールドで行われた処刑の様子が描かれている。（IMAGE COURTESY OF GUILDHALL LIBRARY & ART GALLERY/HERITAGE IMAGES/GETTY IMAGES）

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